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宮崎 智美(みやざきともみ)さん

青翠法律事務所 弁護士(取材時:福岡県弁護士会 副会長)

心寄り添う優しさと、正義を貫く強さを持って

女性弁護士として歴代4人目の副会長

 2012年4月、福岡県弁護士会に女性副会長が誕生した。久留米市で法律事務所を営む宮崎智美さんだ。明治26年の発足以来、その長い歴史において、4人目の女性副会長となる。福岡県内全体の弁護士は989名、そのうち女性が168名。20%に満たない県内女性弁護士の中から抜擢された。「役職は無償なので敬遠する方も増えていますが、誰かがやらなければ会は成り立ちません」と宮崎さん。その先にはあとに続く女性たちへの視線がある。
 福岡県弁護士会では、高齢者や女性への無料電話相談をはじめ、小・中学生への出前授業など、弁護士を身近に感じてもらうための様々な社会活動に積極的に取り組んでいる。自身の法律事務所での仕事に加え、弁護士会でのまとめ役として、宮崎さんは忙しい毎日を送っている。

就職活動での理不尽な体験をバネに

 宮崎さんが、法律に興味を持ったのは、高校生の頃、自宅の不動産を巡るトラブルがきっかけだ。法律が身を守ってくれると実感し、大学は法学部に進んだものの、司法試験を受ける予定はなく、3年生から就活を始めた。その頃、“就職氷河期”に入ったばかりで、女子学生への風当たりが厳しくなる中、宮崎さんは衝撃的な現実に直面した。どの面接官も「女性は結婚したら家庭に入る」「出産後は辞める」と企業側の不都合を口にした。面接官に「あなたと私は価値感が違う」と言い放ったこともあるという。男女雇用機会均等法が施行されて10年近く経ったにもかかわらず、変わらない社会がそこにあった。これまで味わったことのない理不尽な思い、能力ではなく女性であることに対する見えない壁を感じた。そこで決意する。「司法試験を受けよう!」と。

合格率3%未満の狭き門

 そこからは猛勉強の日々。宮崎さんは超難関とされる筆記試験までは見事合格したものの、独学で勉強していたためか、合格率が高い口述試験はなぜか不合格に。翌年までは筆記試験は免除され、口述試験のみだが、もし落ちたら、また最初からやり直しだ。家にこもりきり、ひたすら口述試験の勉強。「人生のどん底」と感じるほど辛い日々だったという。しかし「あの頃は自分に厚みをもたせてくれた貴重な時期だったと思う。人生には、そんな風に息を止めて頑張り切る時間が必要。」と当時を振り返る。そんな苦悩の1年を乗り越えて、合格率3%未満の狭き門を見事突破。両親は泣いて喜んだ。27歳だった。

筑後地方のパイオニア

 その後、法律事務所で経験を積み、33歳で独立。青翠法律事務所を開業する。筑後地方で初めての女性弁護士個人事務所の誕生である。
 当時はまだ社会全体が法律に関わる相談を女性にしようという発想がなく、企業間の相談も男性に依頼することが多かった。ましてや、それまで女性弁護士が長く根付かないといわれていた筑後地方。壁を感じながらも、「ここであきらめては後が続かない」と、芯の強さと持ち前の明るさで続けてきた。今では、筑後地方の女性弁護士も10人以上に増えた。まさに女性弁護士のパイオニア的存在だ。

先達との経験を胸に刻み、走り続ける

 女性だからこそ依頼者の気持ちを理解し、寄り添うことができるという宮崎さん。新人時代に相談に来られた年配の女性から「女の弁護士さんもいたんですね」と安堵して涙を流された経験もある。
「人に恵まれた」と話す宮崎さんには、尊敬する大先輩がいる。福岡市で弁護士を開業する岩城和代さんだ。駆け出しの頃、岩城さんと一緒に仕事をし、最後まで諦めない姿やずば抜けた行動力を目の当たりにした。依頼者を救済するために、法律が想定していなかった部分にどれだけ切り込んでいけるか。弁護士としてあるべき姿を学んだ。
 素晴らしい先達の背中を追いかけ、筑後で活動する女性弁護士のパイオニアとして走り続ける宮崎さん。今度はその後ろ姿が、後進たちの手本となる。

(2012年5月取材)

コラム

 忙しい宮崎さんがリラックスするのは、緑に触れるとき。ガーデニングで、土に触れることが何よりの気分転換。塞ぎ込んでいた試験勉強中も庭に出て明るい気持ちを取り戻していた。新緑の輝きは生命力に溢れていて、そこにいるだけでも癒されると話す。
事務所名の「青翠」は草木が青々とした緑色をしている様子を表している。人々の心を和ませ、新鮮な活力を与える存在でありたい、という思いが込められている。事務所内にも、花や緑を欠かさない。

プロフィール

久留米市出身。九州大学法学部卒業。平成10年司法試験に合格。1年半の司法修習を経て、平成12年弁護士登録。同時に久留米市内の法律事務所で勤務を始める。平成16年10月、久留米にて青翠(せいすい)法律事務所開設。女性が一人で開いた弁護士事務所は、筑後地域では他に例を見ない。平成20年10月、1年後輩の弁護士と事務所の共同経営を開始。福岡県弁護士会筑後部会 執行部 庶務幹事、会計幹事を経て、平成24年4月、福岡県弁護士会副会長を務める。平成24年4月から25年3月までコメンテーターとして、メディアにも出演している。筑後地域の女性弁護士では最もキャリアが長い。






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