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上瀧 恵里子(じょうたきえりこ)さん

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九州大学 男女共同参画推進室 教授
(取材時:研究戦略企画室/応用力学研究所 高温プラズマ力学センター 准教授 博士)

優秀な女性研究者にもっと活躍の場を

 

人生に無駄なことは何ひとつない

 文学部を卒業して教授秘書に――上瀧恵里子さんのキャリアの出発点は、ごく一般的なものだった。しかしその教授が抱えていたのは、大学始まって以来の大プロジェクト。人手が足りないから一緒にやらないかと誘われ、核融合炉開発プロジェクトに参加することになった。プラズマデータの計測・解析という本来の仕事に加えて、作業現場や工場試験の立会い、高圧ガス製造保安責任者の免許取得、概算要求書の作成など、さまざまな業務に携わりながら、データ処理システムに関する論文を執筆。工学博士の学位を取得した翌月に助教授就任という幸運にも恵まれる。文系出身の上瀧さんにとってはすべて、研究所に入ってから勉強し、努力を重ねて掴み取った成果だった。
 「運も実力の内というけれど、チャンスが来ても気づかず、捉まえられない人もいる。それに気づいて応えられるだけの準備や努力が必要だと思います。人生は回り道でも決して無駄なことはないし、経験を力にできるかは本人次第です」

女性研究者のキャリア支援に尽力

 こうした異色の経歴を買われ、2003(平成15)年から研究戦略企画室を兼任している上瀧さん。現在の主な仕事は、競争的外部資金(コンペによって学外から得る研究費)の獲得と、その運用に向けた戦略作りだ。九州大学では、2009(平成21)年度の文部科学省「女性研究者養成システム改革加速」事業で採択された「女性枠設定による教員採用・養成システム」により、理工農学系の分野で女性に限定した教員公募を行っている。候補者本人の能力や業績だけでなく、各部局の男女共同参画に対する取り組みや養成体制が総合的に審査されるため、全学を挙げて優秀な人材発掘に力を注ぐようになった。
 「工学部では、この制度によって准教授以上の女性教員が1人から6人に増えました。このことにより女子学生が『女性も教授になれる。それなら大学で研究を続けよう』という気持ちになってくれると思います」。出産・育児に配慮した環境整備と採用枠の確保は、女性教員のキャリア支援の両輪。新たに採用された女性たちも、確実に業績を上げることが自らの使命と自覚を持ち、研究に励んでいるという。

意思決定の場に女性の参加を

 現在、九州大学では、女性教員の割合を2015(平成27)年度までに13%に増やすことを目標に掲げているが、「人数だけでなく、職位のバランスも重要」と上瀧さんは語る。調査によると「、教授:准教授:助教」の割合が、男性教員の場合はほぼ「1:1:1」なのに対し、女性教員では「1:2:8」。意思決定の場に参加できる教授・准教授への登用が進んでいないという実態がある。
 「九大では最近まで女性の理事・副学長がいらっしゃいましたが、着任された途端、女子トイレが改装されました。建物の管理をする施設部は男性がほとんどで、知らないから気がつかないんですね。意思決定機関に女性が1人参加しているかどうかで大きな差があります。教授・准教授のポストに、女性がもっと進出していけるような仕組みができればと思います」。
(2011年2月取材)

コラム

昭和ひとけた生まれの両親と、明治生まれの祖母の下で育った上瀧さん。「私の場合は『家事は女がやるものだ』と刷り込まれているので、成長してからの修正は難しいですね。男女共同参画は、やはり家庭での教育が一番大事。両親が協力して家事をしていれば、子どもも自然とそうなると思います」と少女時代を振り返る。「1人で留守番をしていた父親が、カップラーメンを食べるためにお湯を沸かしたことでさえ、『お父さん、お湯沸かせたの?』と驚いたくらいですから」

プロフィール

大牟田市出身。1983年(昭和58年)、九州大学文学部国史学科を卒業後、九州大学応用力学研究所に事務補佐員(教授秘書)として入所。翌年、技術補佐員となる。日立サービスエンジニアリング株式会社技術員を経て、1988(昭和63)年、九州大学応用力学研究所の教務員に。1997(平成9)年、博士(工学)の学位を取得し助教授に就任。2003(平成15)年より研究戦略企画室を兼任。2015年4月、研究戦略企画室が学術研究・産学官連携本部に統合。2015年9月に新設された男女共同参画推進室の教授に着任。

 

 


 

 

 


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