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田中 由紀(たなかゆき)さん    (2011年3月取材)

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YM-net代表 / 福岡県SOHO事業協同組合代表理事

雇用されない、雇用しない、働き方

 

「これで私の時代が来た」と思った、SOHOという働き方

 まだ世間に本格的にITが普及する以前から、電算機やデータベースなどを見て、漠然と 「これからはこういうものを活用して働く時代になるだろう」と思っていた田中さん。もともと独立した働き方を志向してもいたので、出産を機に専業主婦をしていた時期にパソコンやインターネットに出会った時は、「これで私の時代が来た」と思ったという。それ以来、現在に至るまで、SOHOという働き方をベースに仕事をしてきた。
 1998(平成10)年には、YM-netを設立。データ入力、アンケート集計、Web制作など、在宅でもできる仕事を受注し、主婦のネットワークを通じて個人単位の請負契約で委託した。その後、ITの普及に伴って、受注業務内容をネットショップやWebサイトの運営代行などにシフトしていく。
 現在は、自身の持つ営業スキルや人的ネットワークをさらに活用し、行政や企業などにおける様々なプロジェクトや営業プランの企画・立案に携わり、より総合的な観点から仕事に取り組んでいる。

個人として働くことの悩みと強み

 個人のネットワークを介して仕事を委託することの悩みもあった。委託先は在宅の主婦が多く、もちろん仕事場は自宅だ。家事や育児を片手間に仕事をする人も多く、仕事に対する責任感の違いもある。個人個人によって、その人が持つ適性やスキルレベルにもばらつきがあった。また、時代の変化もあり、2005(平成17)年に個人情報保護法が施行されると、個人情報のデータ入力業務などの仕事は大幅に減少。在宅ワークにとっては逆風ともなっていった。
 しかし、そういった逆風をいい意味でとらえ、それを機に、『主婦の片手間仕事』ではなく、もっと責任感を持てる、クオリティの高い仕事に関わっていきたいと思うになる。そうして、ITの分野を中心として、行政や企業のプロジェクトや営業プランなどのスキーム毎に、行政や企業と能力の高い個人とを結びつけ、コーディネートしていく役割に業態を大きくシフトしていった。「個人であるからこそ、時代に応じて業務内容や形態を変化していくことができるのは、これからも強みです」。

雇用形態を考え直す時期にきているのでは

 現在は家族の仕事上の都合もあり、東京と福岡を往復する生活している田中さん。「『デジタル・ノマド』(※)は仕事をする場所を選ばないので、かえって仕事の幅が大きくなりました。今後は、東京と福岡を繋ぐような業務を増やしていきたいです」と、ますます夢も広がっている。 
 また、現在の日本社会全体の雇用の姿にも目を向ける。「普通の人が、特別頑張らなくても、普通に生活できる、それが当たり前の世の中だと思います。今は、特に若者が、普通の人が普通に頑張っても、わずかな年収という時代。こういった年齢構成の変化による時代の過渡期に日本の社会を変えようと思っている人があまりいないのは残念です」。こういった観点から今後の雇用のあり方について語る、次の言葉が印象的だった。
 「今の日本の雇用形態が、今後の世の中を背負えるとは思えません。雇用形態を個人が社会任せにするのではなく、考え直す時期にきているんじゃないでしょうか。だからこそ、自分は雇用に頼らないし、自分も雇用しようとは思わない。雇用されない、雇用しない、そんな働き方もあるのだと、まずそこから知ってほしいです」。

※デジタル・ノマド
デジタル機器やインターネットなどのITを活用して、自宅やカフェや出先など働く場所を選ばずに、主に個人としてフリーランスで仕事をする人々のことを指す。それができる環境さえあれば、世界中のあらゆる場所で仕事や共同作業ができることが強み。
                                                                                                      (2011年3月取材)

コラム

「飲んで、歌って、愛して」の日々を謳歌

 業務の傍ら活動していた、趣味のアカペラバンドの活動も事業と同じく10年を超えるものになったそう。事業を開始したとき幼稚園児だった愛する子ども達も、高校を卒業して独立しつつあるとか。「50歳になっても『飲んで、歌って、愛して』の日々を謳歌しています」と楽しそうに話されていました。
 特に子どもを持つことは、人生に望外の喜びをもたらすそうで、これからの若い女性へのメッセージとしては、「結婚することも、子どもを持つことも、楽しいことで、それは自分の人生の幅が2倍、3倍に大きくなることです。決して足を引っ張ったり、負担になるようなものではないことを伝えたい。できれば、たくさん恋愛をして、子どもも持って欲しいです」とのことでした。

プロフィール

飯塚市出身。YM-net代表。福岡県SOHO事業協同組合理事長。1983(昭和58)年、西南大学文学部卒業後、女性営業職の第一期生としてアパレルメーカーに入社し、1984(昭和59)年に結婚。1988(昭和63)年、退職後(財)九州経済調査協会でパートとして勤務。1991(平成3)年、妊娠を機に退職、専業主婦となり、二児を出産。1998(平成10)年、専業主婦中に出会ったパソコンとインターネットがきっかけで、YM-netを設立。2003(平成15)年、福岡県SOHO事業協同組合を設立し、福岡県SOHOサポートセンターの運営を受託。SOHOに関するセミナーや講演会も数多く行ってきた。現在は、WebやITを活用したコンサルティングやマーケティングなどを個人で幅広く行う傍ら、福岡の特産物の東京での販路開拓などにも取り組んでいる。

 

 


 

 

 


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