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田中 彩(たなかあや)さん (2014年9月取材)

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NPO法人ママワーク研究所 理事長

だれもがいきいきと柔軟に働くことができる社会に

 子育てと仕事、どちらも大切にしながら「自分らしく働きたい」。産後も復帰できる企業などが徐々に増えてきてはいるものの、出産をきっかけに仕事を辞める女性はまだ多い。何らかの形で働きたいと希望していても“育児と仕事を両立できる環境にない”などの理由で働きたくても働けない状況だ。
 再就職を希望する母親たちの支援をしている「NPO法人ママワーク研究所」の理事長を務める田中彩さん。柔らかな笑顔で語る言葉には、社会や人への優しく強い思いが満ちていた。

子育てをしながらの再就職で挫折を経験

 東京の大学を卒業後、出版社に就職し、九州支社で営業を経験。仕事を通して自治体が実施する調査に興味を持ち、コンサルティング会社に転職し調査研究に携わった。その後、佐賀のベンチャー企業に転職し人事労務を担当。総務部長になり充実した生活を送っていた。
 28歳で結婚。夫は東京勤務で別居婚だったが、第1子出産直前に退職して東京へ。「出産後は子育てを楽しんでいましたが、仕事の楽しさも忘れることができず、子どもが2歳になった時に再就職をしました」。子どもを預けて満員電車に乗り、片道2時間かけて通勤する毎日。社内でただ一人の時短勤務に「自分は仕事をしっかりとできているのだろうか?」という焦りを感じていた。家事や育児も全力投球。「自分でも気付かないうちに体力的にも精神的にも消耗し、10か月後にダウンしてしまいました。それからは専業主婦です」。独身時代、精力的に仕事をこなしていた田中さんだったが、子育てをしながらの再就職で大きな挫折を経験することになった。
 一日の大半を子どもと過ごす生活は、最初は可愛いし楽しかったが、次第に「私ってこれだけでいいのかな」と不安になってきた。仕事を通じて色々な人と会い、自分の能力を社会に活かしたいという気持ちが抜けきれなかった。再就職挫折後も社会人としての自分が忘れられず、自分で自分を励ましながら、深夜や早朝に勉強を重ね、様々な資格を取得したという。

行動することで社会が変わる

 その後、第2子を妊娠。切迫早産で長期入院する不安な日々が続いたものの、無事に出産をすることができた。「“与えられた第2の人生”という感覚でした。子育て以外の時間は何か奉仕する仕事をしたい…そんな思いを抱くようになりました」。
 東京でのボランティア活動を経て、家族で福岡に戻ってから、2008年、産後ママのためのバランスボールによる健康づくりの機会を作りたいと「バランス・ママン」というグループを立ち上げた。地域活動で出会ったのは優秀な母親たち。皆「自分の能力を社会に生かしたい」と心の底では思っていた。“そう感じていたのは私だけではなかった”。2010年、福岡市男女共同参画推進センター(アミカス)の助成を受けて、「育児中の専業主婦の就業についての理想と現実」について調査を実施。「会社勤めを続ける母親はハードな日々。一方で、育児に専念する母親は社会と接する機会が減少し、疎外感や焦りを感じている。育児と仕事のどちらも大切にできる生活ができれば…」。どうにかこの思いを形にしたいと、アミカスで行われた起業家支援セミナーを受講。そして2012年、NPO法人「ママワーク研究所」を設立した。「誰かがやらないと社会は変わらない。私が行動することで社会が変わるのかもしれないと思ったんです」。

まずは一歩を踏み出してみる勇気

 2014年8月、働きたいママと企業を結ぶ「ママ・ドラフト会議」を開催。日本初の試みにメディアでも多数取り上げられ、反響を呼んだ。「優秀な人材を求めている企業と、柔軟に調整しながら働きたい母親。それぞれのニーズはあっても、つなぐ場所がない。私たちはそこをつなぐ役割をしたいと思っています」と目を輝かせて語る。
 豊富な仕事経験やボランティア活動を通して、これまで多くの女性と出会い、その潜在力の高さを実感してきた田中さん。能力を発揮するためには、まずは一歩踏み出してみることを勧めている。「私は石橋をあまり叩かずに渡るタイプ。失敗も多いですが、それが糧となって今があります。“できる”と信じて思い切って外に飛び出してみると、きっと豊かな人生になると思います」。自分と向き合い失敗を恐れず果敢にチャレンジしてきた田中さんの言葉は、私たちに勇気を与えてくれる。 (2014年9月取材)

コラム

 「観察」をするのが大好きだという田中さん。1年ほど前から飼いはじめた金魚の観察が最近の日課だ。「1日1回は眺めて話をしています。私が近寄ると泡を出してくれるんです。泡で会話をしています」と嬉しそうに語る。泳ぐ姿を見ていると、自分も冷静になり、ひらめく機会が増えるのだとか。
 最近、健康のために始めたウォーキングでも、行き交う人々の様子を眺めながら歩いている。「普段自分が思いもしないような発想や価値観、情報が目や耳に飛び込んでくるんです。観察しながら歩くのはとても楽しいですね」。

プロフィール

佐賀県唐津市出身。1997年、中央大学法学部卒業後、出版社やコンサルティング会社で営業・調査研究員を経験する。2000年、保健福祉分野のベンチャー企業で人事労務を担当し、総務部長になる。2003年、第1子出産のため退職。2005年、再就職するも子育てと仕事を両立できず退職。2008年、母親向けサークル「バランス・ママンin西新」主宰。2012年、NPO法人ママワーク研究所を設立し理事長となる。ふくおか女性いきいき塾アドバイザー、福岡県子ども・子育て会議委員など。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【た】 【NPO・ボランティア】 【子育て支援】

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