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南里 美紀(なんりみき)さん  (2013年10月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

南里園芸 / 株式会社NANRI 取締役

女性の視点を生かし、洋ランの世界で花を咲かせる

 閑静な住宅街の中を歩いていると、美しい花が並び、光降り注ぐ建物が現れた。ガラス温室の向こうには純白のランの花が咲いている。ここは糟屋郡志免町にある「南里園芸」。訪れると南里美紀さんが笑顔で出迎えてくれた。結婚後に洋ランの生産に携わって17年。現在は、1500坪の広さで7万鉢のランを栽培している。主に冠婚葬祭用のコチョウランの切り花を北海道から九州まで出荷しているが、ここまでの道のりは決して平たんなものではなかった。

積極的に意見を交わし、試行錯誤することで経営も順調に

 鹿児島県に生まれ育った南里さんは、短大卒業後、福岡県の企業に就職し事務の仕事をしていた。その後22歳で結婚。相手は一人で洋ランを栽培していた。南里さん自身はそれまで農業経験は全く無かったが、結婚を機に夫とともに洋ラン栽培の道を歩むことになる。手探りでのスタートだったが、自分の出来ることから少しずつ携わっていき、やがて経理や雇用管理も任されるようになった。子どもの小学校入学をきっかけに積極的に生産管理にも関わるようになる。
 夫が義父から引き継いだ時の経営状態は、とても厳しいものだった。「昔と比べると花の値段は下がっているのに、重油代が高騰するなど経費の負担は大きくなっています。自分たちに合う品種を探していた時に、コチョウランの中でも栽培しやすく花の形も美しい“ジョインエンジェル”という花にたどり着きました」。品種の選定にも女性の視点を生かし、夫婦で意見を交わしながら栽培方法も工夫するようになったことがきっかけで、効率よく生産販売が出来るようになった。それと同時に経営も徐々に軌道に乗り始めた。

何より人を大切に~女性が働きやすい環境づくり~

 生産現場にも女性の意見が入ったことで改善された部分は多い。「花の包み方や茎の切り口につけるキャップなども含め、梱包作業全体を見直しました」。細かな部分まで気を配ることができるようになり、やがて箱詰めスタイルが評判になった。
 よりよくなったのは雇用の面においても同様だ。だれか1人が休んでも常に補い合える環境作りを意識している。「パートさんは全員女性。子どもが熱を出すなど緊急の時でも気兼ねなく休めるよう、働きやすい配慮をしています」。先取りで仕事を進めたり、便利な資材を導入することで、急な休みが出ても注文に応えることができるようにしているのだ。小さなところにも効率化を図り、一年中いつでも切らさず市場に花を出荷できる体制を整えたことが、販売する上で大きな強みになった。

与えられた状況の中で、今出来ることを精いっぱい行う

 2010年からは、福岡県女性農村アドバイザーに認定され、積極的に他の農業者との交流も深めている。「この町では農業に携わっている方が少ないので、農業をされている方と交流が出来るのは、とても勉強になっています」。そこから得た知識が事業に生かされることも多いという。
 順調に業績が上がっていたが、2013年の夏の猛暑では多くの株がダメージを受けた。「植物は生き物。環境で左右されるところが大きいので、試行錯誤をしながら日々勉強です。植物を育てるのって本当に奥が深いです」。同じ品種でも生産者によって花の咲き方が大きく違い、花の顔や表情が違うという。「自分たちの作った花って、見ると分かるんです。雑誌に載っていたり、実際に飾られているのを目にした時が何よりうれしい瞬間です」と目を細めて語る。現在は農業に加え、義父から不動産経営も任され、忙しい日々を送っているが、自分に出来ることは何かと常に考えながら、今やるべきことに全力で取り組んでいる。将来は、切り花コチョウランの生産日本一になって、洋ラン栽培を極めたいという南里さん。真っ白に咲き誇るランのように、純真な気持ちでこれからもたくさんの夢の花を咲かせていくだろう。 (2013年10月取材)

コラム

南里さんの大切な時間は、夫婦で旅行やゴルフをすること。以前は月に1度はゴルフに行っていたという。「私の周りに女性でゴルフをする人がいないので、夫とその友人に混ざって、男性の中でゴルフをしています。ここ1、2年は忙しくてあまり行けてないのですが、また余裕ができたら再開したいですね」。

プロフィール

鹿児島県出身。大阪の短大を卒業後、福岡県の企業に就職し、事務職を経験。22歳で結婚し、二人の子育てをしながら、「南里園芸」で栽培・経理・雇用など広く経営参画。2010年から福岡県女性農村アドバイザーに。その他、「株式会社NANRI」取締役として不動産経営も行っている。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【な】 【農林水産】

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