講師情報あすばる相談室ライブラリ福岡県内男女共同参画センター情報
 

森崎 和江(もりさきかずえ)さん

詩人、作家

日本の女性として生き直したい

 

故郷を探して

 森崎さんが生まれたのは、当時日本の統治下にあった朝鮮の大邱。朝鮮人の友人に囲まれて育った。しかし、第二次世界大戦が勃発し、森崎さん一家は福岡へ移った。このことが森崎さんを苦しめることになる。
 「戦争の中で、たくさんの朝鮮人が亡くなり、辛い環境で働かされた。彼らは、朝鮮で生まれた私の代わりに犠牲になったと感じた。それが私の“原罪”と思うようになった」と語る。
 「原罪意識をはぎ取るため」に作家となった森崎さんは、1970年代、福岡から北海道まで日本海に沿って、方言で話している人を訪ね歩いた。「日本海側を旅したのは、生まれ育った朝鮮半島を対岸に感じていたかったから。方言で話す人を尋ねたのは、日本の様々な地域で暮らす方言で話す人に会い、その地域独特の文化に触れることで、日本を知ることができるのではと思っていたから。そして、日本を知ることができれば、“1人の日本人女性”として生き直すことができるのではと思っていた。1人の日本人女性として生き直し、彼らに謝りたいと思った」からだ。

山が燃えている

 この旅をする以前、森崎さんは福岡県の中間市に住んでいた。それは、「それまで当たり前のようにストーブを使っていたが、燃料となる石炭がどこで採れるのか知らなかった。ちゃんと知るため中間市の炭鉱に行った」ことがきっかけだった。
 「中間に着いて、『石炭はどこで採れるのか』と尋ねたところ、『止まってみんしゃい。足元から声が聞こえるじゃろ』と言われた。また、炭鉱労働者の家に泊めてもらっていたときに山が燃えていたこともあった。慌てて家人に伝えると『“ボタ山”が燃えているだけだ』と教えられた。石炭だけでなく炭鉱についても知らないことばかりだった」。炭鉱についても知りたくなった森崎さんは、それまで住んでいた久留米を離れ、中間に移り住んだ。
 「私には書くことしかできないと思っていた。だからこそ、炭鉱で男性と共に働く女性の姿に感激した。また、彼らの純粋さや協力する姿勢を、社会に知らせねばと思った」森崎さんは、1958(昭和33)年、炭鉱労働者のための機関誌「サークル村」を谷川雁・上野英信と共に創刊し、翌年には「女性が1人の人間として自立する」ための交流誌「無名通信」を創刊した。

電話1本でも支えになる

 「ある人の置かれた環境や社会状況によって、能力や個性を活かしたくても活かせない場合がある。そういう社会にしてはならない。自分はNPOやボランティアではないので大きな活動はできないが、作品を通じて社会の抱える問題を伝える事で、誰もが住みやすい社会を作るための一助になりたい」と、森崎さんは自身の作家としての目標を語る。
 そんな森崎さんは「今の社会の中で、公然と伝えられない環境で苦労している人たちを支えたい」という思いから、うつ病や精神を患っている人の支援を行っている。
 「彼らの中には家族がいない人もいるので、そういう人たちの支援をしている」と言う森崎さんは、日常生活を通じての支援の重要性を訴える。「支援と言っても難しく考えず、特別な事はせずに寄り添うだけでいい。 一緒に食事をしたり、電話をしたり…。そういう事を通じて、誰かが近くにいるという事を伝えることが、彼らの支えになる」と。
(2011年3月取材)

コラム

相互関係で生きる

 森崎さんの日課は1日2回の散歩だ。「自分の健康は自分で守る」と考えているからだ。元気の秘訣は散歩なのかと思いきや、「近所に住んでいる息子夫婦や孫に囲まれての食事が、元気に、そして幸せでいられる秘訣。皆で食卓を囲んでいると、人間は誰でも1人で生きているのではなく、相互関係で生きているのだと感じる」と語る。

プロフィール

朝鮮大邱出身。1947(昭和22)年に福岡県女子専門学校(現福岡女子大学)を卒業。
1950(昭和25)年に丸山豊らが刊行していた詩誌「母音」に参加。1958(昭和33)年には、谷川雁らと共に雑誌「サークル村」を創刊し、翌年の1959(昭和34)年には、「無名通信」を創刊。
著書に「からゆきさん」(朝日新聞社)や、2005(平成17)年に第14回丸山豊記念現代詩賞を受賞した「ささ笛ひとつ」(思潮社)など多数。2009(平成21)年には著作集「精神史の旅 森崎和江コレクション(全5巻)」(藤原書店)を上梓。
また、中島岳志さんとの共著「日本断層論-社会の矛盾を生きるために」(NHK出版)が4月に発売された。
2002(平成14)年、第1回福岡県男女共同参画表彰(県民賞)受賞。






キーワード

【ま】 【文化・芸術/伝統工芸】

お問い合わせフォーム
公式Facebook
メルマガ登録
ふくおかみらいねっと
あすばるのすまっぽん!