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佐藤 有里子(さとうゆりこ)さん (2013年10月取材)

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株式会社キャリア・リード 代表取締役 / NPO法人わたしと僕の夢 代表理事

母子家庭の就労と子どもの夢をサポート

 「母子家庭のお母さんたちが働けるようサポートをしたい。それは将来を担う子どもたちの健やかな成長にもつながる」。自らの経験をもとに、女性の就業支援会社を立ち上げた佐藤有里子さん。“ありがとう”の輪を広げるべく、日々奔走している。

仕事、結婚…夢破れた先にあった現実

 「小さいときから保育士になるのが夢でした」という佐藤さん。福岡の短大を卒業後、念願の保育士に。だが、実際の現場で大きなショックを受けたという。「長年、抱き続けた理想が高すぎたのかもしれません。私はうまくできない子や引っ込み思案な子を応援したいと思っていたのに、就職した園はそんな方針ではなくて…。あまりに心が痛み、2年で辞めました」。
 その後、23歳で結婚して2児の母に。だが結婚生活は、佐藤さんにとっていい環境ではなかった。古い家のしきたりになじめず、ひたすら耐えるしかない毎日。そんな中、呼吸器系の病気を発症して、入退院を繰り返し、死に直面したこともある。
 33歳のとき、子どもを連れて離婚。パート勤めからスタートした。「お金をもらえて、“ありがとう”といってもらえる。それが生きる気力になりました」。パート仲間には母子家庭の母親が多く、みな厳しい生活を強いられていた。「女性が一人で子どもを育て、きちんと生活していけないなんて、おかしい。生真面目にコツコツ働くお母さんたちなのに、自己PRがうまくできなかったり、イメージで損していたり、日々の生活に追われて情報が得られなかったり…。母子家庭の就労を支援したいと思ったんです」。

6坪の事務所から始まった女性支援の道

 周囲の反対と心配をよそに、人材紹介の会社を起業した。事務所を探すために不動産会社を回ったが、条件に合う物件はなかなか見つからない。ある日、飛び込んだ不動産会社で“ご縁”に恵まれた。奥に座っていた会長が佐藤さんの想いに賛同し、会社の駐車場2台分をつぶして、6坪の事務所を建ててくれたのだ。会長の「5年はあきらめるな」という言葉を胸に刻み、踏ん張った。1年目は大赤字。「思うように受入れ先を探せず、登録してくれたお母さんたちに申し訳なく、悔しかったですね。事務所には、母子家庭の子たちが生活の悩みを直接相談に来ることもありました。こんなに小さくて先があるかどうかもわからない会社に、登録に来てくれる人たちがいる。少しでも仕事を出してくれる会社がある。それが本当にありがたかった」と振り返る。翌年からは母子家庭に絞らず、幅広い女性を対象にして、医療福祉関連への派遣もスタート。会社は少しずつ軌道に乗った。
 2002年に久留米で起業して、今年で11年目。2年目には大手企業にいた男性が「小さいけど必要な会社です」といい、役員として参画してくれた。徐々にスタッフが増え、福岡オフィスも開設。これまでの登録者は4500人を超える。「仕事を得たことで母子生活支援施設から出て、生活を始めた親子がいるんです。『ずっと夢だった犬を飼っています』なんて言われると、本当にうれしい」と満面の笑みで語る。

真面目にやれば誰かが応援してくれる

 2012年にはNPO法人「わたしと僕の夢」を立ち上げた。母子家庭の子どもを対象に無料の学習塾を運営し、夢や目標を実現できるようにサポートしていく。「子どもは社会の宝。近所のおせっかいなおばちゃんとして関わっていきたい。気にかけてくれる人がいると、子どもにも居場所ができる」。おせっかいといえば、最近は見合い話を相談されることも増えてきた。「再婚して、幸せになった人もたくさん見てきました。結婚のお手伝いもできれば」。頼まれたらやってみる性格ゆえ、活動の幅はどんどん広がる。
 「母子家庭は、決して他人事ではないんです。結婚生活に行きづまり離婚した人、結婚せず子どもを産んだ人、突然夫が他界した人…。私の役割は、仕事というテーマで人の縁を結ぶこと。誰でも必要とされ“ありがとう”といわれるのはうれしいですよね」。そんな佐藤さんからのアドバイスは。「やりたいことがあるのに、引いてしまうのはもったいない。失敗を前提にしないで、思いがあるならチャレンジしてほしい。やっていれば助けてくれる人、応援してくれる人が現れるから」。そうして「誰かが来る」といいながら、祈るように両手を合わせ、佐藤さんは天を仰いだ。どんなときもこうして自分を信じ、人を信じて、一歩ずつ前に進んできたのだろう。「6坪の事務所を建ててくれた会長をはじめ、本当にいろいろな方々に助けられてきました。これからも社会にご恩を返していきたい」 

(2013年10月取材)

コラム

私の大切な時間

 19歳と21歳になった子どもたちはとても仲がよく、「お母さんに感謝している」といってくれるそう。どんなに忙しくても、母親として弁当を含めて1日3食をできるだけ手作りするように心がけている。そんな佐藤さんの息抜きタイムは、温泉に入ること。「九州の秘湯にもよく行きますよ。大自然の中で温泉に入ると、素の自分に戻れます。社員と温泉に行くのも大好きで、この前は温泉に泊まって会議しました」。

プロフィール

久留米市で生まれ、短期大学を卒業。2年間保育士をしたあと、結婚、2児を出産、そして離婚。2002年に久留米市で有限会社キャリア・リードを創立、2004年株式会社にして、2005年福岡オフィスを開設。2008年、久留米市から母子家庭等就業・自立支援センター事業の業務委託をうける。2012年、特定非営利活動法人「わたしと僕の夢」を設立。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【さ】 【起業】 【NPO・ボランティア】 【子育て支援】 【福祉】

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