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【センター長コラム No.58】 「イコール・ペイ・デイ」5月6日  (2021年5月6日配信)

こんにちは。5月3日に掲載したコラムの説明文に間違いがありましたので、訂正しました。改めて掲載します。


紫蘭が咲きました。ニオイマツリカも花盛りです。
お変わりありませんか。

 

 

今年4月6日のコラムで、「ジェンダー・ギャップ指数」を改善するためには、政治分野の女性の参画を増やさなければならないことをお話ししました。

 

今日は、日本がジェンダーギャップ指数で世界に後れをとっているもう1つの要因である、経済分野の男女格差と関連して、ある国際NGOが行っているユニークな取組を紹介したいと思います。

 

それは、「国際BPW (International Federation of Business and Professional Women)」というNGOが、男女の賃金格差に関する認識を深めるために行っている「イコール・ペイ・デイ(Equal Pay Day)」という、格差を可視化する取組です。

 

BPWは、名前のとおり、ビジネスや専門職の女性が結集して女性の地位向上を目指すための活動を行っている組織で、日本をはじめ世界の100余りの国で組織されており、その連合体である「国際BPW」は、国連の経済社会理事会の総合協議資格を取得し、働く女性の意見を集約して、国際機関のほか、経済界、政界、行政、市民社会に対して提案を行っています。

 

「イコール・ペイ・デイ」は、男女の賃金格差がどれくらいあるのかがよく見えるように、男性が1年間に得る賃金額を女性が得るには、女性は1年を超えて何日間働かなければならないかを算出し、同じ額を手にする日を「イコール・ペイ・デイ」」として、啓発キャンペーンを行うという取組です。

 

毎年、統計データをもとに各国の「イコール・ペイ・デイ」が算出されており、日本では、日本BPW連合会が、厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」の男女の賃金月額(男性338,800円、女性251,900円)をもとに計算した結果、今年の「イコール・ペイ・デイ」は5月6日となっています。

女性は、男性が1年働いて手にする金額を得るためには、1年4か月以上働かなくてはならないのです。(計算方法は、このコラムの最後につけていますので、ご参照ください)

 

ちなみに、主な国の今年のイコール・ペイ・デイを見ると、イタリア 1月22日、フランス 3月8日、アメリカ 3月24日、イギリス 4月1日、ドイツ4月7日となっています。

 

では、男女の賃金格差の原因はどこにあるのでしょうか。

厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」をもとに概観してみたいと思います。

次の図は、男女別の年齢階級別賃金カーブの図です。

 

男性では年齢が高くなるとともに賃金も上昇していますが、女性はそのカーブが緩やかです。

働き始めの頃は男女の賃金差はほとんどありませんが、男性の賃金のピークと女性のピークには、14万円もの差があります。

 

これは、役職についている人は男性が圧倒的に多いためだと考えられます。男性はキャリアアップを進めるのに対し、女性は非役職にとどまるため、初任給は男女同じであっても、歳月を経るとだんだん給料に差が出てきているのです。

今年の「ジェンダーギャップレポート」を見ても、役員、管理職についている男女比率は、男性85.3%、女性14.7%で、この指標のジェンダーギャップは0.173、世界ランキングは139位と著しく低い状況です。

 

また、女性は非正規雇用が多いことも要因の1つです。令和元年(2019年)の非正規雇用労働者の割合を見ると、男性労働者では22.8%に対し、女性は56.0%と、女性労働者の半分以上は非正規で働いています。
正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差は大きく、女性労働者だけで比較しても、正社員269,200円に対し、非正規193,300円と、7万円余の差があります。

 

さらに、女性の勤続年数が短いことも考え合わせなければなりません。男性労働者の平均年齢43.8歳の勤続年数が13.4年であるのに対し、女性労働者の平均年齢42.0歳の勤続年数は9.3年です。

女性は非正規が多く勤続年数が短いことが問題ですが、この面だけでなく、正社員として就職しても、女性の場合、結婚や出産で会社を辞める場合が多いことも問題です。

女性の第1子出産後の就業に関して、就業を継続する女性は長い間4割ほどしかいなかったのですが、近年は5割超の人が継続するようになったと、数値が上昇したことが報告されています。しかし、なお4割以上の女性が辞めているのです。

いったん退職してしまうと、生涯所得に大きな差が出ます。

厚生労働省では、『女子大学生のための就活ガイド』の中で、①育児休業を利用して働き続ける場合、②出産後退職して子育てが終わった後に他企業に正社員として再就職する場合、③出産退職後パートやアルバイトとして再就職する場合の生涯所得を計算して、退職による逸失額がどれほど大きいかを示しています。

 

 

企業における育児休業をとりやすい環境づくり、家庭での女性の育児負担の軽減、社会全体での育児支援など、さまざまな方向から就業継続がしやすい方策を考えなければならないと思います。

これは、育児だけでなく、介護による退職にもいえることで、人生100年時代、定年延長の時代の今後の課題でもあります。

 

以上、賃金に関するいろいろな課題を見てきました。

イコール・ペイ・デイが、皆さんの経済分野の男女格差を考える機会となれば幸いです。

 

最後は、マイ農園だよりです。

ソラマメを収穫しました。富有柿の木に花がたくさん咲きました。

新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。健康管理、くれぐれもご留意ください。

ではまた。                        (2021.05.03)

 

 

<参考>日本のイコール・ペイ・デイの算出方法

厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」のデータから、一般労働者(短時間労働者以外の労働者)の賃金額を使って計算しています。
一般労働者の賃金月額は、男性 338,800 円、女性 251,900 円でした。

男性の年収は、338,800円×12月=4,065,600円、
         日額は、4,065,600円÷365日≒11,138.6円

女性の年収は、251,900円×12月=3,022,800円、
         日額は、3,022,800円÷365日≒8,281.6円  です。

男女の年収の差は、1,042,800円ですので、その差額を得るために何日かかるかの計算式は、1,042,800円÷8,281.6円≒125.9日となり、126日目に到達することになるので、
5月6日がイコール・ペイ・デイとなります。

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