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大学連携・若年者スタート応援事業(福岡地区)「シリーズ働くを考える」vol.4

第1部 トーク
テーマ:「私、仕事が好きなんです。」
ゲスト:株式会社ふくや 営業部お客様サービス室室長 稲田磯美 さん
㈱NTTドコモ  端末サービス部フロントサービス推進担当課長 鈴木茂美 さん
コーディネーター:福岡県男女共同参画センターあすばる館長 村山 由香里 

地元中堅企業と大企業本社で活躍している女性管理職二人をお迎えし、働くことやプライベートも含めお話しいただきました。
 稲田さんは、会社が事業拡大に取り組む時期に入社し、すぐに責任ある仕事を任されたことで仕事が楽しくなり長く仕事を続けたいと思うようになったそうです。直接お客様の声を聞くことを担当する者として、トップにも伝えるべきことは臆せず進言する等、商品の質や会社の信用を保つための「最後の砦」という強い信念のもと仕事と向き合ってきました。管理職となってからは、部下の成長が喜びと語られました。
 鈴木さんは、就活時には100社程の会社を受験。大手旅行代理店に入社し、その後ドコモに転職。当時はまだまだ携帯電話は普及しておらず、現在のような発展は予測されていなかったそうです。「iモード」の先駆けとなる音声情報配信サービスから動画配信等の仕事を続け、今はドコモショップの研修や資格制度のプログラム作りに関わっておられます。今後、環境が変わっても仕事をしていける自信があるのは転職を経験したからだとも。
約20年前、お二人が結婚を考える頃は、働く女性は「仕事」か「家庭」の選択を迫られており、仕事を続けたい稲田さん、鈴木さんともに、夫との価値観の違いから離婚を選んだ経験があります。今は仕事と子育てを両立できる制度もあり、男性も料理ができることが評価される時代になりました。この時代の変化を見てきた鈴木さんは、自らを「時代の捨て石」と呼び、若い人に自分たち経験を踏み台に仕事・結婚・子育て・趣味など貪欲に生きてほしいと、稲田さんからは、自分の無限の可能性を信じて生きてほしいとのエールが送られました。

    第2部 講義①
    テーマ:働く環境を学ぶ 
    講 師:福岡大学 商学部 経営学科 准教授 藤野真さん

    感動や、自己実現や成長などは仕事以外でも得られますが、働くことでしか得られないものは収入。非正規雇用を否定しているわけではないけれど、日本で生きて行くことを前提にすれば、正社員で得られるものは大きい。過去、専業主婦が成り立ったのは夫が正社員だったからで、夫の健康保険に扶養家族として妻子も包含するなど潤沢な福利厚生の恩恵を受けていました。今は、家族に正社員がいない家庭も増えていて状況は厳しくなっているということです。
    民法では、使用者と労働者の力関係は同等であると規定されています。しかし。使用者の発言力が強いこともあるので、その格差を補正するため労働法があります。賃金は直接払うこと、通貨で払うこと、全額で払うこと、1ヶ月に1回以上払うことが義務づけられ、さらに労働組合法により団結が許され、労使間には交渉上の地歩があると説明されました。
    一方、人間は従属的な側面も持っており、ブラック企業だと認識はなくても、きついなと思いつつも従事し、理不尽な命令に従うこともあります。二重派遣された上に社員に奴隷のように扱われ、暴力・屈辱に我慢ができず辞め、損害賠償が裁判で争われた事例や、有給を申請すると、前例がないという理由で解雇。社長からひどい言葉を言われ続けて体調を崩したら出された解雇予告通知。内定の取り消し。非正規雇用の突然の契約満了など、ひどい事例が多数あります。このような使用者と労働者の間で利害が対立する時に、話し合いで解決する最初の段階として斡旋があります。解決金が発生することもありますが、斡旋に応じない企業もあるということです。
    法律では違反しているのにこのようなことがまかり通るのは、フォークレイバーロー(folk labor law)があるからです。職場で通用し現実の行為を規制している準則です。サービス残業は法律違反だけど、お互い理解しながらやっているなども、そうです。産休・育休は当然の権利。それをとれるようにするには、その会社のフォークレイバーローを変えなければならない場合もあります。言いかえれば、これから会社で働くみなさんに求められる課題とも言えると学生に語りかけました。
    さらに、OECD(経済協力開発機構)によると日本の勤続年数は男女とも11年。アメリカと比べれば2倍以上ですが、ヨーロッパ諸国と比べると、日本の勤続年数は特筆するほど長くはなく、しかも日本の長期雇用は大企業の男性の働き方で、80%の人は中小企業で働いており、ほとんど人は転職を経験するとのこと。日本的経営は長期雇用だという定説を信じるとリスクがありますと、注意を促しました。

