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中嶋 玲子(なかしまれいこ)さん(2011年2月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

福岡県男女共同参画センターあすばる 元館長

地域を愛し、女性の自立を目指した、思いと行動

 

これからの農業女性には、従来までの女性と同じ道を歩ませたくない

 「このままでは農村は疲弊してしまう…」。揺るがぬ信念のもとに農業女性から志を立て、町議会議員、九州初の女性町長、あすばる館長等々の要職を重ね、自分の生活の体験から農村女性の地位向上、ひいては女性全体の地位向上に目を向けるようになった。そんな中嶋玲子さんの原点が農業・農村の将来に対する危機感だった。
 みずからも農業者である中嶋さんは、かつて農村女性には『プライバシー』も『時間』も『経済的自由』も皆無だったと指摘する。どうして農村の過疎化が進むのか?明治・大正の農家の女性に求められてきた生き方を、昭和・平成の女性にも繰り返してしまっては、決して農業・農村に未来はないと確信したという。
 『隗より始めよ』とばかり、自分から行動することを誓った中嶋さんは、まずは農業の勉強会やPTAなどに参加して地道な勉強からスタート。会合や学習で得た知識や情報を身近な人へ伝えていった。そうした仲間づくりや女性活動から、1991(平成3)年に県の「女性農村アドバイザー」1期生として認定された。

農業女性から議員へ、そして九州初の女性町長へ

 地域活性化や農業女性の地位向上に力を注いでいた中嶋さんは、地域の意思決定の場に女性が入るべきとの考えから町議会選挙に立候補、見事トップ当選を果たす。また、2期目の任期中には「町を正常化してほしい」との声に推され、2002(平成14)年、九州で初となる女性町長に就任した。
 「男女に関係なく対等なチャンスが与えられる社会に変えたい」。中嶋さんが取り組んだのが『農業振興』『自治意識を持ったコミュニティ育成』『高齢者福祉・地域福祉推進』『住民参画によるインフラ整備』の4事案だった。
 女性でも町長になれる、確かな実績を積み上げたいとの想いが実を結びつつあった頃のこと、町職員による事件で、冤罪により不当逮捕されてしまう。一貫して無実を主張したが(後に無罪確定)、町政の滞りと町政トップの責任を取って辞表を提出、志半ばでの退任を余儀なくされた。
 「やっと女性の能力発揮の機会の確保ができたのに、この道が塞がれてしまうのではと思い、ただただ悔しかった」と回顧する。しかし、男女共同参画の時代は、中嶋さんにもう一度表舞台に立つことを要請した。

私の信条は「信念の人」と言い切る

 議員の経験と町長時代に培った指導力、農業女性としての行動力が買われ、中嶋さんは福岡県男女共同参画センター(あすばる)館長就任を要請される。2005(平成17)年、新しい活躍の場を得て取り組んだのが『男女共同参画地域づくり事業』だった。
 同事業は、市町村自治体と住民がいっしょに課題を解決しながら、男女共同参画社会づくりを進めようとするもの。老若男女に関係なく、男女共同参画の推進役育成を目的としたもので、5年間で29自治体が取り組んだ。
 ある町を例に見ると、平成の合併の中、自主の道を選んだ同町では夏休みの学童保育がなかったため、職員や実行委員による議論の末に出されたのが老人クラブとの連携だった。子どもたちはお弁当を持参して老人クラブの書道教室などに参加し、午後からはお年寄りが見守る中で子どもが遊ぶという内容だった。地域が抱える課題を男女共同参画で解決策を模索するという地域づくり事業。ここでも中嶋さんの行政経験が発揮された。
 現在、杷木町の物産館利用組合の代表を務める傍ら、あすばるの地域活動推進者という立場にある中嶋さん。女性の自立には学習が基本だという中嶋さんは、あすばるの活動の中で感じてきた、女性の労働問題についてもっと学びたいと4月から大学院に進学する。私の信条は『信念の人』と言うだけあって、その情熱に翳りはない。
                                                                                                   (2011年2月取材)

コラム

あれこれと想いを巡らせること、前進すること

 公職のいくつかは退きましたが、まだまだ忙しい日々です。農業人である私は、やっぱり農業が好きですね。土とふれあいながら想いを巡らせたり、今後の活動予定を記した手帳を眺めながらあれこれ考えると心が落ち着きます。また、昨日よりもきょうは少しでも自分を前進させたい。そんなことを大切にしています。

プロフィール

1975(昭和50)年に「社会福祉法人浮島保育園」に勤務。1979(昭和54)年から農業に従事し、1991(平成3)年に「福岡県女性農業アドバイザー第1期生」に認定され、1993(平成5)年には「福岡県第1回海外セミナー」へ参加。1998(平成10年)に農作業労働補完組織「あぐりの会」を杷木町で設立。
1995(平成7)年には杷木町町議会議員を務め、2002(平成14)年には杷木町長となるが、2004(平成16)年に辞職。
2005(平成17)年7月から2010(平成22)年3月まで、「財団法人福岡県女性財団」副理事長兼「福岡県男女共同参画センターあすばる」館長を務めた。2010(平成22)年4月から2012(平成24)年3月まで、あすばる地域活動推進者として活躍。
2011(平成23)年4月、福岡大学大学院法学研究科に入学し、2013(平成25)年3月終了。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【な】 【政治・行政】 【農林水産】

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