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最首 英裕(さいしゅえいひろ)さん (2015年9月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

株式会社グルーヴノーツ 代表取締役社長

楽しく豊かな未来のためにITビジネスを創出

小麦色の肌に白シャツで、さっそうと現れた最首英裕さん。高い技術力を武器に、次世代のITビジネスを生み出す株式会社グルーヴノーツの社長を務めている。

アメリカで最先端のITに触れて日本で新事業を提案

 祖父は大工、父親は建築士という技術者一家で生まれ育ち、小さな頃から読書に熱中。「週3冊のペースで読んでいたら読む本がなくなり、中学でキルケゴールやカミュ、実存主義、さらに古文や漢文も読み尽くして。とにかく書物が好きでしたね」。
 文芸の自由な空気感に魅かれ、早稲田大学第一文学部文芸専修に進学したが、「作家は職業ではないと気付いた」。一方、創作意欲が旺盛で、日本ではまだパソコンが知られていない中、アルバイトしてパソコンを買い、独学でプログラミングをマスター。ITの未来に大きな可能性を感じていた。
 当時、三菱商事とIBMが合弁会社エイ・エス・ティ(現ITフロンティア)を立ち上げ、コンピュータによる情報の流通に着手。最首さんは新卒1期生として入社した。営業企画の担当として、技術とプレゼンテーションについて半年厳しいトレーニングを受けたという。「例えば、本を与えられて自分で勉強し、3日後に本に書いてないことばかり質問され鍛えられた。ビジネスでわからない・できないと言ってはならない、いかに返答し自力で答えを見つけるか。プロとしての在り方を徹底的に叩き込まれました」。3年目には稟議書を書き、アメリカへの視察を実現した。LAN (Local Area Network)のブームが日本にも来ると考え、LANを牽引するアメリカ8都市30社を訪問して話を聞きました。相手にされなかったり、いつの間にか代理店交渉の場になっていたりと、大変刺激的な経験でした」。その手腕を評価されて海外出張が増え、気付けば毎月のように海外へ。若手ながら新事業を推進する立役者の一人となった。だが、合弁会社としての限界を感じ、13年で退社した。

設立3年で上場し、一躍世界から注目される会社に

 ヘッドハンティングの声がかかる中で、米国ベンチャーの日本法人のトップを経て、1998年に36歳で株式会社イーシー・ワンを設立。NTTドコモがiモードを開発している最中で、これからは機器の通信が始まると予測。アメリカの大企業が開発したばかりのプログラミング言語を使って新しいソフトをリリースしたところ、注目を集めた。3人でスタートした会社は2年で黒字化し、3年でベンチャー向け市場のJASDAQに上場。売上は毎年4割アップを続け、数年で200人以上を抱える大所帯へと成長した。メディアの取材が殺到して毎月雑誌に掲載され、イベントへの登壇も多数。業界では一躍有名になったが、最首さんは「経営者として未熟だった」と振り返る。「多くの人を集めて長時間働かせ、損益を気にして成長を急ぎすぎた。それに僕自身は取材や講演や会合に追われ、会社のことを考える時間が不足していましたね。会社は従業員が生み出した資産をもとに、いかに価値ある事業を生み出すかが重要。そのために人も育てなければならない」。業績は伸びていたもののふと気付き、「もろもろのノイズから自分を切り離そう」と2009年に既に拠点があり優秀な人材がそろっている福岡へ居を移した。

未来のために柔軟なワークスタイルと学童施設を導入

 会社を売却し、2012年に株式会社クリップエンターテイメントと事業統合、社名を株式会社グルーヴノーツとし社長に就任。現在は「MAGELLAN(マゼラン)」というネットワーク経由でデータやソフトウェアを提供するクラウドサービスを中核に据え、ゲームから医療、自動車、電力分野にもサービスを提供している。「今は会社が長期的に成長し、本当に成功していくことを最優先に考えている」と語る最首さんは、会社の未来への投資として2つの取組を行っている。ひとつは、就業場所を規定しないこと。従業員は自宅や会社など好きな場所で働き、週2日出社の人もいるという。従業員25人のうち32%が女性で「子育てや介護など女性の問題とされているものは、女性自身ではなく世の中の課題。男女関係なく優秀な人に長く働いてほしいから」と理由を明かす。さらに、2016年4月には社員や一般の子どもを対象にした学童施設「TECH PARK(テックパーク)」をオープン予定だ。子育て中の女性会長の発案に「子どもの孤立化は問題。いろんな世代で交わる点が多いほうがいい」と賛同。ビルのワンフロアにオフィス、ものづくりスペース、学童施設を配し、ガラス張りでそれぞれが見渡せる。キッチンとシャワー完備で、送迎タクシーも手配。ものづくりやプログラミング実習を行うつもりだ。「会社として、社会が抱える根本的な課題に敏感でありたい。子どもたちには最高の経験をさせたいし、その家族とも長く付き合える関係を築きたい」と力を込める。あえて成長を急がず、真の成功を見据える最首さん。「未来が豊かに楽しくなり、人が幸せなつながりを持てるように、新しいビジネスを創出していきます」。
                                                                                                              (2015年9月取材)

コラム

私の大切な時間

 「東京では皆仕事の話題ばかりでしたが、福岡の人はプライベートの話が好きですね。ストレスなく働くというのはこういうことかと福岡に来てわかりました」と話す最首さん。6年前に始めた趣味はカイトサーフィンだ。「サンフランシスコで10年以上前に見て、印象に残っていたんです。今は風が吹くと海へ行きます。いろいろ悩んでいたら風に乗れないから、無心になれる。嫌なことは海と風のパワーで吹き飛ぶし、人間はちっぽけな存在だと思える。仲間ができるのもいい」とさわやかな笑顔を見せた。

プロフィール

1961年大阪府生まれ、関東育ち。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業後、株式会社エイ・エス・ティ(現ITフロンティア)入社。米国ベンチャー企業の日本代表を経て、1998年株式会社イーシー・ワンを設立して代表取締役社長。2012年株式会社クリップエンターテイメントと事業統合。社名を株式会社グルーヴノーツに変更し、代表取締役社長に就任。

 

 

 

 


 

 

 

 

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