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内藤 直美(ないとうなおみ)さん (2013年12月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

福岡県女性農村アドバイザー/ いちご農家

家族とともに、絶品イチゴを愛で育くむ

 瑞々しく真っ赤に色づく大粒の「あまおう」。「あかい・まるい・おおきい・うまい」の頭文字をとって名付けられた、福岡県限定で生産される付加価値の高い品種だ。営農歴23年の内藤さんは、この「あまおう」づくりの大ベテラン。夫とともに二人三脚で、理想のイチゴ作りを目指してひたむきに歩み続けてきた。

愛する息子達のため、専業農家へ転身

 「故郷を離れたくなかっただけなんですよ」。地元のJAへ就職した時のことを、内藤さんはそう振り返る。肥料の販売や経理などの内勤業務を担当し、同僚だった夫と結婚した後も働き続けた。多忙ながらも充実した日々だったが、二人の子どもを出産したことをきっかけに、それまでの働き方を振り返った。「早朝から子どもを保育園に預け、その後は実家で面倒を見てもらう。仕事を終えて迎えに行くのは夜の9時、10時。既に眠っている子をそっと自宅に連れ帰り、翌朝また保育園に預けにいく毎日でした」。こんな働き方を続けていては大切な我が子の成長を見守ることができない。そこで、家族の傍でできる仕事として就農を決意。まずは夫がJAを退職して新規就農し、2年後内藤さんも後に続いた。内藤さん31歳、新たな生活のスタートだった。

パートナーと手を携え、困難も乗り越えて

 イチゴを作り始めた当初は苦労が絶えなかった。ビニールハウスなどに多額の初期投資が必要だったうえ、最初の3年は収穫もままならず、資金繰りに苦しんだ。土作りや堆肥の研究にも試行錯誤を繰り返し、やっと安定した収穫ができるようになった時、内藤さんは40歳になっていた。「仕事も家族も大切にしたいと、無我夢中の9年間でした。経験を積むうちにイチゴの質も作業の手際も良くなったけれど、畑も広げ続けたので忙しくなる一方だった」。それでも、止めたいと思ったことは一度もない。「『イチゴで子ども達を育て上げる』と決めた以上、何があっても前へ進むしかないと思っていました。それに、休みはなくても以前と違い、朝晩は家族揃って食事ができたんです」。努力を重ねて作り上げた土で丹精込めて育てる「あまおう」は甘さと酸味のバランスが抜群で、消費者からの評判も高い。「美味しい、って言われるのが、やっぱり一番嬉しいね」と顔をほころばせた。

農業の魅力を伝え、 “農ガール”を育てたい

 手塩にかけたイチゴの美味しさを多くの人に知って欲しいと、毎春1回、一般に農園を開放する「イチゴ狩り」のイベントを20年以上続けている。利益もほとんどなく、子どもを含め200人以上が2反のハウスの中に入るため、畑が荒れたりして大変なこともあるが、「イチゴを頬張り、喜ぶ皆さんの顔を見るとやめられなくて」と笑顔がこぼれる。そんな内藤さんは2009年、任期5年の「県女性農村アドバイザー」に認定された。農業の第一線で活躍する女性リーダーとして、農業の更なる発展を担う一員になったのだ。その活動の一環で、農業大学校で学ぶ女子学生を1ヶ月間受け入れ、栽培のノウハウを教えた。「農業は、確かに大変だけど、経験値が上がるにつれ新しい発見がある、やりがいのある仕事です。若い女性たちにもっと農業の魅力を知ってもらえれば」。
 長い年月をかけ、夫婦で築き上げた広大な5反の農園。昨年から次男も加わり、現在は家族3人でイチゴ栽培に精を出す。息子達が成長した今、次なる目標は事業としての発展だ。「自慢のあまおうを加工、商品化し、流通販売まで展開する六次産業化を考えています」。イチゴ作りを通して輝き続ける内藤さんの生き方からは、働く母親の深い愛情と、大いなるパワーが伝わってきた。
                                              (2013年12月取材)

*6次産業化…農林漁業生産と加工・販売の一体化や、地域資源を活用した新たな産業の創出を促進すること。

コラム

「料理はあまり得意じゃない」と笑う内藤さんだが、そこは夫婦で協力。美しい海も山もあり、丘陵地が広がる食材の宝庫・豊前で育った夫は料理が得意。新鮮な地魚を自ら捌く「刺身」や、隠し味にこだわる「カレーライス」は絶品らしい。

プロフィール

豊前市出身。高校卒業後、(現)JA福岡京築へ就職。23歳で職場の同僚と結婚。二人の子どもを出産後、31歳で専業農家としてイチゴ作りを開始。現在は福岡県女性農村アドバイザーとして後進の育成にも力を注ぐ。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【な】 【農林水産】

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