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【センター長コラムNo.53】 校歌を変えた小学校―大木町プロジェクトD(男女共同参画)の挑戦者

こんにちは。

今年は開花が遅れていたロウバイが、やっと花をつけました。昨年春にもらったアンスリウムを室内で育てていたら、小さな花が出てきました。

お変わりありませんか。

  

 

さて、福岡県大木町では、2019年4月1日から「大木町男女が認め合い社会参画を推進する条例」が施行されています。

 

大木町では、条例施行に際して、条例を制定するだけに終わらせず、条例をきっかけに町民が身近に男女共同参画を考えるために、「大木町プロジェクトD(男女共同参画)-大木町の挑戦者たち」と名づけて、DVD「あるある劇場」を製作したり、記念講演会を開催したりしました。

 

この取り組みは、私の2019年3月26日のコラムで紹介しましたが、今日は、新しい「大木町プロジェクトDの挑戦者」と言える取り組みをご紹介したいと思います。

 

それは、大木町立木佐木小学校の校歌の歌詞変更です。

   

木佐木小学校は、1978年(明治11年)に創設された小学校で、現在の児童数は300余人。

 

校歌は、1954年(昭和29年)8月につくられ、65年にわたって歌い継がれてきました。

作詞は、大木町出身で農民詩の第一人者である松永伍一です。

 

松永伍一は、農民詩の詩人として輝かしい足跡を残しただけでなく、日本の子守歌研究、美術評論など多方面で活躍し、文化人としての独自の地歩を確立した人です。

木佐木小学校の向いにある総合体育館入口には、「松永伍一文学保存の会・顕彰委員会」によって松永伍一の「村」の詩碑が建てられています。

松永伍一は、農民のほか、弱者への共感を叙情的に歌い上げる作風で知られ、木佐木小学校校歌も、美しい農村の地で優しい心根をもつ人間に育ってほしいという思いが込められています。

 

しかし、実は、ここ数年、毎年のように、教員や町民の方から、歌詞の見直しの意見が出されていました。

 

問題とされたのは、男の子と女の子のあるべき生き方を示唆するような歌詞で、1番「ぼくらは町をきずくのだ」、2番「ぼくらは日本をきずくのだ」、3番「ぼくらは世界をきずくのだ」という歌詞に対し、1番、2番、3番を通して「わたしはきよくつつましく」となっているところです。

 

校歌がつくられた当時を振り返ると、1956年の経済白書に「もはや戦後ではない」という言葉が登場したように、日本が戦後の復興期から高度経済成長期に転換する頃で、男女の固定的な役割分担・理想像が普通に受け入れられていた時代です。

 

しかし、男女共同参画の時代になり、教員からも、このまま校歌を歌わせてよいのかという疑問の声も上がっていました。

 

そこで立ち上がったのが、校長の栗原茂雄さんで、2020年1月、歌詞の変更に向けて動き出しました。

 

栗原さんの決心を後押ししたのが、「大木町男女が認め合い社会参画を推進する条例」です。

 

条例は、固定的な性別による役割分担意識にとらわれずに、男女がさまざまな生き方を選択できるようにすることを目指しており、その基本理念の1つに、「固定的性別役割分担意識を反映した社会における制度又は慣行を見直し、社会のあらゆる分野における活動の自由な選択に対して、影響を及ぼすことのないよう配慮されること」と定められています(第3条基本理念(2))。

 

また、「教育分野において、人権の尊重を基本とした男女共同参画に関する教育が推進されること」も基本理念の1つに掲げられており(第3条基本理念(6))、「教育に携わる者は、基本理念に基づき、男女共同参画に関する教育の推進に努めるとともに、町が実施する男女共同参画推進施策に協力するよう努めなければならない(第9条)」と定められているのです。

 

栗原さんは、大木町教育委員会、南筑後教育事務所、地区の木佐木活性化協議会、松永伍一文学保存の会、PTAなど、関係各所に出向いて相談し、協議をしてもらいました。

 

松永伍一氏の家族にも、「松永伍一先生の木佐木校区の子ども達への思いを大切に継承しながら、より現代に合った表記に一部変更することで、すべての子ども達が胸を張ってこれからも校歌を歌い継いでいけるようにする」という校歌変更の趣旨を伝えてもらいました。

 

すべての関係先から校歌変更の了解を得ると、今度は、栗原さん自身がつくった素案をもとに、卒業生などに相談しながら修正を5回も繰り返して最終案をまとめ、臨時の歴代PTA会長会を開催して変更案を諮り、歌詞を決定しました。

 

2020年2月までにすべての手続きを終え、松永氏の家族にも報告を行い、新学期に、校歌の公開を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大により学校が休校となったため、校歌の変更は、全戸に配布される学校便り『草笛きさき』で経過を含めて広報し、授業再開後の10月に行われた運動会で、改めて校歌をお披露目しました。

 

元の校歌は「原詞」として残すことにし、現在、2つの校歌が並んで、掲げられています。

木佐木小学校のホームページも、このほど更新され、6年生が歌う新しい校歌を聞くこともできます。

 

栗原さんに校歌変更のお話を伺ったところ、栗原さんは、「大木町の誇りである松永伍一先生が作詞した校歌を変更するという大きな取り組みでしたが、条例が制定されたことで、大木町の目指す方向が確認でき、歌詞変更に動き出すことができた」とおっしゃいました。

条例や法律は、それを根拠に行動を行うことができる重要なツールなのです。

 

栗原さんからは、後日談も伺いましたので2つを紹介します。

 

その1つは、中学生になった女子卒業生が、学校便りを見たと栗原さんを訪ね、「私は、校歌を歌うとき、あの歌詞のところだけは歌いたくなくて歌っていませんでした。これからは校歌を歌えます」と言ってくれたということです。

 

もう1つは、木佐木小学校では、2つの歌詞を教材にして、各学年に応じた人権・男女共同参画の授業も行っているということです。

「校歌の歌詞変更を学びの機会に」とする栗原校長の挑戦はまだ続いています。

 

 

結びは、マイ農園だよりです。

ベランダに置いているプランターのブロッコリーとニンジンを収穫しました。1月初めの大雪に埋もれたイチゴが、花をつけました。ガンバレ、と応援しています。

ではまた。                                                                  (2021.01.24)                         

  

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