こんにちは。お変わりありませんか。
西洋ヒガンバナが咲きました。満開の時期は終わりましたが、元気カラーの花姿を写真に残しました。白い小花はギンモクセイで、こちらも花の時期は終えました。キンモクセイのような派手な香りではありませんが、静かに染み渡るような香りを、そこはかとなく漂わせます。
今回も、11月26日(土)に開催する「あすばる男女共同参画フォーラム2022」のスペシャルトークで取り上げる明治時代の実業家「広岡浅子」の人生についてのお話です。
広岡浅子は、NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」の主人公のモデルとなった人で、女性が経済や社会の表舞台に出ることがなかった時代に、持ち前のチャレンジ精神と卓越した手腕で、明治維新の混乱で傾きかけた婚家の両替商を立て直し、炭鉱経営、銀行や生命保険会社の創設と、数々の事業を成功させました。
今回は、実業家としての業績と同じくらい注目すべき、浅子の女性教育への貢献についてお話ししたいと思います。
前回もお話ししたように、当時は「女性は学んではいけない」とされており、浅子自身も、男の兄弟がしていた四書五経の素読を禁じられていました。
しかし、浅子は結婚後、自分で算盤や簿記、経営を学び、そのことによって、明治維新の混乱期に婚家の倒産を救い、さらに事業を拡大していくことができたので、その体験を通して、「女性も男性と同じように学べば力を発揮できる」、「女性も学ぶべきである」という強い信念を持っていました。
経営業績が評価された浅子のもとに、講演や雑誌の原稿依頼が来るようになりますが、彼女は、雑誌のエッセーに次のようなことを書いています。
「これまで女子が働く分野といえば、ほとんどが女工としてであったが、これからは教育ある婦人が事業の計画者となることが望ましい。事業だけでなく製作品等においても、意匠の案出などで活躍できる女性が望ましい」
これは、女性の職域拡大や事業企画への参画の必要性などを指摘するもので、まさに、男女共同参画の精神です。明治時代に、このような考えを持っていた女性がいたことに驚きます。
実際、1888年に銀行を設立したとき、浅子は周囲の反対を押し切って、女性の行員を5名採用しています。そして、男性行員に引けをとらない実力をつけようと、自ら、女性たちに、算盤や商業簿記、商いの歴史などを教えました。浅子の見込みどおり、銀行の評判は上がり、客足は伸びました。
それから、結婚した当時には経営に興味がなかった夫の信五郎が、この頃には経営に参画するようになったり、紡織会社の社長に就任したりと、夫も変わってきています。
そして次に、浅子は女子大学の設立に力を尽くします。この話を持ってきたのは、成瀬仁蔵というアメリカ留学から帰ったばかりの若い教育者でした。
浅子のもとには、学校設立支援の依頼が少なからずあったといいますが、浅子は成瀬の教育理念に心を動かされました。
成瀬は、「国際的な視点から見ると日本の女子教育は遅れている。女子教育において必要なのは、女性の人格を認め、男性と同等に置くところから考えることである」と考えており、浅子は「女学校ではなく女子のための高等教育機関をつくる」という構想に共感したのでした。
浅子は、自らが出資しただけでなく、地元の大阪にとどまらず東京にも赴いて政財界の要人に会い、資金援助を依頼しました。そして5年間という時間と労力を費やし、浅子の実家である三井家が東京に所有する土地の寄贈も受け、1901年、浅子が53歳のときに、日本女子大学校(現在の日本女子大学)の開校にこぎつけたのです。
大学校開校の成功に次いで、浅子は、個人で女性の人材育成に役立ちたいと考え、毎月商用で東京に行く機会をとらえ、若い女性たちを集めて婦人問題研究会を開催するようになりました。
また、夫の死後、浅子は経営の第一線から退きますが、晩年、富士山の見える御殿場に建てた別荘で、合宿型の夏期講習会も開催しています。この講習会に招かれたのは未来ある女性たちで、村岡花子や市川房枝も参加しています。
村岡花子は、浅子から「自分のことだけでなく、社会のためにできることを見つけなさい」と言われ、英米の本を日本の若い人たちに紹介することを志したということです。村岡花子が翻訳した多くの物語を私たちが読めるのも、二人の出会いがあったからだと言えます。
市川房枝が、女性参政権運動へと向かい、政治家に転身していくのも、浅子との出会いがあったからでしょう。
女性は男性と同等に学び、社会で活躍すべきという浅子の思いは、着実に次の世代に引き継がれたと言えます。
浅子のモットーは「九転十起」。「七転び八起き」より、2回も多く転んでも起き上がるという意味です。
広岡浅子という女性は、今の私たちにも、生き方への多くの示唆とたくさんの勇気を与えてくれます。
「あすばる男女共同参画フォーラム」スペシャルトークは、11月26日(土)14時~15時、クローバープラザでの開催です。
是非、ご参加ください。
広岡浅子に関してもっと知りたい方は、古川智映子『小説 土佐堀川』(潮出版社)、永井紗耶子『広岡浅子という生き方』(洋泉社)、『別冊宝島 広岡浅子の生涯』(宝島社)、古川智映子『「九転十起」広岡浅子の生涯』(潮出版社)などをご覧ください。
いずれも、あすばるライブラリーに所蔵しています。
ライブラリーへのご来館もお待ちしています。
終わりに、マイ農園だよりです。
オリーブの実を収穫しました。お酒やメープルシロップに1年以上漬けると渋が抜けて食べられるそうなので、白ワインに漬けてみました。再来年の春には食べごろになると思います。柿は、カラスに先をこされました。
ではまた。 (2022.10.26)