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【センター長コラム No.79】NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」の感動をもう一度  ~「ファーストペンギン」の精神~  (2022年10月11日配信)

こんにちは。

ムラサキシキブの実がすっかり紫色になりました。足元には、タマスダレが可憐に咲いています。

お変わりありませんか。

 

 2015年にNHKで放送された朝の連続ドラマ「あさが来た」を覚えていますか。

ヒロインの名前は「あさ」。幕末、京都の豪商の家に生まれたあさが、長じて大阪の両替商の息子の新次郎と結婚し、女性が社会や経済の表舞台に出ることがなかったこの時代に、婚家の両替商の経営に深くかかわったほか、炭鉱経営、銀行や生命保険会社の設立と、新事業を次々に展開し、さらに、日本初の女子大学の設立にも奔走するというドラマです。

 

ヒロインのあさを波瑠さんが、夫の新次郎を玉木宏さんが演じました。また、ドラマの舞台である明治時代の大阪経済をリードした五代友厚を演じたディーン・フジオカさんも大変な人気でした。

 

「あさ」のモデルは、女性の実業家のパイオニア「広岡浅子」で、その生涯を描いた古川智映子著『小説 土佐堀川』を原案に、脚本家の大森美香さんが脚本を手掛けたものです。

 

「あすばる」では、11月26日(土)の「福岡県男女共同参画の日」に開催する「あすばる男女共同参画フォーラム2022」のメインイベント「スペシャル・トーク」のゲストとして、大森美香さんをお迎えし、広岡浅子の生き方を題材に、お話を伺います。

 

ドラマのタイトル「あさが来た」には、朝が来ると新しい社会が始まるような、社会が明るくなるドラマにしたいという思いが込められているとのことです。

 

11月26日(土)は、大森美香さんが会場に来られて、トークを行います。皆さんと一緒に、「あさが来た」のドラマを振り返り、コロナを越えた新しい令和の朝に向けての1歩を踏み出すきっかけにしたいと思います。

多くの皆さんのご参加をお待ちしています。

 

とき:令和4年11月26日(土)14:00~15:00

ところ:クローバープラザ(JR春日駅横) アリーナ棟2F 大ホール

 

そこで、スペシャル・トークを前に、予習の意味合いも込めて、広岡浅子の生涯について少しお話をしたいと思います。今回から2回シリーズでお届けします。

下の図は、広岡浅子の一生をまとめたものです。

 

浅子は、江戸末期の1849年に、京都の豪商の娘として生まれました。

商家の娘のたしなみとして生け花やお琴などを習わされましたが、浅子が好きだったのは相撲で、丁稚を相手に相撲をとり、いつも叱られていたということです。

 

また、学問に興味をもち、男の兄弟が学んでいた四書五経を読んでいましたが、四書五経は男性が読む書物であり、これも、父親から禁じられました。

 

浅子は、17歳で、大阪の両替商の息子と結婚するのですが、この結婚は、浅子が2歳のときに、親どうしによって取り決められていたものでした。商家どうしが手を組むための縁談で、当時としては普通のことでしたが、浅子は、「まるで器物のように、親の手から夫の手に渡すというのは、なんと不当なことか」と書き記しています。

 

浅子の嫁ぎ先の両替商「加島屋」(ドラマでは「加野屋」)があったのが、原作小説に出てくる「土佐堀川」のほとりでした。夫の信五郎(ドラマでは「新次郎」)は謡曲や茶の湯をたしなむ趣味人で、店の経営にはほとんど関心がなく、浅子は、簿記や算術など、商業に関する書籍を学び、店の経営にかかわっていきました。大政奉還前、世の中が変わると察知した浅子は、大名家に乗り込んで貸付金の取り立ても行っています。

 

明治維新の混乱で両替商が次々と倒産する中、浅子は金策や借金返済の猶予の願いなどに飛び回り、婚家加島屋は何とか持ちこたえました。

 

そして、新事業として着手したのが「炭鉱経営」です。開国とともに近代化の波が押し寄せ、近代化の象徴である蒸気機関の燃料となる石炭は、大きな可能性を持っていました。

 

浅子は筑豊の炭鉱を購入し、自ら炭鉱に赴いて、鉱夫達に採掘を指示しました。男尊女卑の思想が強い明治時代です。鉱夫達は、突如、山の持ち主として現れた女性に敬意を払うはずがありませんが、躊躇なく坑道に入っていく姿や、自らトロッコを押すなどして働く浅子の姿を見て、次第に受け入れるようになり、石炭事業は、大きな利益を生み出すようになったのです。

 

1888年(明治21年)に加島屋は、銀行経営に乗り出します。銀行経営にあたって浅子は、経営を熟知している人に教えを乞い、様々なことを学んだと言います。この時期、多くの銀行が誕生し、すぐに倒産する銀行も少なくありませんでしたが、ときには無謀ともいえるような行動力を発揮する浅子も、「生兵法で強い敵にぶつかっていく」ようなことではなく、学んでから取り組むことを自らに課していました。

 

ドラマでは、このとき、あさは渋沢栄一に会って教えを乞いました。

渋沢栄一は、昨年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公でしたが、「青天を衝け」の脚本も、大森美香さんが手掛けました。

 

そして、浅子が54歳のときには、生命保険の重要性に着目し、生命保険会社を設立します。この時代は、家のすべてを戸主である夫/父親が管理していましたが、彼らが先立つこともあり得ます。そのときに最も困るのは残された女性や子どもです。そういった人たちをサポートするのが生命保険会社だと考えたのです。

 

ドラマの中で、ディーン・フジオカさんが演じる五代友厚は、新事業に奮闘するあさを、敵が潜むかもしれない海に餌を求めて最初に飛び込む勇気あるペンギンにたとえて、「ファーストペンギン」と呼びました。

 

浅子のチャレンジ精神は、今の私たちにも勇気を与えてくれます。

 

今回のコラムは、企業家としての浅子に焦点を当てましたが、浅子は、女性の教育にも力を注ぎました。次回は、教育者としての浅子についてみていきたいと思います。

 

おしまいは、マイ農園だよりです。

今年は、5年ほど前に苗を植えた栗の実を初めて収穫しました。

50個ほどしかありませんでしたが、大きくて立派な栗でした。栗ご飯にしました。

コロナ感染者は減少してきましたが、油断せずに、体調管理にはくれぐれもご留意ください。

ではまた。                                                                                (2022.10.11)

 

  

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