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太刀山 美樹(たちやまみき)さん   (2012年7月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

株式会社MIKI・ファニット代表

子育て中の葛藤バネに開いた親子運動教室~目指すは、ママたちが輝くきっかけづくり~          

 

育児に頑張りすぎた20代

 「みんな、体元気かな〜?」。レゲエ調のリズムに乗って、0歳児を抱っこした母親たちが体を揺らす。笑顔と明るい声で盛り上げるインストラクターも、子育て中の女性。「雨の日はどう遊んでます?」。そんな育児トークを交えつつ、親子で体を動かすうち、母親たちの表情もみるみる和らいでいった。
 0歳児からの運動教室「MIKI・ファニット」を開いて丸6年。ファニットは「FUN(楽しさ)」と「FIT(フィットする)」を合わせた造語で、運動プログラムはすべて太刀山さんのオリジナル。絵本遊びや知育を組み合わせ、「頭と心、体の幹を育てる」ことを目指す。「でも、ママたちを元気にすることが一番の願いかも」と太刀山さん。その思いの背景には、自身が経験した子育て中の葛藤があった。
 若い母親だった。23歳で結婚、出産。専業主婦になった。留学や仕事、おしゃれを謳歌する友人に負けまいと、「私は育児で頑張ろう」と燃えた。離乳食やおやつ、服は全部手作り。知育系の布絵本を何冊も縫った。子連れで行ける育児講座にも、せっせと通った。
 ある日、ボランティア養成講座に、大学時代の友人が講師として来た。年配の受講者から「子育て中は家にいなさいよ」と冷たい視線を向けられながら、教室の後ろで子ども2人を抱えて講義を聞いた太刀山さん。「いい話でした」と受講者たちにほめられる友人講師を見て、涙が出た。2歳の長女が、背中をトントンと叩いてくれた。号泣。育児を1人で頑張ろうと、張り詰めていた緊張の糸がプツンと切れた瞬間だった。よりよく生きたいと思う気持ちを、どこに向けたらいいのか分からなかった。

わが子が喜んだ運動プログラムで起業

 しかし、この経験が飛躍につながる。「自分にしかできないことって、なんだろう」。足元にいる「わが子」が目に飛び込んできた。久しぶりに体いっぱい使って遊ぶと大喜び。頭がスッキリして子どもを抱きしめることができた。
 「ほかのお母さんも同じ思いでは…」。大学で学んだ運動心理学を活かし、わが子を“実験台”にしながら運動プログラムを試作。近所で始めた講座は「元気が出た」と好評で、クチコミであちこち呼ばれるように。健康運動指導士の資格も取得し、保健所など行政関係にも講座を広げた。「来た球は何でも打つ」をモットーに、高齢者の運動講座、NHK福岡の「体操のお姉さん」など、あらゆる仕事にチャレンジしたが、39歳のとき、原点である親子の運動教室で起業。きっかけをくれたわが子は、もう高校生だった。

子どものためにも輝く親を増やしたい

 子育てしながら思いを形にするのは大変だ。保育園時代は、お迎えの足で福岡市の百道浜へ直行。海岸で思い切り遊ばせ、クタクタになった子どもと夜は一緒に就寝。自分だけ朝3時に起きて仕事や勉強を続けた。「でも、とても充実していた。子育ては、人生の幅を広げてくれる素晴らしい経験」と語る。
 実は、夫は「子どもが大きくなるまでは家にいて」という考えだった。それを説得してくれたのは、元看護師の義母。「『美樹さんが社会の役に立って輝いている方がいいやろう?』って言ってくれて。その応援がなければ、今の私はない。だから、今度は私が、ママたちが輝けるよう応援したい」と太刀山さん。子育て中の人をインストラクターとして多く養成・採用しているのは、親子教室で笑顔のインストラクターを見た母親たちが、「私にも何かできるかも」と勇気を持つよう願ってのこと。社内的には、子育て中のスタッフの勤務時間に気を配る。
 仕事に一生懸命でわが子に寂しい思いをさせたのではないか…という思いもあったが、長女が20歳になったとき、「ママの子どもでよかった。夢を形にしてかっこいいよ」と言ってくれた。「子育て中に悩むのは先が見えないから。将来、こんな幸せがあるかもよ…と先輩ママとしての姿も見せていきたい」。輝くママの応援隊として、思いは強まる一方だ。 

                                                                                                     (2012年7月取材)

コラム

宝物の思い出

 「完璧主義じゃないのですが、昔は家事を夫に頼むのが下手な性格だった。だから勝手に不満をためて家出したこともありますよ」と太刀山さん。そんな時代の思い出を語ってくれた。
 夫婦げんかをしていたときのこと。保育園児だった娘が覚えたてのハサミで、紙のネックレスを作ってくれた。首にかけてくれたが、長すぎる。なぜだろうと思っていると、別の部屋にいた夫を引っ張ってきて、太刀山さんの横に座らせた。そして、夫の首にも長いネックレスをかけて言った。「見てごらん。1人では大きすぎるけど、2人一緒だとちょうどいいんだよ」。天使のような子どもの言葉に、泣きながら仲直りした。一生忘れられない「宝物」の思い出だ。

プロフィール

 福岡大学体育学部卒業後、フィットネスクラブへ就職。結婚を期に退職し、出産。子育て中に「親子運動プログラム」を考案、親子サークルなどで実践指導。その後、「高齢者と子どもが一緒に」をテーマとした「世代ふれあい運動プログラム」や「高齢者の介護予防体操」なども次々と考案、指導。NHK福岡の体操コーナーを約10年間担当。2006年、「MIKI・ファニット」起業。翌年、福岡市西区に「MIKI・ファニット本校スタジオ」をオープンし、0歳からのやる気を育てる運動教室を運営。2012年には、同市早良区、また西区にもスタジオを増設。大学(保育科)、看護学校等の講師なども務める。2015年10月、「前傾姿勢でいいじゃない 子育て、起業、いま女子大生」出版。

 

 

 

 


 

 

 

 

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