【ロールモデル】
ロールモデルとは
アンプティスター 経営者
北九州市に「アンプティスター」、小さな星という名前の手作りチーズケーキのお店がある。そのオーナーパティシエ長谷川満子さんがケーキ作りの魅力にはまったのは、子どもの誕生会で出された手作りケーキが、あまりに美味しかったことがきっかけだった。
「家庭でもこんなに美味しいケーキがつくれるのか」と感動し、ケーキ作りを習い、いつしかプロ並みの腕を持つまでになった。次第に「自分でお店を開いてみたい」と強く思うようになり、子どもたちの応援に背中を押され「子どもも自立し、これがお店を開く最後のチャンスかもしれない」と開店を決意した。
しかし、ケーキ作りではプロ並みの腕を持っていても経営に関しては全くの素人。開店準備から実際の日々の経営までを総合的に学びたいと、北九州市立男女共同参画センター“ムーブ”の「女性起業家支援塾」を受講した。そして、2000年６月、ついに「アンプティスター」をオープンした。開業資金は、県の融資と自己資金。店の内装は全て自らの手作りで、中古の機械を使用するなどし、なんと通常のケーキ店を開く半分の費用で済んだ。
店を開くまでで一番苦労したのは、やはり資金面。しかし、「開店までの様々な苦労より自分の趣味を生かせるお店が開ける、これから自分の好きなことをずっとやっていける、そういった喜びのほうが大きい」という言葉に、お店に対する思い入れがある。
お店を経営していくうえで大変なことは、毎日同じ味を変わらずショーウィンドウに出すこと。長谷川さんは、雪の日、台風の日でもできるかぎりお店は開店するようにしている。「当たり前のようなことかもしれませんが、何事も継続するということは、とても大変なことです。でも、ケーキを買いにくるお客さんは、みんな幸せそうな表情で買いに来られます。怒った顔や悲しそうな顔でケーキを選んでいるお客さんはほとんどいません。ケーキを食べる時ってなにかお祝い事があったり、自分へのごほうびだったり、幸せな時だと思うんです。やはり自分の作ったケーキを美味しいと言って食べてもらえることが一番嬉しいですね」と幸せそうに語る。
「アンプティスター」では、「体に良く安心して食べられる食材を」という長谷川さんの思いから、商品は全て自然卵や有機野菜を使用している。ケーキ作りだけではなくレシピも全て自分で考え、メニューは季節のメニューなども含め20種類以上もある。毎日ショーウィンドウに並びきれないほどだ。また、ケーキ店のみにとどまらず2005年に２店舗目「アンプティスター」小倉魚町店も開店し、自らの夢をさらに現実のものにしている。そんな長谷川さんは、後へ続く女性起業家の卵たちを応援するための活動も行っており、NPO法人Venus One（ヴィーナス ワン）の理事も務めている。
「夢は、持ち続けると必ず叶えられる。あきらめずに願って持ち続けるということが大切。夢を叶えるのに、歳や子どもの有無は関係ありません。でも、叶えるためには、努力が必要です」と、自身の経験から言葉に力が入る。これから女性起業家を目指していく方々にとって、この長谷川さんの言葉は心強い。「今、確かな夢を見つけることが出来なくても、好奇心旺盛に何でもチャレンジして、それから夢中になれるものを見つけてからでも遅くはないのでは」と挑戦することの大切さを語る。
「人のためになって自分もハッピーになれる仕事をしていくこと。胸を張って『自分は天職についている。この仕事が大好きなんだ』と言えるように自分の体が健康である限り、これからも頑張っていきたい」と語る長谷川さんは、生き生きと輝き、さらなる活躍が期待できそうだ。そして、これからも長谷川さんのケーキは、たくさんの人たちをハッピーにしていくのだろう。
（2005年12月取材）
1988年洋菓子店に勤務。1997年、自宅でケーキ教室を開く。1999(平成11)年、北九州市立男女共同参画センター“ムーブ”の女性起業家支援塾を受講し、融資第１号となる。2000年、チーズケーキ専門店「アンプティスター」を開店し、2005年には２店舗目「アンプティスター」小倉魚町店開店。また、NPO法人Venus Oneの理事も務め、あとへ続く女性起業家の卵たちを応援するための活動も行っている。
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