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大久保 千津奈(おおくぼちづな)さん (2011年3月取材)

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カメラマン(取材時:ケイ・ビー・シー映像 主任)

ドキュメンタリー映画の撮影監督で新境地を開く

 

『祝の島(ほうりのしま)』でJ.S.C賞を受賞

 2011(平成23)年1月5日、東京京王プラザホテル『J.S.C賞』授賞式会場。華やかさと厳かな雰囲気が交差する場に、やや緊張した面持ちの大久保千津奈さんの姿があった。同賞は、劇場用映画以外の文化、短編、記録、ドキュメンタリー映像等などで豊かな感性と技術成果をあげ、社会的貢献を認められた撮影監督に贈られるもの。過去、一之瀬正史氏をはじめ名だたる映像監督が受賞してきたものだ。
 大久保さんは、撮影監督として初めて撮ったドキュメンタリー映画『祝の島(ほうりのしま)』でその名誉ある賞を受賞。作品の完成度はもちろん、カメラも音声も一人でこなした技術力、そして何よりも舞台となった山口県の瀬戸内海沖に浮かぶ祝島(いわいしま)島民との関係性が高く評価された結実だった。
 「おかげさまで尊敬するカメラマンや撮影監督ともお会いすることができ、人生の宝物をいただくことができました」と喜びを噛みしめる。
 現在は㈱ケイ・ビー・シー映像技術部から九州朝日放送技術局へ出向し、スタジオやスポーツ中継に多忙な大久保さん。
 プロフェッショナルの目が社会を映す。

女性初のカメラマン誕生

 大久保さんがケイ・ビー・シー映像へカメラマン候補として採用されたのは、1996(平成8)年のこと。もともとディレクター志望だったが、同社が女性カメラマンを育てようとしていた時期であり、「ディレクターはカメラマンを経験してからでも遅くない。いまなら女性初のカメラマンになれるよ…」と言われて決断したという。
 「思えば、女性初という言葉に踊らされたんですね~」。屈託なく笑うが、配属された技術部は体育会系のノリ。社内初の女性カメラマン候補に周りは戸惑い、自身も体力的にキツイ経験を重ねたが、貪欲に学ぶ姿勢はやがて周囲を変え、男女ではなく一人の人間として見られるようになる。
 入社3年目の夏、報道カメラマンと編集の2つを担うべく長崎文化放送への転勤辞令が下った。番組制作のカメラ中心で報道経験はゼロの身だったが、それでも小さな不安と大きな好奇心を胸に港町へ降り立った。
 「上司となったチーフカメラマンは恩人。カメラワークはもちろん、撮影での精神論を教えてもらい、私は長崎で本当のカメラマンになれた気がします」。この地での出会いが、大久保さんを大きく成長させることとなった。

プロフェッショナルの面構えへ

 「監督の纐纈(はなぶさ)あや氏が、根性と体力があって、酒の飲める女性カメラマンを探しているんだが…」。ドキュメンタリー映画『祝の島(ほうりのしま)』プロデューサーからケイ・ビー・シー映像へ打診があったのは、 2008(平成20)年春。当時、3人の女性カメラマンがいたが、白羽の矢は大久保さんに立つ。
 『祝島』へ向かったのが同年7月。島で民家を借り、纐纈監督との共同生活や福岡との往復が始まった。「TVの世界しか知らず、ドキュメンタリー映画とは何なのかという原点に迷い、撮影監督としてどう進めていけばいいのかという壁に苦しみました」。その悩みは、同時に纐纈監督そして島の人たちとの関係性を模索したことでもあった。 
 葛藤の末、カメラを回したい気持ちを抑え、島の人たちの仲間になることを優先。いっしょにごはんを食べ、酒を飲み、語り合った。生活の共有が共感を呼び、監督との打ち合わせでも「いい感じになってきたね。これはいけるね」との自信が二人に出始める。
 2009(平成21)年12月にクランクアップ。約1年半にわたった撮影は、大久保さんをプロの面構えに変えた。
                                   (2011年3月取材)

コラム

人生は1度、いろんな可能性にチャレンジしたい

 『祝の島(ほうりのしま)』は、ドキュメンタリー映画という新しい世界を体験させてくれました。そこで学んだのは、人の人生や生命と直接向き合うということ。だから、撮ることが自分の成長につながったんだと思います。
 人生は1度きり。後輩を育てることも大切な役割ですが、まだまだいろんな可能性にチャレンジして、自分の器を広げたいですね。

プロフィール

1996年4月、株式会社ケイ・ビー・シー映像入社、技術部へ配属。カメラアシスタント、ロケ音声、スタジオカメラなどを担当する。1999年8月、長崎文化放送報道制作部へ異動し、撮影と編集に携わる。2002年にケイ・ビー・シー映像へ戻る。ロケ撮影(ワイドショー、報道、情報番組、スポーツなど)、スタジオカメラ(アサデス、気ままにLBなど)、中継カメラなどを担当。2004年4月、技術部主任に昇格。
2008年8月~ドキュメンタリー映画「祝の島」撮影監督としてクランクインする。2009年12月、「祝の島」クランクアップ。2010年4月より 九州朝日放送 技術局制作技術部へ派遣となる。同年12月、第19回『J.S.C賞』を受賞。
2012年、株式会社ケイ・ビー・シー映像退職。フリーランスとなり東京に拠点を移す。
2013年、ドキュメンタリー映画「ある精肉店のはなし」撮影。同作品が2014年度文化庁映画賞で『文化記録映画部門大賞』を受賞。

 

 


 

 

 


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