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前園 敦子(まえぞのあつこ)さん

子どもの本専門店 エルマー 代表

すべては「子どものため」~支援で始めた「子どもの本専門店」~

 西鉄春日原駅前に、日本を代表する絵本作家たちが集まってくる絵本店がある。代表の前園敦子さんが、2児を子育て中に「本で子育て支援をしたい!」との熱い思いで、1989年に開店した「子どもの本専門店エルマー」だ。

発端は、自身が悩み多き母親だったから

 春日市周辺の子育て世代の人で、知らない人はいないくらい、地域にしっかり根付いているエルマー。ベストセラーに関係なく、店主が吟味して良いと判断した良質の本だけ置いた「こだわりの本屋さん」だ。小さな本屋として珍しく、2階のスペースを使って本にまつわるいろんな勉強会や親子参加の読み聞かせ会を開催するなど、子育て世代の人たちの心の拠り所となっている。そして、何と言っても、エルマー最大の魅力は、店主の前園さん自身だ。万人を包み込むような明るい人柄に惹かれて、たくさんの人が集まってくる。最近では、子どもの頃、ここに通った人が親となってやってくるようになった。
 子育て支援、読み聞かせ活動の先駆者でもある前園さんのもとには、保育園・幼稚園、小学校、公民館等からの講演依頼も多い。しかし、そんな前園さんも最初は、今の母親たちと同じように、育児に戸惑う悩み多き母親の一人だった。
 20歳という若さで結婚した前園さんは、幼くして父親を亡くしたこともあり、両親が居て子どもが居るという家庭がどういうものかわからなかった。子育てのやり方もわからず、育児ノイローゼ寸前だったという。

本で親子を支援できるはず!

 そんな前園さんが変わったのは、「子ども劇場」*で出会った先輩のあるひと言から。「大丈夫よ。みんなそうだったよ」。固まっていた心が溶けたようだった。そして、同劇場の図書文化部に所属し、子どもにたくさんの本を読む機会を得ることに。「本を読むことで、“私が”やさしい気持ちになれたのです」と当時を振り返る。
 子ども劇場のイベント時に本を販売していると、本を介して会話が生まれ、悩みを抱えている親子が山ほどいることがわかった。「本で支援ができる!本屋さんになりたい!」と強く思うようになった前園さん。多くの読書会を主宰しつつ気持ちをあたため、41歳の時、ついに「子どもの本専門店エルマー」をオープンさせた。
 「それが、商売目的ではなく、『支援』のため始めたものだから、24年たっても全然儲かってないのよ」。「おむつ外しの本はありませんか?」と若いお母さんが来ても、こだわりの本屋・エルマーにはしつけ的な本は置いてない。「本よりまず何度失敗してもいいようにパンツを買いなさい、なんて言うものだから、そりゃ儲からないよね」と明るく笑う。
 各地に講演会に出かけ、紹介する本を100冊近く持ち歩く前園さんだが、実は車の運転ができない。どうしているのかというと、エルマーには「子どもが一番!」という同じ気持ちの人が集まってくるから、誰彼となく手伝ってくれるのだそう。「わたしはひとり派じゃなく、みんな派。一人じゃできないからみんなの力を得てやってこられたのです」。

妻が何かをやろうとするとき、夫の協力が何より大事

 実は、何度か店をたたむことを考えたこともあったという。それを踏み留まらせてくれたのは、いつも来ていた小学5年生の少女のひと言だった。当時、複雑な事情を抱えていた彼女は行き場を失って、毎日のようにエルマーで過ごしていた。「エルマーが無くなったら、わたし、どこに行ったらいいと?」。閉めるわけにはいかなかった。その子は母親になった今も、前園さんを訪ねてくるそうだ。
 そして、誰より支えとなったのは、夫と二人の子どもたちだ。「妻が何かをやろうとするとき、夫の協力が何より大事です」と前園さんは言い切る。「今の女性には、自分がやりたいことをどんどんやりなさいと言いたいですね。夫も妻がキラキラしていたら幸せなのですから」。通称「前園パパさん」は、講演会の受付、本の搬入出の手伝い等も買って出てくれている。看護師の長女も育児休業中には店番をしてくれた。長男も家事を一通りこなせる男性になった。
 だからこそ、今の若い母親たちを見ていて、少し思うところがあるようだ。「今度こんなイベントがあるからおいで」と誘っても、「夫に聞かないとわからない」という人が多いのだ。「そんな時は『あなたはどうしたいの?』っていうのよ。もっと自分の気持ちを言ってもいいのではないかしら?」。自分の思いを夫に話し、協力してもらってきた前園さんの言葉には、力をもらえる。
「もう65歳だけど、まだ本は運べるみたいだから。行けるところまで行きます」。パワーの源は、すべて子どもたちのため。「わたし自分のことでは深く悩まないの。悩むのは人のことだけ」。
ちまたには、有志による「エルマー保存委員会」が存在しているそうだ。

*子どものための優れた舞台作品の鑑賞を中心に全国600カ所以上で活動している団体。

(2012年7月取材)

コラム

わたしの大切な時間

 「ここで、みんなとワイワイ言っているときが一番幸せ」と前園さん。「旅行だって楽しいけど、本当に楽しいのは人の世話を焼いているときかな」。東京に出張するときも仲間を誘うのだとか。「わたしはみんな派ですからね、みんなと居る時が一番幸せ」。実はさびしがり屋さんのような…。韓国が好きで、韓国旅行に“みんなで”行くのも、とっておきの時間の一つ。

プロフィール

春日市にある、子どもの本専門店エルマー代表。日本子どもの本研究会理事。NPO法人子どもとメディア理事。紙芝居文化の会運営委員。春日市子ども読書推進委員。福岡県を中心に各地で講演活動も行っている。
エルマーでは、2階のスペースで「よみかたりの会」、「絵本を楽しむ会」など、6つの会を開催するほか、作家を招いての勉強会も開催。一人でも多くの人たちに素敵な本を!とまだまだ奮闘中。






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【ま】 【起業】 【子育て支援】

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