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平 由以子(たいらゆいこ)さん

NPO法人 循環生活研究所 事務局長

「必要なものを楽しく循環させるくらし」の普及活動に注力

 ダンボールを開くとつややかな茶色の土が。生ごみを肥料に変える「ダンボールコンポスト」だ。「ほら、ちゃんと育ってる」と穏やかな口調で話す平由以子さん。平さんの手が生育中の堆肥をすくい上げると、まるで応じるかのように堆肥がほんのり湯気を上げた。自宅兼事務所の入り口では、ダンボールコンポストの堆肥で育て収穫したばかりの野菜たちが、今日も客を出迎える。

父の病気が教えてくれた

 平さんが「土と取り組む」ようになったきっかけは、父が癌を患ったことだった。28歳の時、結婚生活を送っていた大阪から一家で帰福し、父親の看病を始めた平さん。大学で取得した栄養士の資格が全く役に立たないことに愕然とした。「食材そのものの質が相当悪くなっている。無農薬野菜を探すのに丸一日かかり、安全な水にもお金がかかる・・・」。水に対する不安を突き詰めていくうちに、たどり着いたのが「土」だった。「土が水を浄化し、作物を育てる。土が良くなれば全てが変わるという一念で今日まできている」と語気を強める。平さんの心に理念を根付かせ、2年後、父は息を引き取った。
 翌年、31歳のとき、第2回福岡県青年の翼・環境班のリーダーとしてアメリカに行った。帰国後、青年の翼での学びをもとに「NPO法人エコねっとふくおか」を設立。行政や企業と協働して循環型社会を創っていくことを目指し、ゴミの減量(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル( Recycle)という「3Rの推進」啓発のための教室や講座を開催し、推進する人の養成などに取り組んだ。その活動を4年間続けた後、後任にバトンを渡した。
そして平成16年、「地域で生活に必要なものが楽しく循環するためのくらし」というコンセプトを掲げ、「NPO法人循環生活研究所」(略称:「循生研」じゅんなまけん)を発足させた。生ごみや庭からでる有機物をごみとして出さずに、「循環させる技術」と「堆肥づくりの楽しさ」を普及する活動を本格的にスタートさせた。理事長は長年堆肥作りをしてきた実母、波多野信子さん。平さんは事務局長として、組織運営のかじ取りをしながら、ダンボールコンポストの普及に力を注いできた。

土と関わる人々の変化や、出来た野菜が活動のチカラに

 循生研の主な活動は、人々が楽しく「循環生活」を送れるような仕組み作りや啓発活動だ。例えば、地域の住民が作った堆肥を農家に使ってもらい、出来た野菜は買い物難民の多い住宅街でリヤカー販売したり、地元のレストランで使ってもらったりして、地域の住民に食べてもらうことだ。苦労がなかったかたずねると、「堆肥を使った作物作りや循環する仕組みについて、農家に理解してもらうのに5年かかった」という。現在は13人の農家の登録があり、給料を支払えるまでになった。瞬く間に全国各地から講演依頼も増え、忙しくなった平さん。平成17年からは、普及活動だけでなく、活動の半分を人材育成に切り替えた。「そこに住む地域の人が循環について教えられるといい」という思いからだ。日本だけでなく海外にも足を延ばし「循環する仕組み」を伝授している平さん。「いつも『生き物の本能』で動いている感じ」と話す表情に気負いは感じられない。
 循生研には、現在8カ所の畑がある。親子農園、大学の中に授業用に作った農園、耕作放棄地を開墾した畑と種類も様々だ。週の半分は畑仕事をしているという平さんは、「ここ5年位で畑の役割が変わってきた」と感じている。「体にいい野菜を作るだけの畑じゃない。うつ病の方や足腰を強くしたいボランティアさんの健康づくりにもなっている。土に触れ、人と関わることで、人は大きく変わっていく」と。

遊び心を持って、気持ちも循環させたい

 これまで数々の受賞歴を持つ循生研に、平成24年度「ふくおか地域づくり活動賞・グランプリ」受賞の知らせが舞い込んだ。「今回は“地道で地べたな暮らし(ベッタな暮らし)の輪を広げよう”という活動の『小さな循環ファーム』事業が受賞したもの。信念を持ってやってきたことが客観的に評価され、嬉しさも格別」と喜びをかみしめる。その活動のひとつ「半農都会人講座」は、2年コースの週末農業講座だ。虫の生態から学んで、じっくり作るため、どんなときでも“ぶれない野菜”が出来るという。「『土に対する考え方が変わった』とか、『自分が作ったかわいいレタスを、誰かに食べてもらえることが喜び』とか、参加者の感想を読むとホロッとくる」と表情を緩め、「土作りも子育てと同じ。手をかける時期、手を抜く時期、手を放す時期がある。ほどほどのさじ加減が大事」という。
 「東日本大震災が発生した直後は、土を触る人が多かった。直接被災していなくても全国的に不安が広がっていたから。『土』は揺るぎないもの、人に安心感を与えるもの」と表情を引き締める。なるべく電気を使わない生活を実践している平さん。「循環するスキルがあれば、自給もできるし、電気を使わない生活ができる。非常時もそんなにこわくない」という言葉に説得力を感じた。「これからは、自然や生態系も入ったまちづくりになっていく。地元でおいしい野菜が食べられる地域づくりを目指したい」。平さんの忙しい日々はまだまだ続きそうだ。

                                           (取材 2013年1月)

コラム

年間に鑑賞する映画は約300本

趣味は映画鑑賞と音楽を聴くこと。あらゆるジャンルの映画を自宅でDVD鑑賞するそう。「最近観た映画の中では、『ソウルフード』が良かった。何気ない日常の話なんですけどね」とさらり。音楽はロックが大好き。「畑もリズムなんです。畑にいると、鳥の声、風の音といった季節の音も聞こえるし、作業してる時は自然と一体となっている感じ。私、畑ではよく歌ってるんです。髪はボウボウ、お気に入りのつなぎを着て、長靴履いてね」とお茶目に笑う。

プロフィール

 福岡市東区三苫生まれ。大学を卒業後、5年間証券会社に勤務。結婚退職と同時に夫の勤務地の大阪へ、28歳のとき帰福。平成16年、NPO法人循環生活研究所を設立。以来、事務局長を務め、講師としてダンボールコンポストの普及活動を行う。コンポストトレーナー、環境省環境カウンセラー、環境再生医。著書に『堆肥づくりのススメ』『生ごみから学ぼう!ダンボールコンポスト』など。2人の娘を持つ母親でもある。

NPO法人循環生活研究所HP:http://www.jun-namaken.com/






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