講師情報あすばる相談室ライブラリセンター一覧

永淵 恭子(ながふちきょうこ)さん

福岡手話の会 前会長

手話で伝え続ける 飾らない奉仕の心

 聞こえることが当たり前の私たちにとって、表情や身振り手振りで会話を交わす手話は、未知の世界の言葉に思える。その世界の扉を叩いて15年。福岡手話の会前会長であり、手話通訳士永淵恭子さんに手話への思いを聞いた。

ろう者に寄り添って

 「手話を始めたのには、特別な理由なんてないんです」と控えめに話し始める永淵さん。きっかけは子育てが一段落したタイミングで目にした「手話講習会受講生募集」の記事。「何か世の中の役に立つことをしたい」という、かねてからの思いで迷わず応募した。その時は、こんなに長く続くとは思っていなかった。「私って不器用で何をしても続かないんです。手話を覚えるのも落ちこぼれ気味。でも、初めて自分の手話が通じた喜びは忘れられません」と目を輝かせる。「私の拙い手話が通じた!」そんなシンプルな気持ちが、今でも一番の原動力だ。
 ひと言で「耳が聞こえない」と言っても、その状態は様々。永淵さんが主に関わるのは、生まれてから言葉を習得する前に、耳が聞こえなくなった人達だ。かつて、ろう学校では手話が禁止された時代があった。声は出せるのだからと「努力して口で話すこと」を強要された。生徒たちは教師のいないところでこっそり手話を使い、先輩が後輩に教えた。そんなふうに守ってきた手話。「私にいろいろな手話を教えてくれた、施設で暮らすろう者の方が、手話を忘れてしまったと言われたんです。周りに手話のできる人がいなくて、とても孤独だと話されました。」と表情を曇らせる。様々な問題意識の中で「一人でも多くの人に手話について知ってもらいたい」という思いを強くする。

歴代二人目の女性会長として

 2009年から2012年の3年間、福岡手話の会の会長を務めた。「手話通訳士認定試験に8年間も落ち続けた私です。そんな私でいいと言ってくれるので引き受けました」。会長になったことで、それまで見えていなかったことに気づく。みんな時間のやりくりや、いろんな事情がありながら、頑張っている。「手話を続ける理由はそれぞれですが、ボランティア精神がなければできません」。仲間への感謝の気持ちから、せめて和やかで楽しい雰囲気をつくることを心がけた。
 福岡手話の会40周年を迎えた2012年の春。社会奉仕活動を続けてきた団体に贈られる緑綬褒章を受章。永淵さんは会長として受章式に参加した。3ヶ月後には報告会をかねての40周年記念行事があった。発足当初の先輩たちも参加し、これまでを振り返るとてもいい会になったという。「がんばってきた先輩たちや、仲間があっての今の私を再確認しました」。福岡手話の会は、会員はほとんどが女性だが、歴代会長のほとんどが男性。これからは、あらゆる分野で女性トップの必要を感じている。「自分が会長をしたことで、他の人がやりやすくなったんじゃないでしょうか。『彼女がやれるなら自分も!』と後進に勇気を与えたのは確か」と、この時ばかりは自信満々に笑う、あくまで謙虚な永淵さんだ。

手話の輪を広げ続けたい

 この6月から、手話通訳のできる臨時的任用職員として区役所で働いている。障害者手帳や福祉乗車券の手続きなど、一般受付の対応をしながら、ろう者からの相談も受ける。「新たに手話を始める人が減っている理由のひとつは、手話が仕事につながらないこと。臨時的任用職員の仕事に就くのは、自信もなかったし条件的なことでも悩みました。でも、手話を使う仕事を志す人達へのつなぎ役になれば…」と先を見据える永淵さん。軽やかで飾らない奉仕の心を、手話と共に伝え続ける。

(2013年8月取材)

コラム

わたしの大切な時間

 永淵さんは大学の4年間、演劇サークルで芝居をしていた。演劇仲間だった夫とは、着ぐるみショーのバイトで意気投合した仲。「手話では豊かな表情が大事。私はそれが苦手で『芝居をやっていた』なんて、とても恥ずかしくて言えなかったけど、最近はなんだかふっきれました」と明るく笑う。テレビドラマで、芝居を続けている仲間を見つけるのが楽しみ。最近では「NHKの朝ドラ『あまちゃん』に、知り合いが出ていたんですよ」と少女のような笑顔を見せた。

プロフィール

佐賀県出身。福岡市在住。 1997年、手話奉仕員養成講座後、福岡手話の会入会。2009年、手話通訳士認定試験合格。
福岡手話の会は、福岡市を中心に大学生から80才までの会員が約360人所属するボランティア団体。8つの支部がある。ろう者と交流する月例会と、月1回の運営会議があり、年間100件を超えるボランティア活動を行っている。






キーワード

【な】 【NPO・ボランティア】 【研究・専門職】

お問い合わせフォーム
公式Facebook
メルマガ登録
ふくおかみらいねっと
あすばるのすまっぽん!