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野口 郁子(のぐちいくこ)さん (2011年8月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

前福岡県男女共同参画審議会会長、北京JACふくおか代表、福岡市人事委員会委員

女性記者が存在する意味がある

 「いつもその時代の女性たちと共に歩いてきた」と語る野口さんは、記者として、女性センターの館長として、またNGO活動を通して一貫して女性問題に取り組んできた。
 野口さんが、西日本新聞社に入社したのは昭和39年。当時はまだ、男女雇用機会均等法の成立前で、女性記者としては大卒で初めての採用であった。「たった一人の女性記者として、男性と同じように仕事をしなければと思いながらも実力が伴わず悶々としていた時期もありました」と当時を振り返る。やがて、男女雇用機会均等法が成立(1986年施行)、女性記者採用も増えてきたが、それ以前は「女性は文化部」という時代だったと言う。「女性だからこそ見えるもの、女性にしか気付かないものが必ずあるはず・・・女性記者が存在する意味はそこにある」と考えた野口さんは、「女性問題」をライフワークにしようと心に決め、その後、記者として様々な女性問題を中心に取材してきた。中でも「福岡セクハラ裁判」は特に印象深いと言う。「実は、私たちのところに最初に相談があったんですよ」。その頃、設立されたばかりの女性協同法律事務所とともに、野口さんら女性記者たちは「判決がでるまでは被害者をマスコミにさらさない」という立場で結束した。特ダネを求められる記者という立場にありながら、その姿勢を貫き通すことは並大抵の苦労でなかったことは想像に難くない。その後、セクハラ裁判は見事、勝訴。男女共同参画の歴史にとって、大きな一歩となった。
 その他にも、「アグネスチャンの子連れ出勤問題」や定年の年齢の男女差をめぐる「唐津日赤裁判」など様々な女性問題に取り組み、記者として多忙な日々を送りながら、仕事と子育てを両立。幼い頃、父を亡くした経験から、「いつ何が起こるかわからない。自立した人生を」と結婚後も仕事を辞める気持ちは一切なかったという。「いつも取材先の女性たちから無言の励ましをもらっている感じがしていました。同時代の女性達と連携しているという実感でしたね」。

記者から一変、アミカス館長へ

 ある日、編集局長から呼ばれて行ってみると、福岡市女性センター(現・福岡市男女共同参画推進センター・アミカス)館長就任の突然のオファーだった。「もちろん、すぐに了承しました」。平成10年、出向という形でアミカスの館長に就任。それまでの記者時代と環境は一変したが、いつも根底にあるものは同じであったという。「アミカスでは特に、地域の女性たちとともに男女共同参画を盛り上げていくという感じでした」と言う野口さん。新聞社時代のネットワークを活かして、夏木静子さん、高樹のぶ子さん、村田喜代子さん、杉本章子さんという純文学、ミステリーなどのジャンルを超えた福岡在住の四人の女性作家たちのシンポジウムを企画、大好評を得た。「女性で福岡在住というキーワードだけでジャンルはばらばらでしたが、根底は女性・文学者という生き方・視点があるわけで、とても盛り上がりました」。

世界中の女性達が繋がっている~北京JACふくおか設立へ~

 以後、8年間、アミカス館長として、男女共同参画推進に携わる一方で、「北京JACふくおか」というNGO団体の設立にも尽力、現在はその代表を務める。「私も、北京で開催された世界女性会議に参加したんですが、世界中から大勢の女性たちが集まり、みんなが繋がっているという感じで、とても感動的でした」と会議の様子を熱く語る。「その熱気と感動から『北京JAC』という全国組織が生まれ、『北京JAC九州・山口・沖縄』設立、『北京JACふくおか』設立へと繋がりました。その間、九州・山口・沖縄の女性センターと「北京JAC九州・山口・沖縄」が主催して男女共同参画社会基本法制定に向けた学習会を実施したんですが、九州各地から幅広いジャンルの女性達が集まり、ものすごく熱気にあふれ、その盛り上がりは基本法制定の追い風の一つになったとも聞いています」。

新しい発想で、新しい時代を切り開いてほしい

 平成11年「男女共同参画基本法」が制定され、その後も法整備が進み、既に男女平等は実現しているという認識の若者たちも多い。「でも、まだ実際には課題も多い」という野口さん。「福岡県の第3次計画で『困難な立場にある女性への支援』が重視すべき課題に挙げられているのがその証拠だと思います」。福岡県男女共同参画審議会の会長も務める野口さんは、その3次計画の策定にも携わった。これからも男女共同参画社会の実現に邁進しつつも、若い世代に未来を託したいと語る。「私たち古い世代に気兼ねせず、新しい発想で、新しい時代を切り拓いて行ってほしい。一人では無理でも、支え合う仲間がいて、連携できる場所があり、絆を深めていけば、それば可能になるはずです。男女共同参画センターがその『場所』になれたらいいですね」。

                                   (2011年8月取材)

コラム

私の大切なもの

 今までゆっくり音楽を聴く暇がなかったという野口さん。今、大切にしているものを聞くと、「好きな音楽を入れたCD」だという。「サラ・ブライトマンやラッセル・ワトソンなどの洋楽を中心に元気づけてくれる曲をCDに入れていつも聴いています。私の葬儀でもこのCDを流してくれるように頼んでいるんですよ(笑)。最近は、娘の薦めで福山雅治さんもレパートリーに加わりました。」

プロフィール

熊本県生まれ。
大学卒業後、昭和39年西日本新聞社に入社、女性問題・文化関連を中心に取材。平成10年、出向という形で財団法人福岡市女性協会常務理事(アミカス館長)に就任。平成13年西日本新聞社退社、平成18年3月までアミカス館長を務める。平成17年から福岡市人事委員会委員、平成22年から平成28年3月まで福岡県男女共同参画審議会会長、「北京JACふくおか」代表。平成28年度男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰を受賞。

 

 

 

 


 

 

 

 

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