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柚木 マスミ(ゆのきますみ)さん (2014年11月取材)

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惣菜畑がんこ 代表

チャレンジ精神と行動力で、チャンスの扉をひらく

 海や山に囲まれ食材豊富な糸島市。地元の農家と連携して、地域の食材を全国へつなぎ・広める活動をしている女性がいる。「がんこさん」の愛称で親しまれている『惣菜畑がんこ』店長の柚木マスミさん。はじけるような笑顔で、周囲を明るく照らす太陽のような女性だ。

手探りではじめた販売で、楽しさを知る

 父親が楽しそうに農業をする姿を見て育った。農家の娘として、いずれは跡を継ごうと思っていたが、商業高校で学んだ金融や商売に関わる内容に興味がわき、卒業後は地元信用金庫へ就職し4年間勤務した。新たな道を求めて退職したが、その後、縁あって結婚。3人の子どもを出産した。夫と共に実家の跡を継いで本格的に農業を始めたのは30歳になる頃だった。

 丹精を込めて作った米や野菜や果物。しかし販売先は少なく、安価で売られていた。この現状を何とかしたいと目を付けたのが、福岡市内で行われていたバザーイベント。当時、まだ直売所がなく、生産者が市街地で直接販売するのは珍しいことだった。そこで、生産者の顔と名前を表示すれば、安心安全で旬な食材だと消費者に伝わると思い、実践した。最初は不安もあったが、出店すると大盛況で主催者に感謝されるほどだった。「生産者の顔と名前を知ってもらい、お客さんとコミュニケーションを取りながら販売するのがとても楽しくて。子どもから、“お母さんはいつも人がしないことを一歩先にやっているよね”と言われていました」。アイデアを即実践する行動力は当時から発揮されていたようだ。

50歳で咲かせた夢の花

 イベント販売を続けるうちに、“将来自分のお店をもちたい!”という夢を描くようになった。しかし、起業のためのノウハウも資金もない。そこで、東京で開催されていた、農山漁村女性の起業を支援する「農村女性起業専門家養成講座」を受講。「参加してみたものの、当時の私にはセミナー内容が難しく、分からないことばかりでした」。ただ、講師の “ナンバーワンではなくオンリーワンを目指して、自分自身を磨くこと”という言葉を聞いてこれだ!と思ったという。    
 講師の言葉を心に留め、諦めることなく勉強を重ね、少しずつ起業に関する知識を深めていった。地道な努力が実を結び、2005年に自ら練った起業プランが「福岡県農村女性チャレンジ支援事業」に採用され、2006年、自宅敷地内店舗で惣菜の量り売り店『惣菜畑がんこ』をオープン。50歳で見事夢を実現させた。

糸島の魅力を伝えたい

 『惣菜畑がんこ』で提供される農家ならではの惣菜は評判を呼び、県外からわざわざ足を運ぶ人も多い。糸島産の食材を用い『美味しい時期に美味しく調理』した惣菜は“おふくろの味”と親しまれている。2010年には、地域の特産物を活用した起業活動などを通して、地域づくりに貢献している優秀な活動事例に贈られる「第20回食アメニティコンテスト」で最優秀賞の農林水産大臣賞を福岡県で初めて受賞。「糸島の生産者は一人ひとりが本当に頑張っている。県外の飲食店や販売先などにご縁ができた時には、地元の生産者とつないでいます。地域を思う気持ちはみんな一緒だから、共に活動できれば、糸島全体が元気なると思うんです」と目を輝かせて語る。数年前からソーシャルネットワークも積極的に活用し、地元の新規就農の若者や異業種間で交流・連携しながら、糸島の魅力を全国に発信。関東のレストランとの取引などにもつなげて地域を盛り上げている。柚木さんの飾らない人柄が多くの人を惹きつけるのだろう。
 モットーは『動けば変わる』。農業者に情報提供や育成・指導を行う県の普及指導センターが開催する研修会や視察に積極的に参加。「県女性農村アドバイザー」を務めた際には、代表に自ら手を挙げるなど、何ごとも尻込みせず前向きにチャレンジし、多くの出会いやチャンスに恵まれた。「じっとしていても、生きた情報は入ってこないし、現地に飛び込んで分かることも多い。生の話を聞いて感動することが一番かなと思います。夢の実現もそこに通じる気がするので、思い立ったらぜひ行動して、興味があることを一生懸命やってほしいですね」。事業内容だけでなく、関係者を結びつけるネットワーク力や情報発信力などが総合的に判断され、2011年には、先導的な6次産業化の身近な実践者として、農林水産大臣から「ボランタリー・プランナー」に伝令された。事業者への具体的なアドバイスやメディアへの情報発信などを行い、全国的な6次産業化のサポート役として取組を推進している。
(2014年11月取材)

コラム

 『人が大好き』と語る柚木さんは、縁を大切にしている。「本音で人と関わっていけることがありがたいし、それが自分のパワーになっています。いいのか悪いのかは分からないけれど、仕事とプライベートの区切りがあまりなくて…。家族には“たまにはゆっくり休んだら”と言われるんですが、じっとしている方がストレスなんです」と人懐っこい笑顔で話す。

プロフィール

 糸島市出身。高校を卒業後、地元の信用金庫へ就職。結婚後退職し、3人の子どもを育てながら家業の農家を継ぐ。1995年から加工品や弁当を農産物直売所に出荷。「福岡県農村女性チャレンジ支援事業」を活用し、2006年、自宅納屋を改造した『惣菜畑がんこ』開業。店舗での惣菜の量り売りの他、JA糸島の農産物直売所「伊都菜彩」への加工品の出荷、イベント出店などを行う。2010年「第20回食アメニティコンテスト」農林水産大臣賞を受賞。2011年農林水産省の「ボランタリー・プランナー」に任命される。ジュニア野菜ソムリエなど。

 

 

 

 


 

 

 

 

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