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三宅 静代(みやけしずよ)さん  (2014年5月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

有限会社三宅牧場 代表取締役、福岡県指導農業士

社会の一員として、仕事で社会に貢献したい

 「気がつけば“牛飼い”として40年が経ちました。20歳のとき、大恋愛で結婚したのがきっかけ。素晴らしいパートナーで、宝くじに当たったくらい幸運ですよ」とユーモアを交えて話す三宅静代さん。夫婦で経営する三宅牧場の牛肉は、九州管内の共励会で金賞に輝いたこともあるほど評価が高く、最近はブランド肉「博多和牛」として注目を集めている。

牛飼いの「共同経営者」としてゼロから成長

 夫の実家は農業と畜産業を営んでおり、夫は牛の飼育を任されていた。“農家・畜産家の嫁”といえば、家事や育児に加え、家業を献身的にサポートするのが務めというイメージを持たれがちだろう。だが「うちは全然違いますよ」ときっぱり。「夫の口癖は『俺たち夫婦は共同経営者』。牛飼いの知識も経験もなかった私を職業人として指導し、対等なパートナーとして扱ってくれました。私は夫と共に行動し、視察や研修会にも出て、主体的に仕事に取り組むことで、まわりも応援してくれるようになりました」と明るく語る。
 「牛飼いは特殊な男社会。体力や技術が必要で、競りがあり、動くお金も大きい。自分が育てた牛の価値をアピールして、価格も交渉しなければなりません」。全国から人が集まる家畜市場に夫と出かけ、自ら競りに参加し、夫と議論することで成長してきた。夫が多忙なときは、ひとりで競りに行く。100人以上が集まる中、女性ひとりでの参加は稀だという。「俺の牛は女に競られた」という発言を耳にし、その悔しさも糧にして、一切妥協せずに育てた三宅牧場の牛は、第35回九州管内系統和牛枝肉共励会で農林水産大臣賞を受賞するなど、着実に高い評価を得てきた。

ヨーロッパ研修で仕事への意識が高まる

 2002年「男女共同参画に向けての私たち夫婦と仲間の取組コンクール」で農林水産大臣に表彰されるなど、夫婦としての在り方も注目されている。「JA部会の総会で『良質な牛肉を生産し経営を発展させる鍵は、いかに妻と共同して努力するか』と訴えたら、研修会は夫婦同伴が原則となり、会合はふたりで出席しやすい時間帯になったんですよ」と女性の立場も後押ししてきた。
 そんな三宅さんには、カルチャーショックを受けた経験がある。40歳の時、平成7年度福岡県女性海外研修事業「女性研修の翼」に参加し、ノルウェーやイギリスを10日間かけて回ったこと。「現地で出会った女性は、自分は働き納税して社会に貢献しているという自信に満ちていました。私も社会の一員として、仕事で社会に貢献したいと強く意識するようになりました」。
 もう一つ、力を注いできたのが堆肥の販売だ。畜産経営でネックとなる糞尿処理を逆手にとり、堆肥の商品化に成功。「土づくり講習会の講師が『堆肥は畜産農家の産業廃棄物』と言い放ち、農家は堆肥を使ってやっているという見下した態度が悔しくて…。それならば、みんなが欲しがるような堆肥を作ってやると決意し、改良を重ねたんです」と明かす。20年以上かけて顧客が広がり、今では生産が追いつかないほどの人気ぶり。「三宅さんの堆肥で育てた野菜はおいしい」「三宅牧場があってよかった」と喜ばれることが嬉しいと語る。

地域に根づき、自分の土俵を守って努力する

 もちろん、いつも順風満帆だったわけではない。「社会情勢によって浮き沈みはあるけれど、ひたすらまじめに努力することで這い上がってきた。私たちは起業家ではなく畜産農家。やみくもに拡大せず、自分の土俵を守り、自分で生産し販売する今のスタイルを維持していきたい」。行政やJAなどの役職が増え、人間関係はどんどん広がっている。「いろんな方と交流するのは楽しく刺激になる一方で、外を見ることで自分の土俵や限界も見えてくる。私たちはおごることなく、自分でできる範囲の仕事を精一杯やるだけ。そこに喜びを感じながらね」。情熱を宿した瞳でこちらをまっすぐに見据えて話すと、ふわっと優しい笑顔をみせた。  (2014年5月取材)

コラム

私の大切な時間

 牛を飼っていると、なかなか休めないという三宅さん。それでも「これをやれば次があると、いつも前向きに楽しんできた」と話す。そんな三宅さんの趣味はドライブ。「最近は役職などが増えてゆっくりドライブする余裕がないけど、車を走らせると爽快な気分でいいリフレッシュになりますね」と微笑む。

プロフィール

筑紫野市生まれ。高校卒業後、20歳で結婚。夫婦で「有限会社三宅牧場」を経営し、3人の子どもを育てつつ、牛の飼育に取り組む。「有限会社三宅牧場」代表取締役、福岡県指導農業士、福岡県農業・農村振興審議会第6期委員を務める。2002年、「男女共同参画に向けての私たち夫婦と仲間の取組コンクール」で農林水産大臣表彰を受賞。2004年に「博多和牛」の商標登録をとり、生産者仲間と共に安心・安全でおいしい和牛の生産と販売に取り組む。現在は320頭の黒毛和牛を飼育する傍ら、7ヘクタールの稲作もしている。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【ま】 【起業】 【農林水産】

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