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城 寿美香(じょうすみか)さん

黒木たかっぽ 代表

お腹も心も、幸せでいっぱいにしたい

 「まず、おはぎを食べてから話をしましょう」。白い割烹着姿で迎えてくれたのは、城寿美香さん。おはぎの横には、遅咲きのゴーヤの花。箸置きはツバキの葉。「箸置きがなくて思いついたアイデア。植物たちが“使って”って呼ぶの」。竹の郷として知られる八女地方では、竹の器を「たかっぽ」と呼んでいる。器に盛られた田舎料理は、すべて黒木の山の幸。さりげなく料理に添えられた野花に心和らぐ。だご汁やイモまんじゅうなど、地元に伝わる田舎料理が中心のお弁当や鉢盛。その中でも「たかっぽ」に入れて作る、手作りコンニャクは人気が高く、東京の飲食店からも注文を受けている。

60代で新たな人生のスタートを切る

 黒木町の農家の長男と結婚後、約40年間、農業に携わってきた。自然相手の仕事は好きだが、農作業を黙々とこなし明け暮れる日々に、笑顔が薄れることもあった。「好奇心旺盛な私は、年を重ねるにつれて少しずつ、何かしたいと思うようになっていました」。“自分に何が出来るだろう?”そこで思い浮かんだのは、幼い頃から食べてきた思い出深い料理の数々。“長年作り続けていた、だご汁やコンニャクならできる。昔ながらの素朴な料理を竹の器で食べてもらいたいな。”そんな夢を描き続けた。
 「開業資金が無かったので、年金を元手に自分の夢を叶えようと計画していました。そこが、私の新たな人生のスタートだと決めて」。その時期が来るやいなや、夫に離農を宣言。そのまますぐに保健所へ。飲食物取扱の注意や、出店のために必要な許可等について学んだ。少しずつ農産加工品を作り始め、2008年、「黒木だご汁隊たかっぽ」としてイベント販売を主とした活動をスタート。商売のノウハウを学ぶ勉強会にも積極的に参加した。旧家の屋敷の台所を、快く貸してくれた家主からの応援も後押しとなり、活動に弾みがついた。出店を続けていると、その評判は瞬く間に広がり、一年後にはそこの座敷で予約制の昼食も提供できるようになった。

「人を楽しませたい」という思いを料理に表現

 朝6時頃から、イモまんじゅう、おはぎ、お弁当の準備をする。それが終わると、すぐさま予約客の昼食の準備に取りかかる。目がまわる忙しさのはずだが、「人と会えておしゃべりができることがうれしくて」と笑う。ずっとやりたかった夢が叶い、忙しく過ごす日々に幸せを感じるという。地元だけでなく、遠方からも評判を聞きつけた人が訪れるようになった。かつて子どもたちのために、卵の殻を型として利用したアイスを作ったり、みかんに顔を描き「おかえりなさい」と書いた紙の上に置くなど、身近なもので楽しむ工夫をしていた。「人を楽しませたい」という思いがユニークな発想を生む。味付けや盛り付けの細部に至るまで、田舎の魅力を見事に表現しながらも「私、何も勉強していないのよ」と、照れ笑いを浮かべる。

今幸せなのは、一歩踏み出したから

 常に心がけているのが、『積極的に挑む』ということ。「自分の意志で歩くという覚悟を持って一歩踏み出せば、年を取っても夢を叶えることが出来るんです」。
 最初は協力的でなかった夫が、城さんの頑張りを目にして、店や家事を手伝うようになったという。「一番驚いたのは、65歳まで家事など一切しなかった夫が、進んで何でもやるようになったこと。すごいことだと思います。なかなか照れて言葉に出来ないけど、とても感謝しています」。
 山間の小さな集落にある自宅から店へ通っているが、年を取ると車の運転が危なくなることを自覚している。そこがもう一つの区切りだという。「車が運転できないなら、家で何かをすればいい」と考え、農家民宿を目指している。旬の料理を提供し、農業体験などを通して、田舎暮らしを丁寧に伝えたいそうだ。日本の原風景とも言える環境の中で、ゆっくりと磨かれた感性を生かし、人に喜ばれる仕事を生み出した。城さんは、満面の笑顔で今日も多くの人の心とお腹を満たしている。
(2013年11月取材)

コラム

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城さんが大切にしているのは、よく笑うことと、時間を忘れてのんびりと自然に親しむこと。「床の間に飾るノギクやハギの花を探したり、“この植物は料理の盛り付けにも使える”なんて考えたりする時間が大好き。そんなひと時を過ごしていると、自然豊かな山に生まれてよかったと、心から幸せを感じる」と目を輝かせて語る。

プロフィール

八女市黒木町出身。結婚を機に就農。4人の子どもを育てながら約40年農業に携わる。2008年「黒木だご汁隊たかっぽ」として、地元の農産物を使った加工品の製造・イベント販売をスタート。2009年、お食事処「黒木たかっぽ」をオープン。町おこし団体等、他県からの視察やメディア取材も多数。






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