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松下 美紀(まつしたみき)さん (2011年3月取材)

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松下美紀照明設計事務所 照明デザイナー

「光の感性哲学者」として、未来の光を創る

 

形のない光から、魅力的な「強い力」を創り出す

 「光には形がない。だが、強い力がある」。株式会社松下美紀照明設計事務所のパンフレットにはこう書かれている。その言葉どおり、松下美紀さんの手がける照明デザインは人を惹きつける魅力を持った光ばかりだ。
 2011年3月にオープンしたJR博多シティでは、駅前の広場から通りにかけての総合的な照明デザインを手がけた。また、博多の歴史と伝統を語り継ぐ寺社仏閣が立ち並ぶ御供所地区の魅力を伝えるイベント「博多ライトアップウォーク」では、総合プロデューサーとして総合的な光の演出をプロデュース。夜の闇の中で寺院を静かに彩り、幻想的な光の情景を創り出している。
 このように、福岡を中心に、日本全国や海外で長きに渡って数多くの照明デザインに携わってきた松下さん。中には福岡タワーのように、多くの人々の目にふれる都市の主要施設も多い。それらの光に、知らず知らずの内に魅せられ、ファンとなっている人々も多いのではないかと伺ったところ、「私は照明デザイナーは黒子だと思っています。でも、そうして私の照明デザインを好きだと思ってくれている方々は、私の宝物ですね」と微笑む。

光によって照らし出す、表層と深層

 松下さんの照明デザインで照らすものは、空間や物体の表層的な部分だけではない。例えば、ある建物を一つを演出する場合、その建物や地域が脈々と受け継ぐ歴史や文化、風土や慣習など、背景にある様々な事象も理解しておく必要があるという。だからこそ、自身の手がけるプロジェクトでは、様々な角度から綿密に調査し、緻密に考えつくす。その上で最適な演出のコンセプトやストーリーを丁寧に組み立て、その空間や物体が持つ、目に見えない深層部までをも照らし出していく。
 「調査が8割でデザインが2割だと思っています。その街にどんな人々が住んでいて、どんなものが愛されていて、どんな風土であるかといったことを調査していけば、必然的に答えは出てくると思います」。
 また、照明デザインは技術的な側面も強く、日進月歩の世界でもある。そのため、200㎡のオフィス内にはライティングシミュレーションのできるラボを設置し、最新の照明技術やオリジルナルのデザインを研究。学会にも参加して論文を発表するなど、技術的・学術的な側面からも日々研鑽を重ねている。こうして幅広く、そして深い視野から取り組んでいるからこそ、松下さんの創り出す光環境は強い魅力を放っているのだ。

ご縁を大切にし、流れに沿って柔軟に生きる

 オフィス内の壁面に描かれている、“A candle light does not illuminate its around. It only burns itself. And it makes surrounding warm and light up."(『蝋燭は四周を照らしているのではない。己を燃焼させているだけなのだ。そのことが周りを暖め照らしていることになるのだ』)という言葉が、人生のテーゼであるという松下さん。
 この言葉のように、照明デザイナーとして、自身の好きなことをただひたむきに続けてきた結果、色々な縁があって独立し、大きな仕事をしていくことにつながり、それがまた人々を感動させていくという人生の好循環を生んできた。
 「私の人生はご縁がほとんどだったと思います。自分の決めたことなんて少しだったかもしれません。必要とされている所に流れはやってくると思います。それに沿って柔軟に生きて、長い間幅広く楽しんでいければいいなと思いながらやってきました」。
 松下美紀照明設計事務所を設立して20有余年。照明デザイナーとなったきっかけは、「好きだった、ということだと思います。照明設計事務所を運営できるなんて夢のようなこと。それに喜びを感じます」と笑顔で静かに振り返る。技術の進歩も著しかったが、とりわけ日本人が古来から持つ情緒的な光の美意識を大切にしてきたという。光というものは人間にとって必要不可欠なものであると同時に、感性的・哲学的な存在でもある。そういった「形のない光」を演出する、『光の感性哲学者』として、松下さんはこれからも未来の光を創り続ける。
                                   (2011年3月取材)

コラム

海が好きで、「終の棲家」と決めている沖縄

 転勤の多い家庭だったこともあり、色々な土地で過ごしたという松下さん。その中でも、海が好きなので、高校時代を過ごした天草と、大学時代を過ごした沖縄が印象深いという。特に沖縄が好きだそうで、現在も沖縄に家を持ち、「終の棲家は沖縄と決めています」ともいう。「その時は、“A candle light does not illuminate its around. It only burns itself. And it makes surrounding warm and light up."という言葉も、墓標に刻まないといけませんね」と話す笑顔が印象的だった。

プロフィール

熊本県熊本市生まれ。株式会社松下美紀照明設計事務所・照明デザイナー。代々続く宮大工「松下組」の家庭に生まれ、転勤が多い中、幼少期を多感にのびのびと育つ。大学卒業後、照明器具販売代理店に入社。社内ベンチャー事業としてデザイン室を確立し、チーフデザイナーとして活躍。独立の礎を築く。アメリカに遊学後の1985年、フリーランスとして数々のプロジェクトを手がける。1989年には、企業化の必要性を感じ、「株式会社松下美紀照明設計事務所」を設立、現在に至る。福岡を拠点として、日本全国はもとより、1993年からは東アジア各国でのプロジェクトにも携わるなど、様々な地域で幅広く活躍。国内外で高い評価を得ている。

 

 

 

 


 

 

 

 

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