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末次 由美(すえつぐゆみ)さん

あいう笑がお 代表

乳がんが教えてくれた 笑顔でつくる人とのつながり

 抗がん剤治療で髪の毛が抜けてしまった方々に、手作りのタオル帽子を贈る活動をする末次由美さん。「目深にかぶれば顔が隠れ、ホッとするし肌触りがいい。ありがたかった」。そう言って、大切そうにタオル帽子を手にとる。
 「辛いときほど笑顔でいようね、笑顔でいればなんとかなるよ」。手作りのタオル帽子を贈ってくれた友人の言葉。その願いを「あいう笑がお」に込めた。月1回の定例会でタオル帽子作りのワークショップや、自身の闘病体験をもとに講演活動もする。

がんとの闘い

 3年前の夏。体調の悪い日が続いた。動悸、めまい、胸の奥の鈍痛。気になりながらも日々追われ、病院に行ったのは秋だった。乳がん。5年後の生存率が62%という病期に達していた。「なぜ?酒もたばこもせず、食生活にも気をつけている私が…」。検診は15年前に受けたきりだった。しばらく何をする気もせず「一生分泣いた」という。
 本当の地獄は抗がん剤治療が始まってからだ。薬の副作用で体中の毛は抜け、どす黒くむくむ肌。骨の芯からくる激痛。苦しみは夫にぶつけるしかなかった。「代わってやりたくてもやれない。ただただ手を握って一緒に耐えるしかなかったですね」。夫の寿さんは「あいう笑がお」のメンバーとして、講演会でがん患者の家族に寄り添った体験談を話す。ともに苦しんだ3人の子どもたちも「あいう笑がお」の活動に協力的だ。共通の仲間も増え、元々なかよしだった家族の絆はより強くなったが、ここに辿り着くまでには一言では言えない泣き笑いがあった。「長女とは取っ組み合いのけんかもしました。家族がいなかったら自暴自棄になっていたでしょう。…そんなことも思い出せなくなるくらい、今ではいいことがいっぱい」と笑う末次さん。辛い思いをさせた子どもたちが、それぞれしっかり育っているのを何より幸せに思う。

殻を破りたい

 学生時代は引っ込み思案でおとなしかったという。「4月1日生まれのせいか、体も小さくて目立たない子。そんな自分がイヤで、ずっと殻を破りたいと思っていました」。就職先の条件は「会社に寮があること」。とにかく家を出たかった。仕事は楽しくてしかたなかったという。夫とは仕事の縁で出会い結婚。しばらく勤めたが、出産を機に退職した。「男女雇用機会均等法」が施行されたばかりで、産休なんてとんでもないというのが当時の雰囲気だった。
 「あいう笑がお」の活動を始めて一年を過ぎた昨年6月。末次さんの目に飛び込んだのは「ふくおか女性いきいき塾」の募集記事。ちょうど、「もっと何かをしたい!」と、もやもやを抱えていたころでもあり、胸は高鳴った。応募書類に推薦文が必要とあり、あきらめかけるが「おまえが行かんで誰が行くんや」という夫の言葉が背中を押してくれた。
 「いきいき塾」の講義は毎回レベルが高く、塾生はすごい人たちばかりに見えた。「私も働き続けてたら、あんな風になれてたかな」、「私の来る所じゃなかったのでは」と戸惑い落ち込んだが「でも仕事を続けていたら今と違う人生。今の私だからできることがあるんだ」と気持ちを切り替える。前向きな仲間たちの姿に触発され、共に課題を成し遂げた経験は宝となった。人の縁が広がり勢いを増した末次さんには、テレビやラジオから出演依頼が来るようにもなった。

迷ったときは「やる」

 2013年3月。「あいう笑がお」2周年の記念イベントを近くのホールで開いた。予想外に多い150人以上の参加があり、講演やワークショップに老若男女の笑顔があふれた。「必要としてくれる人がこんなにもいる!」。末次さんは、今後もこの活動を続ける覚悟をする。「これはあなたの使命」と言ってくれる、闘病仲間や友人たちの言葉を支えに。
 「やったことを後悔するのは、明日があると思うから。明日がないと思えば、後悔なんかしていられない。迷ったらやる。そして後悔はしない。子どもたちに『お母さん、がんになったけど楽しそうやったね。いつも笑ってたね』って覚えてもらえる生き方をしたい」。自分に言い聞かせるように言葉に力を込め、瞳を輝かせた。
 笑顔でがんと闘い、チャレンジし続ける末次さんの生き方は、一歩踏み出せずにいる私たちに、勇気を与えてくれる。

(2013年7月取材)

コラム

大切な物 大切な時間

 「病気をしてからは物欲がまったくなくなった」という末次さん。「やっぱり一番大切なモノは家族。何よりも一番です!!」と言い切る。そして、家族や仲間との時間を大切にするのと同じくらい、一人の時間も大切にしている。特に何をするわけでもない「一人静かに自分自身を見つめ直す時間」を…。

プロフィール

三池郡高田町(現みやま市)出身。三井郡大刀洗町在住。
高校卒業後、西日本鉄道に入社。寮のある久留米市で、バスガイドとして充実した日々を送る。1991年西鉄電車の運転手だった寿さんと結婚。出産を機に退職。2010年11月乳がんの診断を受け1ヶ月後左胸の全摘手術、退院後抗がん剤治療を受ける。2011年2月「あいう笑がお」設立。現在も闘病生活をしながら、女性のがん患者にかつらを貸し出す NPO法人「ウィッグリング・ジャパン」(福岡市)と連携して講習会を開くなど、人の縁を広げている。「あいう笑がお」が2013年8月、平成25年度「ふくおか共助社会づくり表彰共助社会づくり奨励賞」を受賞。






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