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山辺 葉月(やまべはづき)さん (2013年6月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

山光金属株式会社  代表取締役

信念があれば逆風もバネになる

 産業廃棄物から「鉄・非鉄金属」である銅やアルミや鉄をはじめ、希少金属といわれるレアメタルなどを回収し、破砕工場で粉砕、選別して、国内の合金メーカー、製鋼メーカー、精錬所に納品している山光金属株式会社(本社:行橋市)。創業者の夫が急死、37歳で社長に就任したのが山辺葉月さん。女性の少ないリサイクル業界で経営者として活躍し、新規事業にも積極的に取り組んでいる。

夫を亡くし、37歳で社長に

 看護師だった山辺さんが結婚したのは27歳の時。同じ年の夫は、20代前半でリサイクル会社を創業。当時は「リサイクル業界」という分野もなく、「燃えないゴミが資源になって流通するなんて不思議な世界だなぁ」と思っていたという。結婚後、仕事を続けながら、銅・アルミなどの分別作業や、トラックでの運送など、夫の仕事を手伝っていたが、後に、夫のサポートに専念するため病院を退職した。
 その後、社会的にリサイクルへの関心が高まり、法律も整備され、会社の業績も順調に伸びていった。創業時3~4人だった社員も20数名に増えた。全てが順風満帆にみえた2005年、思わぬ不幸が襲いかかった。夫が37歳で急死したのだ。一人息子はわずか5歳。言葉に出来ない程の悲しみと闘いながらも、山辺さんは社員たちのことを思った。「嘆いてばかりはいられない。自分が社員の生活を守っていかなければ」と。

リーマンショック後にリサイクルセンターを開設

 社長に就任し、まず社内の改革に取り組み、社員教育にも力を入れた。わからないことは他社の経営者に聞くなど、必死で勉強した。日々のニュースや業界紙から情報を得、経済の動き、世界情勢にもアンテナを張るようになった。若松区響灘地区に大型リサイクルセンターを作ろうと決断したのも、これからの時代と市場のニーズを考えてのことだった。建設にあたり、全国の工場を見学し、導入する機械を検討した。だが、計画が進み図面が出来上がった2008年、大きな壁が立ちはだかった。世界の経済を大きく揺るがせたリーマンショックだ。円高が進み、モノが売れなくなった。倒産する企業も相次いだ。「今この時期、大型設備投資をするのは正しいのだろうか?」。大きな不安にかられながらも、泣き言は言わなかった。社員を解雇することもなく、リサイクルセンターの完成を頭に描き、前へ進んだ。そうして2010年2月、環境配慮型のリサイクル工場「ひびきリサイクルセンター」が完成した。

今後目指すのは総合リサイクル業

 外国為替や日経平均株価の動向をチェックすることから一日が始まる。経済や世の中の動きは、仕事を通じて敏感に感じ取る。「明日はどうなるのか・・・常に孤独と不安に駆られています」と語る。大切にしているのは人と人とのつながり。現在商工会議所女性会をはじめ、九州環境ネットワーク・日本鉄リサイクル工業会・国際ソロプチミスト等、様々な団体に加入している。「多くの方とお会いすることで、色々なことが吸収出来ますし、さまざまな経営者の方々からも多くの事を学ばせてもらっています」と目を輝かせる。
 「資源の少ない国内になるべく資源を戻したい」。今後は、さらに有効資源の活用を徹底し、総合リサイクル業を目指すという。

女性経営者の活躍を願って

 夫が亡くなった時、ただ愕然とする中「夫にも出来たのだから、自分にできないことはない」と自身を奮い立たせた。看護師への復帰は考えず、会社を継ぐことを決断した。「37歳という若さと息子の存在がなかったら、あの時頑張れなかったかもしれない」と振り返る。外出先でよその家族連れを見ると、せつなくなり涙が出ることも。しかし、気持ちを切り替え「前進あるのみ」と思うことにした。「大きな山を目の前にして、不安にもなりましたが『焦るな、焦るな』と自分に言い聞かせながら前へ進んでいきました」。同居する実母の協力を得ながら育てた息子は、中学生になり、頼りがいが出てきたという。
 「女性も経営者として、トップでもやっていけると信じる事です。若い女性にもどんどん活躍してほしいですね。1度限りの人生だから、後悔はしてほしくはない。つまづいたとしても、信念さえあれば必ず、次の成功につながるはずですから」。人の役に立ちたいと願って歩み続ける山辺さんの足取りは、1本の大きな道を形作っていくに違いない。
                                             (2013年6月取材)                

コラム

社員とバイクでツーリング

 社員から勧められ、夢中になったのが、大型バイクでのツーリング。「面白いですよ」と聞いて、すぐに中型・大型二輪免許を取りに行ったそう。会社のツーリング仲間と「おいしいものを食べに行こう」と出かける。お気に入りのコースは、山口県の角島大橋や大分県の国東半島。「自然の香りや、風、温度を感じながら走ると、気分もリフレッシュできるんです」と、爽やかな笑顔を見せた。

プロフィール

田川市出身。高校を卒業後、看護専門学校へ進学。その後看護師として、病院に勤務。1995年に27歳で結婚。2005年、山光金属株式会社の創業者である夫を亡くし、社長に就任。2010年 2月、北九州市若松区にひびきリサイクルセンターを開設。同年4月に産業廃棄物処分業許可を取得。株式会社九州環境ネットワーク常務取締役。また人権と女性の地位を高める奉仕活動団体の国際ソロプチミスト行橋みやこでの活動も行っている。

 

 

 

 


 

 

 

 

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