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大坪 美智子(おおつぼみちこ)さん

有限会社木佐木仏壇店 伝統工芸士(蒔絵部門)

「男女ではなく作品がすべて」匠の技で伝統を支える

 豊かな自然環境に恵まれ、伝統工芸のまちとして知られる八女市。この地でつくられる「八女福島仏壇」は国の伝統的工芸品に指定されており、九州の仏壇製造の源流とも言われる。そこの伝統工芸士の中でただ一人の女性が大坪美智子さんだ。大坪さんは蒔絵師。蒔絵とは、漆で絵や文様などを描き、その上に金銀粉などを「蒔く」ことで定着させる漆工芸技法の一つだ。漆器をはじめ仏壇、仏具などに用いられて、日本が誇る工芸技法として、海外でも認められている。大坪さんは、12年以上の経験をもって受験資格が得られる、難関の試験に合格し、2010年に伝統工芸士として認定された。男性が大多数を占める伝統工芸士の中で、日々奮闘する大坪さんにお話を伺った。

コツコツ積み上げ、技術と感性を磨く

 歴史ある仏壇店に生まれた大坪さんは、地元の高校を卒業後、蒔絵師になるために京都の美術短大へ進学。短大で学びながら蒔絵教室に通い、卒業後は金沢の蒔絵工房で2年間修業をした。蒔絵師を目指したのは、絵を描くのが好きだったことと、地元で蒔絵師が少なかったから。当時、八女福島仏壇において蒔絵師は1人しかいなかった。「修業期間は、ほとんど給料もなく、弟子も私以外は男性ばかり。大変なこともありましたが、最初から蒔絵を描かせてもらえるなど、集中して学ぶことができたので感謝しています」。と当時を振り返る。1994年からは、実家である仏壇店で仏壇制作に携わるようになった。
 大坪さんは、よい作品を作るための努力を惜しまない。いいものに触れる機会を積極的に持つよう日本中どこでも足を運ぶ。日本画や昔の図案もデザインの参考にする。「男性が多い世界ですが、個性や技術を磨けば女性だからといってマイナスになることはありません。この世界は作品がすべてですから」。数ある仏壇店があるこの地で“大坪さんに蒔絵を描いてほしいから”と仏壇制作の依頼を受け、完成品を見た時のお客さんの喜ぶ顔を見るのが何よりうれしいという。「好みのデザインだけでなく、思いまでくみ取るように心がけています」。

大切なのは、自ら道を切り拓く姿勢

 近年では、安価な海外製品におされて仕事が減り、仏壇製作に関わる多くの男性職人がやめていくのを目にしてきた。「私の場合、実家の店があって、蒔絵も描き、そこで経理や接客まで担当しています」と厳しい現状を語る。
 一方で、蒔絵制作は時間管理をしやすいという利点もある。納品までのスケジュールを立てたら、自分のペースで作業を進めることができる。「家庭も仕事も大切にしたい女性にとって、伝統工芸はいい仕事と言えるかもしれませんね。ただ、収入面を考えると、技術向上の努力に加え、現代生活にマッチさせる工夫、それをしっかりアピールすることは不可欠です。でも、その姿勢ってどの分野の仕事においても大切なことですよね」。

職人の手による本物を知ってほしい

 2012年には女性伝統工芸士展に出展。多くの人に八女福島仏壇を知ってほしいと蒔絵制作の実演も行った。「蒔絵にはシールもあるんです。安価な仏壇に使われていることが多いのですが、やっぱり雰囲気が全然違うんですよね」。確かに大坪さんの描く蒔絵は、繊細な色使いと立体感のある絵柄に加え、奥深い輝きがあり、優美でありながら力強さも兼ね備えている。圧倒的な存在感だ。
 伝統の技を暮らしの中に活かすため、日々努力をし、若い世代にも受け入れやすいモダン仏壇を構想中の大坪さん。仕事に対しての真っすぐな姿が印象的だった。その真摯な姿勢で八女福島仏壇の伝統を繋いでいくのであろう。
                                         (取材2013年9月)

コラム

コラム

大坪さんの大切な時間は、犬や猫と過ごす時間。現在で3代目になる犬種はボロニーズ。イタリアのボローニャ地方原産の犬だ。歴代の犬たちは、とても聞きわけがよかったが、今の犬は気に入らないことがあると、うなって自分の意思を通そうとするという。「同じ犬種でもこうも性格が違うのかと驚きます。とても手がかかるのですが、そこがまたかわいいんですよね」。猫も2年前から飼っている。「猫は手がかからないですね。ずっと見ていると、まるで思春期の子どもを見ているみたい。人と重ねて見るとすごく面白いんですよね」と目を細めて笑う。

プロフィール

高校を卒業後、京都の美術短大へ進学。短大で学びながら蒔絵教室に通い、卒業後は金沢の加賀蒔絵工房で2年間修業を積む。1994年、実家である仏壇店に就職。2010年に伝統工芸士として認定された。2012年には女性伝統工芸士展に出展。






キーワード

【あ】 【文化・芸術/伝統工芸】

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