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植野 雅子(うえのまさこ)さん (2012年6月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

TOTO株式会社 総務課 課長
(取材時:人財開発本部 人財開発センター ダイバーシティ推進グループリーダー)

女性が自分らしく活躍できる土壌をつくりたい

 ここ数年、日本の大企業が積極的に取り組みはじめた「ダイバーシティ」(Diversity=多様性)。年齢や性別、働き方などが違う多様な人財を受け入れ、活かす組織づくりを進めている。その大きな柱となるのは、女性社員の活躍推進。女性の社会進出を受け、結婚・出産しても働き続けられる環境を整えることが、企業戦略の課題にも位置づけられている。
 福岡県北九州市に本社を置くTOTO株式会社は、早くからダイバーシティに着目してきた企業の一つ。従業員数8,000人を上回り、国際的に事業を展開する同社は、2005年に社長直轄の「きらめき推進室」を発足。それを基盤に2010年度スタートした「ダイバーシティ推進グループ」でリーダーを務めるのが、植野雅子さんだ。知的でさばさばとした雰囲気に、“頼れる上司”という存在感が漂う。
 今でこそ管理職として活躍する植野さんだが、意外にも入社したときは一般職だったという。「当時、総合職は男性ばかり、女性は一般職のみの採用でした。一般職はサポート的な仕事が大半で、研修はたった1週間。総合職の男性は1か月以上に渡って研修を受け、給料にも歴然とした差があり、疑問を持ちましたね」と振り返る。

女性のための勉強会をスタート

 入社から5年を過ごした東京では、主に業者からの電話に対応。電話口で「女性にわかるの?」といぶかしがられたことも。それでも、毎日何十件もの問い合わせに応じ、商品知識と経験を積み上げているという自負があった。一方で、ある思いが強くなる。「女性のための勉強会をしたい!」。「男性は社内外で研修に参加したり、上司や仕事先の方たちと飲みに行くことで、いろんなことを吸収できる。でも、事務職の女性には学ぶ機会がなかったんです」。思い切って、社内で女性の勉強会を立ち上げた。業務の効率化を図ったり、新商品について学んだり…女性社員が輝きはじめた。歴史ある男性中心の企業に、新しい風が吹き抜けた瞬間だった。

何でも「話してみる」ことが大事

 20代半ばに福岡支社(現・九州支社)へ移っても、植野さんは意欲的に行動した。まず驚いたのが、女性社員が当番で全社員のお茶をいれ、配っていたこと。「東京支社にはそんな習慣がなかったから、ショックでしたね」。会社にかけあって徐々に習慣を改め、最終的にセルフサービスにこぎつけた。「どんなことでも、初めからパーフェクトにするのは難しい。でも、どうやったらできるか知恵を絞り、だんだん目標に近づけばいいと思うのです。あとは、誰に訴えたらいいのか見極めるのも大切ですね」。
 20代後半から30代にかけて社内で試験を受け、一般職から専任職、総合職へ昇格。九州のショールーム、営業センターなど新しい事業を次々に任され、女性が多い職場をまとめてきた。産業カウンセラーの資格も取得した。「傾聴を学んだことが、とても役立ちました。女性スタッフとの面談で、困っていることや仕事への思い、キャリア像などをじっくり聞き、整理する。すると本人の考えがまとまり、ビジョンが見えて、モチベーションも上がるんですよ」。

きめ細やかな取組を展開

 「まさか私が管理職になるとは、思ってもなかった」と笑う植野さん。出発点は、入社してすぐに芽生えた「私たち女性もがんばっているのに、なぜ総合職の男性と待遇が違うの?」という小さな疑問。「現状を打破するためには、人のやっていないことをやり、仕事を変える仕組みをつくるしかないと考え、それを実行してきました」と力を込める。
 リーダーとなった今は、女性のためのステップアップ研修、管理職の育成、女性総合職の働き方を考える場の提供など、多彩な取り組みを実施。結果として、結婚を機に辞める女性が減り、女性の営業職や管理職の割合が増えてきた。決して平たんな道のりではないけれど、力強く確実に歩みを進めている。「誰もが管理職を目指さなくていいと思うんですよ。それぞれの考え方がありますから。ただ、会社はこう考えている、こんな制度も利用できると伝えれば、ぐっと伸びる女性が多い。私はこれからも女性の可能性を信じて、サポートしていきたい」。ひたむきに女性を支えてきた植野さんに憧れ、背中を押され、次世代の女性リーダーたちが活躍する日も近いかもしれない。

                                                                                                      (2012年6月取材)

コラム

わたしの大切な時間

ものづくりが好きで、大学では建築やデザインを学んだ植野さん。大学生のころから趣味として続けているアクセサリーづくりは、作品展を開いたこともあるほどの腕前だ。今は月に2~3回、福岡のアトリエに通って制作しているそう。取材のとき、身につけていたネックレスと指輪も「実は私が作ったんですよ」と明かされ、取材陣から「素敵!」と歓声が。「アクセサリーをつくっているときは、無心になれます。人にプレゼントすると喜ばれるのもうれしいですね」

プロフィール

山口県下関市出身。文化女子短期大学部(現・文化学園女子短期大学部)を卒業後、1986年にTOTO株式会社へ入社。東京支社から福岡支社(現・九州支社)を経て、本社の人財開発本部へ。33歳で社内結婚した後も仕事を続け、30代半ばで管理職に。2010年4月より人財開発本部人財開発センターダイバーシティ推進グループリーダーとして女性のサポートやダイバーシティの推進に尽力。また、2011年11月には「第28回福岡県女性研修の翼」の団員として、デンマークとスウェーデンに8日間滞在した。2013年4月より九州支社総務課課長。

 

 


 

 

 


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