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木下 幸子(きのしたさちこ)さん(2012年5月9日取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

福岡県地域婦人会連絡協議会 会長 / 元公益財団法人福岡県女性財団 代表理事

地域とともに
~世代性別問わず人の輪つなげる~

 「何よりも大切なのは人と人との絆」と言う木下幸子さんは、人との出会いを大切に紡ぎながら地域に根ざした様々なネットワークを構築してきた。中でも、1万人を超える会員数を有し、歴史と組織力を誇る福岡県地域婦人会連絡協議会の活動には50年以上にわたり携わり、平成17年からその会長を務めている。高齢者の見守り活動や「防火、防災、交通安全」活動など社会の現状に即した様々な活動を、一貫した信念で実施してきた木下さん。2007年には県女性防火クラブ連絡協議会も立ち上げ、その功績により2011年、秋の叙勲で旭日双光章を受章した。地元の中間市の団体会長として消防関係の全国大会に出席した際、女性組織設立を求められたのがきっかけだ。その後、組織づくりのため県内を奔走。約2年がかりで、県内72の女性防火クラブ、約5万人ものメンバーを一つにまとめあげた。数百人規模のものが多い中、5万人という大規模な組織は全国的にもあまり例をみない。そこには、木下さんが長年大切にしてきた人の輪と与えられた環境で努力を惜しまない姿勢があった。

ファッションの世界から一転、新聞販売店へ

 昭和30年代初め、女性が活躍する場がまだまだ限られていたころ、木下さんは飯塚市の洋装店でデザイナーとして働き始める。しかし親に外で働くことを反対され、1年で退職。ほどなく自宅で洋裁教室をスタートさせた。すると、たちまち30人ほどの生徒を抱え、併せて洋裁店も開業するまでに成長。「その頃の筑豊は栄えていて、忙しい毎日でした。夜遅く、バイクで山越えをして洋服の仮縫いに行ったこともありましたね」と、当時を振り返る。 
 そして23歳のとき、友人の兄との縁談が持ち上がった。木下さんは、教室と店を友人や姉に託して、初めての土地、中間市に住むこととなる。
 夫の実家は本屋と新聞販売店を経営。「全く経験したことがない環境にとまどいました」。新聞が届かないというクレームが来ても、土地勘がなく、契約者もよく分からない状況。そこで、従業員が突然辞めた後には、自ら新聞配達に回り配達先を把握するようにした。舅や夫と、従業員との板ばさみになり苦しむことも。「のれん分けをして独立してもらうなど、良い関係を保つために、いろいろ考えました」。やがて中間市が北九州市のベッドタウンとなると、人口も増加。木下さんは次々と新規契約を結び、販売店は北九州市にも支店を持つまでに拡大した。

第2の転機となったホノルルマラソン

 忙しい家業や子育ての傍ら、20代で地域婦人会に所属。以来、熱心に防火、防災、交通安全をはじめとする様々な地域の活動に取り組んできた。
 この婦人会の活動を本格化させようかと迷っていた50代半ば、友人の誘いでホノルルマラソンに参加。初挑戦にもかかわらず、木下さんは見事に完走する。「沿道に住む人々が思い思いのボランティアを楽しむ姿とその温かいもてなしに、大きな感銘を受けました。それまでは私に何ができるのか不安でしたが、できることをやってみようと背中を押された気持ちがしました」。その後、本格的に地域婦人会の活動に取り組むことになる。
 婦人会では、参加者が楽しみ、持続して活動してもらえるよう、企画に気を配る。明るく人をひきつける木下さんの性格も相まって、ライオンズクラブなどほかの地域組織との連携も進んできた。今では、性別、年齢問わず、さまざまな人がイベントに参加する。その抜群の企画力とデザイナーとしての経験を活かしたファッションショーを取り入れたイベントは地域でも大人気だ。
 

感謝の心 忘れないで

 木下さんは、以前に比べ、女性が活躍する環境が整ってきたことを喜ぶ一方で、女性をもっと責任のある立場に登用してもらいたいとの強い思いがある。さまざまな環境の変化に直面しながらも、自分の力で乗り越えてきた木下さん。周りの人が助けてくれた、というが、それは木下さんが人との“つながり”を何よりも大切にしてきたからだろう。「支援があって当たり前ではなく、感謝の心を忘れないで欲しい」と、木下さんは願っている。

                                 (2012年5月9日取材)

コラム

「これはゆっくりテレビでも見ながら皮のはぎれを切って縫っただけ」と言いながら、カバンから取り出されたオレンジ色の素敵な皮のペンケース。聞けば、財布やカバンなどのレザークラフト作品も手がけられたとのこと。差し入れとしていただく竹の子など、数々の食材を手早く料理し、ご友人にふるまうこともお好きだそうです。お忙しい中、家にいても時間を大切に、人の輪を楽しんでおられるご様子です。

プロフィール

福岡県生まれ。1995年中間市婦人会会長を経て2005年福岡県地域婦人会連絡協議会会長に就任。その他、中間市社会教育委員、中間市社会福祉協議会理事、福岡県日本赤十字奉仕団委員長、福岡県女性防火クラブ連絡協議会会長、社団法人全国結核予防婦人団体連絡協議会副会長などを兼任。福岡県女性防火クラブ連絡協議会設立の功績が認められ、2011年秋の叙勲で旭日双光章を受章。2017年5月、公益財団法人福岡県女性財団代表理事に就任。2019年6月、公益財団法人福岡県女性財団評議員に就任。

 
 
 

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