      第2部 講義②
      テーマ:「キャリア形成支援を考える」
      講 師:福岡大学 人文学部 教育・臨床心理学科 准教授 寺崎里水さん

      本事業の企画立案者の一人である寺﨑さんから8月に始めたこの講座のねらいや事業全体の内容について簡単に振り返ってもらいました。
      今まで女子学生向けに様々なキャリア教育が行われてきましたが、今の時代、女子学生だけを支援して働くことや家事育児との両立を促していくことには限界があります。女性が労働者になるということは、誰が家事や育児など生活を維持するのか、地域での活動に誰が関わるのかも同時に考え、男女にかかわらずワーク・ライフ・バランスを取ることのできる生き方を学んでいくため、男子学生向けの教育の機会も重要なのだということです。
      そして、このシリーズを続けるうちに気づいてきた課題は次のようなもの。
      1)女性間の意識の格差が拡大しており、「女性の権利を勝ち取ろう!」という支援にのる女子学生と、他方そういう意識にはなれない女子学生がおり、様々な段階で支援が必要。2)男子学生も含め受講生の半数はあきらめの早い人たち。ねばる経験が少なく、失敗をどう克服するかではなく、失敗したら取り返しがつかないと考える学生や、頑張っても成果が出なかったら恥ずかしいから頑張ることをしない学生が少なくないこと。3)教育の現場では努力に価値が置かれているが、労働市場では成果を出さなくてはならない。その橋渡しとして、価値観の切り替えをすることもキャリア形成支援と言えると語られました。
      具体的なキャリア形成支援の方策については、行政のキャリア支援は、①「ロールモデル」の提供、②「メンター」の提供 ③教育サポートとして、自分で対応策を考える機会を提供するプログラムの産学官への橋渡し ④長時間労働に耐えるとか飲み会の付き合いとかで人事評価をしないよう企業側への教育、が考えられるということです。
      働く側の支援は、藤野先生の提案に加えて、消費者としてブラック企業の商品は買わない、店を利用しないこともできることの一つ。大学生は安い値段の商品の仕組みを知るべきで、安く買うのなら、自分がそこで安い労働で働く覚悟をもつことを教育するのもキャリア教育と考えると提案されました。
      また、バーバラ・A・カー(訳書)1992、『才女考-〈優秀〉という落とし穴』勁草書房、マイラ&デイヴィッド・サドカー(訳書)1996、『「女の子」は学校でつくられる』時事通信社 を参考図書として強く推薦されました。

      第3部 学生による発表・意見交換
      コーディネーター:福岡大学 人文学部 教育・臨床心理学科 准教授 植上一希さん
      このシリーズに参加した学生5人が登壇しました。今までの感想が語られるだけでなく、学生の悩みに答えてゲスト・講師から具体的な助言などもありました。学生からはこの企画で知った生きづらさや知識をどれだけ自分のものにし周りに伝えるかが、自分たちの役目ではないかとの意見もだされました。

        タイトルシンポジウム「これからのこの世界で生きていく」 会場:博多バスターミナルビル9F
        開催日時 2014年1月18日(土)

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