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【センター長コラム No.60】 男性の育児休業  (2021年6月15日配信)

  こんにちは。

  アガパンサスが咲き始めました。山アジサイも静かに咲いています。

  お変わりありませんか。

 

 

  先日、育児介護休業法が改正され、現在は原則として分割取得ができない育児休業が、2回に分けてとることができるようになり、また、事業主は、子どもが生まれることを申し出た労働者に対して個別に、制度の周知や休業取得の意向確認をすることが義務化されることになりました。

 

また、子どもが生まれてから8週間までのあいだに、4週間以内の育児休業を2回までとることができる「出生時育児休業」という制度が新設されました。

 

女性が出産した場合は、労働基準法で、産後8週間の産休が定められているので、この「出生時育児休業」は、いわば「男性の産休」のようなものです。

なお、出生時育児休業をとっても、出生時育児休業とは別に、2回の育児休業取得が可能です。

 

この法改正は、男性の育児参加の促進を目的としたものです。

 

さて、総務省「平成28年社会生活基本調査」によると、6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事時間は、妻7時間34分、夫1時間23分と、妻は、夫の5倍以上の時間を家事育児に費やしています。

 

1日の時間は、だれでも24時間なので、夫と妻でこれだけの差があるということは、妻がフルタイムで働けないか、フルタイムで働いている女性は、自分の休養の時間もとれず、相当の無理をしているかです。

 

ところで、貧困をテーマとした研究の中に、経済的な貧困だけでなく、生活時間を考慮した「時間の貧困」に着目する研究があります。

格差や貧困は、所得や消費といった金銭的な尺度での測定が一般に行われていますが、お金は十分あっても、身の回りのことや家族の世話をする時間が十分ないと、生活の質が損なわれるという考えに基づくもので、家庭での生活時間に焦点を当てた分析を加味する貧困研究が日本でも外国でも行われています。

 

「時間の貧困」というキーワードで、子育て期の働く女性のワークライフバランスとキャリアアップを考えると、女性が家事育児にこれだけの時間を要しているのなら、職場でじっくり仕事に向き合う時間や、業務に関する情報の収集を行ったり自己研鑽を積んだりする時間がとれなくなります。自己研鑽の時間の貧困は、女性の能力だけでなく自信の欠如にもつながります。

 

女性は、キャリアアップや新しい仕事に挑戦する時間の貧困のために、キャリアアップがかなわないという見方ができるのではないでしょうか。家庭生活での家事育児負担の男女不平等と、経済分野での男女格差は、表裏一体の面があります。

 

さらに、PTA活動なども、多くは母親が担っており、家事育児、職業生活、社会活動の3重の負担を女性が担っていることも珍しくありません。

 

今から46年前、1975年の国際婦人年に、女性の地位向上を推進するための「世界行動計画」を世界の国々が討議したときに、スウェーデンの代表が、「女性が何もかもやることはできない。今までの性別役割分担を変えない限り女性は能力発揮ができない」と主張し、そのことが、同年の「世界行動計画」に、そして、1979年に採択された「女子差別撤廃条約」の「男女の完全な平等のためには、男女の伝統的なステレオタイプの役割分担を変更する必要がある」という、固定的性別役割分担意識や行動の撤廃規定へとつながっています。

 

日本でも、1999年の男女共同参画社会基本法、2015年の女性活躍推進法に、男女が共に家族の一員としての役割を果たすことがうたわれていますが、現実は女性が家庭責任を負うという構図は変わっていません。

 

諸外国でも、女性のほうが男性よりも家事育児に費やす時間は多いのですが、日本ほどアンバランスな国はありません。

女性の出産・子育て期は、女性のキャリアアップにとって、力をつける重要な時期です。女性活躍を推進するためにも、女性が子育てに疲弊して健康を害さないためにも、男性にもっと家事育児参加をしてもらいたいと思います。

 

ところが、日本経済新聞社が男女1,000人に行った調査によると、「今回の法改正で男性が育児休業を取得しやすくなると思うか」という問いに、半数以上(55.4%)が「思わない」と回答したとのことです。

 

育休中の給与の保障が1つの課題ですが、男性の育休取得に対する上司や同僚の意識改革や、育休取得がキャリアに不利にならないという安心感が必要という声も多いようです。

 

これまで、女性の「時間の貧困」のことを見てきましたが、「時間の貧困」に関する研究がとらえているように、お金が十分あっても、身の回りのことや家族の世話をする時間が十分ないと、生活の質が損なわれますし、いくらキャリアアップしても会社だけが人生というのでは、生活の質はよいとは言えません。男性にとっても、時間の貧困は、深刻な問題です。

 

改正育児介護休業法は、来年4月1日以降、施行されます。

男性が生活時間の貧困に陥らないよう、男性の働き方も改善し、男性も女性も、仕事と家庭のバランスをとって、健康で、会社で活躍できるよう、企業の皆さんに、環境整備と意識改革を図っていただきたいと思います。

改正育児介護休業法の概要はこちらをご覧ください。

 

終わりはマイ農園だよりです。

梅を2キロ収穫。梅干しにしました。プランターのきゅうりも次々に収穫しています。

新型コロナウイルス、油断せずに、感染防止にご留意ください。

ではまた。                        (2021.06.15)                           

 

 

 

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