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小賀 友子(こがゆうこ)さん (2012年12月取材)

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明蓬館高校 副校長

教育機会の新たな可能性を目指して

 「こんにちは」と気持ちの良い挨拶で迎えてくれたのは、廃校になった川崎町の安宅小学校を利用した広域通信制の「明蓬館高等学校」の生徒たち。開校当初からこの学校の副校長を務めているのが小賀友子さんだ。校内を案内しながら、生徒、地域の方との交流の話を嬉しそうに話す小賀さん。「仕事も家庭も支援を利用しながら、どちらかだけでなく両方を楽しんで欲しい」と女性にメッセージを送る小賀さんのこれまでのキャリアの軌跡と思いとは。

川崎町に広域通信制高校の開校

 三人の息子の母でもある小賀さんは、川崎町内の小中学校初の女性PTA会長として、小学校廃校問題に当初から関わり、町に廃校後の利用を訴え続けた。そんなある日、川崎町で開催されたソーシャルビジネスネットワーク九州大会で明蓬館高校理事長と川崎町町長が出会い、学校に行けない子どもたちの学校を作りたいという思いと、廃校を利用して町を活性化したいという思いが一致し、公設民営の学校創設の話が持ち上がったという。小賀さんは学校審議委員に指名され、明蓬館高校設立に向けて力を注ぐこととなった。こうした思いと努力が実り、2009年、川崎町は国の「地産・地習・e環境教育特区」に認定され、町のバックアップを受けた「明蓬館高等学校」が開校した。

子育ての問題を社会の問題として捉え行政に働きかける行動力

 長男の出産当日まで教壇に立っていたという逸話もあるほどの仕事好きの小賀さん。長崎短期大学幼児教育学科で美術講師として勤務していたが、職場結婚した夫の転勤に伴い退職して夫の実家のある川崎町に転居。すぐに声がかかり中学校の初任者美術教師の指導教官の職に就く。子育てと仕事の両立のなかで、町の施設のトイレにはおむつ交換台が無い、乳児健診の際にベビーベッドが無い等に気づき、行政に手紙で訴えたところ、改善されたという。子育て中の問題を自分だけに留めず、社会の問題として捉え行動する小賀さんである。町が呼びかけた「夢づくり町づくりプラン」作成には委員長として参加。子育てに関する具体的な要望を150以上提出し、実施の可否を各課に訪ね回答を得たそうだ。

お母さんはみんなの太陽

 町には子どもを遊ばせる全天候型の施設がなかったため、図書館を利用して保護者たちに折り紙絵本作りを教え、子どもを遊ばせるサークルを立ち上げた。それがきっかけとなり、地域子育て支援センターが設立され、やがてそれが児童館となった。昼間学校に行かずにたむろしている中学生を放っておくことのできない小賀さん。声をかけたその子たちが児童館に足を運ぶようになったことから相談員となった。やがて、児童館の中に、不登校の子どものための受け皿となるこども支援センターができ、小賀さんはそこで11年間勤務し、250人の学校に行けない子どもたちと関わってきた。その経験から福祉事務所の家庭児童相談員に任命され少年院や鑑別所に面会に行き、暗く重い気持ちを引きずり泣きながら運転をして帰宅することもしばしばであった。その中の一人の少年の自殺に衝撃を受け立ち直れない日々を過ごしたが、末の息子から「お母さんはみんなの太陽なんだから」と言われ、自分のやってきたことを認めてくれていた喜びと成長ぶりに涙がとまらなかったという。我が子から励まされたのは初めてのことだった。

福岡県女性研修の翼に参加して

 仕事をしながら社会活動にも関わり、わが子がスポーツをすればコーチもし応援にも駆けつけ、楽器を習えば送り迎えをするなど、全てに全力を注いでいた小賀さん。何とか時間をやりくりしながら余裕とは無縁に突き進んできたが、「第28回福岡県女性研修の翼」に参加してのスウェーデンやデンマークでの研修が、自分の働き方を見直すきっかけになったという。今は研修で学んだ「ワーク・ライフ・バランス」を念頭に置き自分の時間も楽しめるようになったそうだ。

働く意欲のある子どもを育てたい

 不登校生に向き合ってきた経験や社会活動などの経歴から明蓬館高校副校長に推薦されたが、当初は対面しない教育でいいのかと疑問に思っていたそうだ。しかし、学校に行けない多くの生徒達の現実を考えると、インターネットを利用して学び、高校の資格が取得できれば本人にとって新たなチャンスが広がるのでは、という結論に至り引き受けたという。スポーツや芸術分野で海外に留学し、日本の高校に通えない生徒達もWEB授業を受講し高校卒業資格を得ている。また、学校に行けなかった引きこもりの生徒が現役で東大に合格している。不登校などの悩みを抱えていた生徒たちは、農業体験や餅つきなどの体験授業を通して、地域の人達の温かさに触れ、地域とのつながりは着実に育まれている。川崎町が大好きで、この町から一人でも多くの働く意欲を持った人を育てたいと願う思いは熱い。 (2012年12月取材)

コラム

私のオフタイム

 お酒が大好き。なかでも一升はいけるという日本酒。グラスをいろいろ集めていてその日の気分によりグラスやお酒を選ぶとか。それと時間をやりくりして出かける家族との温泉。定年を迎えるころには温泉と地酒の本を出したいそうだ。また、生徒と一緒に楽しもうとギターを始め、中学・高校時代の部活だったテニスも復活した。

プロフィール

福岡市生まれ。大学を卒業後、長崎短期大学幼児教育学科に美術担当講師として就職。夫の転勤に伴い田川郡内中学で美術の初任者指導教官となる。出産後立ち上げた子育てサークルが地域子育て支援センターからこども支援センターに発展し相談員を歴任後、田川福祉事務所家庭児童相談員となる。同時に西南女学院大学短期大学部保育科講師も務める。川崎町初の女性PTA会長を歴任後、平成21年4月設立の明蓬館高校副校長となる。

 

 

 

 


 

 

 

 

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