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加藤 美佐子(かとうみさこ)さん (2014年9月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

北九州市婦人会連絡協議会 会長 / 社会福祉法人北九州市戸畑区社会福祉協議会 会長

地域のあゆみを風化させず、次世代に語り継ぐ

 平成25年度、福岡県男女共同参画表彰の「社会における女性の活躍推進部門」を受賞した加藤美佐子さん。長年にわたって、北九州市で婦人会や女性団体連絡会議の活動に関わってきた。「私は何もしていないんですよ。抜群の指導力を持たれた先輩がいらして、その人についていっただけなの。今は周りの人たちが支えてくれるのよ」と飾らない言葉で語る。

教員を辞めた後、婦人会に入会 

 小学校の教員を8年間務めたが、子どもの病気のために退職。その後は家庭教師として勉強を教えていた。10年くらい経った頃、加藤さんのもとに婦人会の人が訪れ、入会を勧められた。「最初は断ったんだけど、何度も来られるので申し訳なくってね。食事会と言われて参加したら、総会だったのでびっくりしました」。
 加藤さんは、北九州市戸畑区東戸畑婦人会に入会し、副会長として手伝うことになった。婦人会のことは何も分からなかったが、おかしいと感じたことは率直に意見を述べ、先輩からすべて教えてもらった。「今までと同じだからいいのでは」と言われても納得できないときは自ら動き、一人で作業を始めると自然にみんなが手伝ってくれた。「公私混同が一番いけないから」と、主婦の集まりの中でもけじめは大切にしてきた。加藤さんはいろいろな団体で役員を頼まれるようになった。「周りの仲間の方々は親切で、特に社会奉仕の精神は素晴らしいものだと感じました。先輩方の指導がよかったのでしょう」。
 

女性たちの願いが社会を変えた

 戸畑の婦人会は、公害克服に深く関わってきた歴史がある。北九州市は重化学工業の中心地として栄え、日本の近代化を牽引してきたが、その一方で1960年代には大気汚染や水質汚濁などの深刻な公害が発生した。経済的には発展したが、埋め立てによって美しい海が失われ、公園の桜は枯れ、ぜんそくなどの健康被害もあらわれた。子どもたちの健康を守るために、最初に立ち上がったのが戸畑区内の婦人会だった。中には工場地帯で働く幹部社員の家族もいたという。
 降灰による被害を証明するため、婦人会は客観的なデータを集めて行政に提出。この調査結果が行政と企業側を動かし、女性の力による公害克服の第一歩となった。自主制作した記録映画「青空がほしい」は公害の恐ろしさを伝え、環境改善に大きな影響を与えた。
 この運動に最初から関わっていたのが、当時の会長・毛利昭子さんで、やがて、加藤さんはその先輩のもとで活動するようになった。「理性的な方で、みんなが憧れるリーダーでした。私は毛利先輩から毎日のように公害のイロハを教えていただきました」。

力を合わせれば必ず解決できる

 1990年代になると、北九州市は「世界の環境首都」の構想を掲げ、環境に関するシンポジウムやセミナーを開催するようになった。加藤さんも講師として招かれ、公害防止運動に関する講演を行った。「青空がほしい」は海外からも注目され、多くの人の感動を呼んだ。1992年、戸畑区婦人会協議会の会長に就任、2009年からは、北九州市婦人会連絡協議会の会長も兼ねるようになった。
 さらに、北九州市内の100以上の女性団体から組織する「北九州市女性団体連絡会議」でも、2000年から2007年まで副会長や会長を務め、地域における女性の地位向上や社会進出に向け、強力なリーダーシップを発揮した。同会議では、1984年から毎年、男女共同参画社会の実現を基本テーマに、「男女共同参画フォーラムin北九州」を地域や学校等の約40会場で開催している。
 会長挨拶では「一人でできないことをみんなの力で解決していきましょう」と話し、思いやりと人の和が地域の力になることを伝えている。また、「環境をよくする語り部の会 」を立ち上げ、冊子「公害のあゆみ」を作成するなど、伝達の仕組みづくりも大切にしてきた。「先輩たちの活動は私たちにはとてもできません。引き継いだ者として、風化しないようにきちんと守っていかないとね」。
 その時代ごとにやるべきことがあり、受けたバトンは次の人に渡す役目がある。若い世代には「その人のカラーで好きなようにやればいいのよ」と温かいエールを送る。 (2014年9月取材)

コラム

遠くの親戚も近くの他人も

 東京に住んでいる長男と長女、長男の妻、3人の孫たちが自主的にローテーションを組んで加藤さんの家を訪れる。滞在期間は1週間から10日くらい。気管支の病気やリウマチがあり、細かい作業やかがむ動作ができないため、家事を手伝いに来るのだ。誰もいないときは近所の人がゴミ出しを手伝ってくれたり、料理を持ってきてくれたり。遠くに住む家族にも、ご近所の人にも支えられ、幸せな毎日を送っている。「今日ある私は周りの方々に助けられたおかげです。感謝感謝」。

プロフィール

北九州市出身。小学校教諭を8年間で退職。家庭教師を10年ほど務め、「戸畑区婦人会協議会」に入会。副会長を経て1992年から会長を務めている。2009年からは「北九州市婦人会連絡協議会」の会長も兼ねている。
また、1994年から2007年まで「戸畑区女性団体連絡会議」会長、「北九州市女性団体連絡会議」では、2000年から2003年まで副会長、2004年から2007年まで会長、現在は理事を務めている。2013年「第12回福岡県男女共同参画表彰」受賞。2015年春「旭日単光章」受章。

 

 

 

 


 

 

 

 

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