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神﨑 智子(かんざきさとこ)さん  (2014年6月取材)

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九州大学理事(男女共同参画・ダイバーシティ・社会連携等担当)、福岡県男女共同参画センター「あすばる」前センター長(取材時:(公財)アジア女性交流研究フォーラム主任研究員)

ジェンダー研究を通してアジアの架け橋に

 2014年4月、神﨑智子さんは「アジア女性交流・研究フォーラム」の主任研究員となり、北九州市とアジア太平洋地域の架け橋として新たな仕事を始めた。「北九州市や出身地の築上町も含めて、女性が社会の主要な立場で活躍してほしい。そのために、アジアの女性団体の活動や、政策決定と女性の関わり方について研究したい。アジア諸国の男女共同参画推進の実際を明らかにし、お互いに学び合いたいですね」と笑顔で語る。

働きながら大学院で学ぶ

 1977年の入庁以来、北九州市役所の職員として、神﨑さんはさまざまな職場で経験を積んできた。1990年に配属されたのが、当時設立されたばかりの「アジア女性交流・研究フォーラム」。アジアの女性の地位向上を目指して、研究と交流を行う北九州市の外郭団体である。国際情報課長として、アジア各国の統計資料の収集、海外通信レポートの制作などを担当した。
 海外の行政官や研究者と交流するためには、修士号(マスター)があったほうがよいとアドバイスを受け、1995年大学院に通い始めた。2年間で修士課程を無事に修了。ホッとするとともに、ますます学びたい意欲が湧いてきた。「国の女性政策の変遷を勉強していくと、まだ全体像が体系的に分析されていないんです。もっと研究をしてみたい!と思いました」。
 2年後に博士課程に入学し、若い学生たちと一緒に学んだ。夫の協力があったとはいえ、仕事と家事に加え、親の介護もしていた。新幹線通学の20分が唯一のリフレッシュタイムだった。「帰りの新幹線で飲む缶ジュースの美味しかったこと!」と朗らかに笑う。

新たな視点で女性政策史を出版

 博士課程の高度な内容に戸惑い何度も挫折しそうになったが、尊敬する師の指導の下、論文を仕上げた。日本の男女平等政策の歴史的な展開を、国会議事録をはじめとする膨大な史料によって考察した。「博士はオリジナリティが要求されるので難しかったです。論文は3年がかりで書いたんですよ」。2008年、念願の博士号(ドクター)を取得した。
 翌年には、博士論文を加筆修正した著書『戦後日本女性政策史―戦後民主化政策から男女共同参画社会基本法まで』を出版。日本の男女平等政策における歴史的な展開を、国会議事録をはじめとする膨大な史料によって考察した。出版を機に、いろいろな女性団体からジェンダーをテーマにした講演を依頼されるようになった。講演の内容は「女性と家族」「女性のキャリアプラン」「ワークライフバランス」など、依頼団体の要望に応じている。著書の内容をベースに日常生活のエピソードを交えたり、統計資料や理論に加えて自分の体験を話したり、智恵と実践を両輪にしたわかりやすい話が好評だ。

チャレンジすれば道は拓ける

 2014年3月、長年務めた市役所を退職し、自ら希望して現職に就いた。公務員からジェンダー研究者に転身した神﨑さん。いくつもの職場を異動しながらも、専門のテーマを掘り下げて自分の根を育んできた。「好きなものを深めて専門を持つと、自分の軸足ができる。どんな仕事をしていても、その中でこれだけは負けないというものがあると強みになります」。
 豊富な仕事経験を通して多くの人と出会い、女性の潜在能力が非常に高いことを感じてきた。自信をつけて能力を発揮するためにも、何か好きなテーマを見つけて専門を磨くことを勧めている。「とにかくやってみることが大事。やり始めたら絶対にできるんですよ。失敗しても、失敗から学んだことは成長の糧になる。できるかどうかよりも、まずはやるかどうかなんです」。
 体験から発せられるメッセージは、しなやかで力強い。支えてくれる人への感謝や、自分が楽しむ工夫も大切にしてきた神﨑さんだからこそ、あたたかく心に響いてくるのだろう。 (2014年6月取材)

コラム

エスニック料理とカービング

 アジア各国で食べた料理の美味しさに魅了され、自分でも作ってみたいと思った。家庭菜園でさまざまな野菜やハーブを育て、エスニック料理作りを楽しんでいる。定期的に開くホームパーティでは、生春巻きやタイ風さつま揚げ、サテ、春雨サラダなど、「自慢の」料理で友人をもてなす。
 野菜や果物、石鹸に彫刻を施す「カービング」が趣味。博士号取得のお祝いに、職場の人からプレゼントされたカービングナイフは宝物のひとつだ。

プロフィール

築上町出身。九州大学法学部卒業後、北九州市役所に入庁。アジア女性交流・研究フォーラム国際情報課長、北九州市立男女共同参画センター副所長、北九州市立大学ひびきのキャンパス担当部長、福祉事務所長などを歴任。1997年に九州大学大学院法学研究科で修士号、2008年に同大学院で博士号(法学)を取得。北九州市役所を退職後、公益財団法人アジア女性交流・研究フォーラム主任研究員、同主席研究員を経て、2018年4月から2023年5月まで福岡県男女共同参画センター「あすばる」センター長。2023年6月から現職。ほかに、福津市男女共同参画審議会会長。
著書:『戦後日本女性政策史―戦後民主化政策から男女共同参画社会基本法まで』(単著)、『おんなの軌跡・北九州-北九州市女性の100年史』(共著)、『《写真記録》これが公害だ 北九州市「青空がほしい」運動の軌跡』(解説)ほか。

 
 
 
 

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