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佐藤 宣子(さとうのりこ)さん

【ロールモデル】
ロールモデルとは

九州大学大学院農学研究院 環境農学部門森林政策学分野 教授

森林林業分野で女性参画を推進したい

 豊かな森を思わせるグリーンのジャケットを身にまとい、穏やかな笑顔で迎えてくれた佐藤宣子さん。現在、九州大学の教授として、森林政策や林業経済についての研究・教育をしている。日本の女性研究者の割合は約14%(2012年3月末現在)で、諸外国と比べて未だ低く、仕事と出産・育児・介護との両立が課題と言われている。そんな中、二人の子どもを出産した後も仕事を続け、研究者としての人生を切り拓いてきた佐藤さんに話を伺った。

育休がない時代、二人の子育てに奮闘

 元々、地球温暖化などの環境問題に興味があった佐藤さんは、九州大学の農学部に入学し林学科に進んだ。森林の多面的な機能や林業経営などについて学び、フィールド調査(現地での調査・研究)に興味を持つようになった。現場で聞き取り調査を行っていた時、関係者から「女性だと話しやすい。この仕事は女性に向いているね」と声をかけられた。男性が大多数を占めていたこともあり、「あまり女性が参入していない分野なら、今までと違う視点から研究ができるかもしれない」と思った。
 大学院卒業後は、大分県で研究員として勤務し、結婚。第一子が生後2か月の時に、助手として九州大学で働くことに。大分で生活をしながら、約2時間かけて福岡まで通勤する日々だった。その後、第二子を出産。それをきっかけに福岡県に住まいを移し、今度は夫が大分まで通勤するというスタイルになった。夫婦協力しながらの子育てだったが、「当時は、それでも手が足りず、母や義母、近所の人、研究室の学生にも助けてもらいました。自分だけで抱え込まなかったのが、何とか乗り切れたコツだったと思います」。周囲の温かい協力もあり、佐藤さんのキャリアは積み重ねられていった。

仕事も子育ても一人で抱え込まないこと

 その後もライフスタイルの変化に柔軟に対応し、その時々で最善と思われる選択をしながら、働き続けてきた。「仕事を続けるにはどうすればいいのかしか考えていませんでした。もっと厳しい環境で頑張っている研究者もいたので、何とかなるかなと思って…」とおおらかに笑う。
 そうして2007年、佐藤さんは教授に抜擢された。農学部の約60名の教授の中で女性教授はわずか2名。「採用する側は、研究者として一番業績を上げられる20代後半~30代に結婚・出産となる可能性を考えると、ペースダウンになるというのを恐れているかもしれない。でも、女性の方が平均寿命は長いので、長期スパンで能力を見てもらいたいですね。女性の方も、自分一人で抱え込んであきらめてしまうのは、もったいない。自分に出来ることと、周囲に協力して欲しいことをしっかりと把握して、それを表現できる環境づくりをしておく必要があると思います。常に力を蓄えておくのも大切なことですよね」。

森林政策と女性~九州から世界に

 女性が働きづらい時代を乗り越え、一歩ずつ前進してきた佐藤さん。これまで、持続的な林業経営、多面的機能の確保に向けた森林資源管理、山村地域の振興・生活問題などに関わる社会経済的な分析を、主に九州を領域に行ってきたが、ここ数年、海外にも目を向けて研究している。
 最近では『林業女子』という言葉を耳にするほど、林業に携わる女性や、そのネットワークは増えている。例えば、全国の都道府県庁に勤務する林業技術者の女性たちが500名以上集い、「豊かな森林づくりのためのレディースネットワーク21」を結成し、毎年、フォーラム・シンポジウム等を実施し交流を深めている。とはいえ、まだまだ活躍出来る場所は行政等に限られているのが現状だ。「海外ではノルウェーのように、林業分野で男女平等の国家戦略が立てられている国もあります。日本では制度的にまだ整っていないところが多いので、さらに研究を進め、日本の林業でも女性が活躍できる形を実現していきたいですね。社会の多様性をきちんと確保するという点でも、とても大切だと思います」。佐藤さんは、男女が共に活躍出来る社会を、また21世紀に求められる森林政策のあり方を模索し続けている。

(2013年12月取材)

コラム

 忙しい毎日の中で、気分転換のアイテムとなっているのがアクセサリー。発表やプレゼンの時には『勝負アクセサリー』を身につけて挑む。論文を書くたびに自分へのご褒美として一つずつ大切に増やしている。「子育て時期、だんだん自分のことを構うことができなってきて…。そんな時、一瞬で気分転換になるのがイヤリングだったんです。青や緑色が大好きです」。
 そして、もう一つのパワーの源は歌手の「中島みゆき」さん。数年前にファンクラブに入り、コンサートにも足を運ぶ。「特に歌詞が魅力的。落ち込んだ時は一日中聞いています」と笑顔で語る。

プロフィール

太宰府市出身。九州大学大学院農学研究科博士課程(林業学専攻)修了。農学博士。大分県きのこ研究指導センターに研究員として勤務後、九州大学で助手、助教授等を経て、2007年から、九州大学大学院農学研究院環境農学部門森林政策学分野(当時:森林資源科学部門森林政策学分野)教授。2011年、林業経済学会 林業経済学会学術賞など。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【さ】 【農林水産】 【研究・専門職】

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