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野口 喜久子(のぐちきくこ)さん (2015年2月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

株式会社西日本新聞旅行 代表取締役社長

仕事を通して、地域の方々と感動を共有したい

 2014年7月、西日本新聞旅行の社長に就任した野口喜久子さん。西日本新聞社の21あるグループ会社において、40代後半で、しかも女性が社長に就任するのは初めてのこと。本人は「寝耳に水ですよ」と陽気に応じ、「社内外のいろいろな方々にサポートしてもらったおかげで、今があります。これからも皆さんと挑戦していきたい」と終始明るく謙虚に語ってくれた。

思わぬきっかけから地元の新聞社に就職

 野口さんは、学生の頃から将来ずっと働き続けようと思っていたわけでも新聞社を目指していたわけでもない。福岡の高校を卒業後、津田塾大学に進学。沢木耕太郎の「深夜特急」に憧れ、アメリカでホームステイをして、いつか海外で暮らしてみたいと思っていた。就職活動はバブル期のさなか、地元福岡にこだわることなく、航空会社や出版社、銀行など数社から内定を獲得。その中で西日本新聞社を選んだ。「たまたま高校のOBにすすめられて、受けてみたんです。資生堂の広告が好きで、面接では広告を作りたいと話しました。内定をいただいた他社はどこも既定路線のような気がして、一番変化がありそうな新聞社に入社しました」。
 同社の新入社員は、今でこそ男女半々だが、当時は完全な男社会。同期23人のうち、女性は3人だった。配属先は営業で、新聞の企画に合わせて商店街や百貨店などを担当した。「不勉強ゆえ、入社した後に広告を作るのは新聞本体ではなく、広告会社だと知りました。それに、女子大育ちの私にとって、年上の男性ばかりの職場はまさにカルチャーショック。でも今考えてみたら、上司のほうが私の扱いに困ったと思いますよ。キミの頭の中はお花畑だと言われたこともあって…」と笑う。だが「チームとして企画をやり遂げることにやりがいがあり、毎日が充実していた」と振り返る。

仕事と育児を両立する同僚の存在が励みに

 28歳で東京の営業に異動となり、7年半を過ごした。その間に社内結婚して、33歳で出産。夫が単身赴任の時期もあったが、仕事を辞めようと考えたことは一度もなかった。「ひとつ下の後輩が、東京で出産して働いていました。彼女は手探りで大変だったと思いますが、頑張るモデルが傍にいてアドバイスやサポートをしてもらえたからこそ私も続けられました」。35歳で福岡に戻ると、マーケティングやデジタル営業、経営企画局などを回り、様々な経験を積んだ。

お客様にとっていいものを追求する

 そして2014年7月、西日本新聞旅行の代表取締役に就任。これまでは歴代、新聞社の役員などが兼務していたポジションだ。「20代で手に職をつけたいと考え、旅行業務取扱管理者の資格を取っていたからかもしれません。社員10人ほどの会社ですが、社長就任は不安で一杯でした」と明かすも、「同僚や先輩、後輩など、仲間たちが励ましてくれた」という。就任後、まずは社員一人ひとりと食事に行き、話を聞くことから始めた。経営者として数字を見たり、企画を立てたりと、業務は多岐にわたる。直前の部署の経営企画のメンバーのバックアップを仰ぎながら進めている。
 実はもうひとつ、野口さんには大きな強みがある。それは、旅行が大好きなこと。これまで海外41か国を訪れ、国内47都道府県で足を踏み入れていないのは2県のみ。「現職は初心者だけどユーザー側の気持ちはよくわかる」と言う。「旅行会社は今、転換期を迎えています。生き残っていけるのは大手か、よほど個性が際立っている会社。もう一度お客様の目線に立ち戻り、お客様や地域にとってよりいいものを追求し感動を共有したい。同時に、管理職としてはチームのリーダーとして一人ひとりの特性を活かし、頑張る人を引き上げたい」と未来を見据え、さらに「仕事も子育ても、同僚や家族の協力なくしては成り立たなかった。これまでいい人ばかりに恵まれ続けてきたことに感謝しつつ、私も恩返し、恩送りをしていきます」と力を込める。
 野口さんには、ぶれない軸がある。30代の頃、会社の先輩から「新聞社は何のためにあると思う?」と問われ「戦争をしないため。世の中がより良くなるためにある」と教わった。その言葉がストンと腑に落ちた。「西日本新聞社もグループ会社も、地域の人たちに喜んでもらい、ひいては地域の皆さんが幸せになるために存在しているはず。その1点を意識して、これからもチャレンジしていきます」。  

                                                                                                          (2015年2月取材)

コラム

私の大切な時間

 同僚でもある夫は、家事や育児に協力的で「料理は私より上手かも」と野口さん。東京で生まれた娘は、中学2年生になった。「小さな頃はゆっくり構ってあげられなかったけれど、ひたすら抱っこと、ひたすら一緒に絵本を読むことだけはしてきました」。休みがあれば旅行に出かけ、14歳にしてすでに37か国を訪れたとか。「でも、娘は海外に行くたびに日本の良さも同時に実感しているみたいですよ」と楽しそうに話す。

プロフィール

 父親の転勤で各地に住み、福岡の高校を経て、津田塾大学卒業。1989年、株式会社西日本新聞社に入社。営業、広告、デジタル、経営企画などの部署を経験して、2014年7月から現職。

 

 

 

 


 

 

 

 

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