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船越 美治代(ふなこしみちよ)さん  (2013年3月取材)

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農村加工所「まんま実~や」 代表

古賀の豊かな食文化や郷土料理を 次世代に伝えたい

 福岡市の近郊・古賀市に、地域の農産物をジャムやレトルト食品等に加工する「農村加工所まんま実~や」がある。その代表を務める船越美治代さんは、農業の新しい展開を示す起業家としても注目されている。

「農業女性ビジョン」が実現した!

 もともと家族で養豚業を営んでいたが、船越さんが43歳の時離農、夫は電気屋を始めた。船越さんは家業とは別の仕事をしながら古賀市の農業委員を務め、そのOBとして古賀市農業女性活動促進事業推進協議会の委員に就任。その協議会の活動の中で「加工所を設立し地域の活性化と地産地消を推進する」という「農業女性ビジョン」を掲げたのが、「まんま実~や」の発端だ。
 古賀市内各所から集まった農家の女性12人が出資して発足。船越さんは社長ではなく「代表という係」で、皆のスケジュール調整や生産管理などを担当している。メンバーのそれぞれが本業の農業に支障がないよう、だいたい「朝6時から2時間、1日おき」というスケジュールで、2班に分かれて作業する。順調に稼働しており、開所から丸4年がたった。

今、伝えないと残らない郷土料理

 「まんま実~や」で一番よく出る商品は、古賀産の苺やいちじく、キウイ、各種みかん等の果実を使った季節のジャム。JAの選果場や、果物農家のスタッフ宅からの規格外農産物も積極的に使う。なかでも色鮮やかな「あまおうジャム」は特に人気が高い。瓶ではなくスパウトパウチというチューブで、使い勝手の良さが消費者の心をつかんでいる。これも、主婦でもあるメンバーのアイデアだ。
 レトルト食品で温めるだけで食べられる、郷土料理の「らぶ」も看板商品だ。「らぶ」とは地方によっては「だぶ」とも言うが、古賀市周辺で祝事や仏事に欠かせない具だくさんの汁。地域には「らぶ碗」という専用碗や、専用の細工麩「らぶ麩」もあるほどだ。その他、郷土料理の「にわとりごはんの具」「石瓦煮」などもレトルト食品にしている。
 地元でも「らぶ」を知らない人が増え、古賀の郷土料理の存続に危うさを感じ、公民館や学校で『らぶ』や『味噌づくり』を教える船越さん。「知ってもらうことで、農業への理解が深まり、農業を買い支えていこうという消費者意識も生まれる。郷土の豊かな食文化を次世代へつなげていきたいのです」と語る。昭和20年代、古賀はみかんの産地でどこの家もみかん農家だったが、今はクラスに農家の子が1人いるかどうか。しかし、市内で作るみかんの種類は30種以上。「まんま実~や」で作るポン酢や塩ダレ、カレー、餃子にもみかんが入っている。「古賀愛なんです」と笑みを浮かべる。

取得した知識や技術は、必要な人には公開する

 「損をしてはいけないのですが、たくさん儲かる必要はないんです」と船越さん。レシピが知りたい人には教え、ジャムのスパウトパウチの方法も公開し、技術指導もする。
 「顔が広いね」とよく言われるが、そのネットワークも人にどんどん紹介する。年に2~3回、自分たちで講師を見つけ開催する商品研修会も、興味ある人には参加してもらっている。何しろ、オープンなのだ。
 12人のほとんどが農家の妻。本業も大事にするから、夫たちも応援してくれている。「男性陣が包丁研ぎを買って出てくれるの」と嬉しそうに語る船越さん。盆とお正月以外は無休だが、積立をして全員で年1回研修旅行に行くのが楽しみだそうだ。「あとは、後継者がほしいですね。私たちの理念を若い人たちが受け継いでくれたら最高です」。

(2013年3月取材)

コラム

「とっておきの時間」

「週1回韓国語教室に通っているのが、楽しくって」と船越さん。近くの公共施設で、男女約10名で「自称イケメン」の韓国人男性講師に習っているそうだ。「教室の仲間で、韓国に3回ほど行きましたよ。史跡を見たり、美味しいものを食べたり。お恥ずかしながら、語学は全然上達してないんだけど、本当に楽しい息抜きタイムです」。

プロフィール

福岡県古賀市の農業女性で構成された農村加工所「まんま実~や」代表。2003年8月~2009年7月、古賀市農業委員を務めた後、2009年8月、古賀市農業女性活動促進事業推進協議会の委員に就任。協議会で知り合った仲間と出資し合い「加工所設立で地域の活性化と地産地消を推進」というビジョンを実現した。

 

 


 

 

 


キーワード

【は】 【起業】 【農林水産】

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