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岩城 和代(いわきかずよ)さん   (2011年2月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

岩城法律事務所 弁護士

法律家として、地域に根ざした活動に取り組む

 

高校時代の葛藤、大学時代の危機意識

 現在、弁護士として多方面で活躍している岩城さんだが、高校・大学時代から明確に法律家を志していたわけではなかった。
 高校時代、親や教師は、岩城さんに医学部に進学してほしいと強く思っていた。しかし、個人的には文系に進みたいと思っていたので、自分自身の思いと親や教師の思いとの間での葛藤に苦しんだが、自分が進みたかった文系への進学を決意し、法学部を目指す。最終的には親や教師もその決意を尊重してくれた。「とても悩んだけど、自分の気持ちを大事にして、あの時はいい決断をしたと思っています」。
 大学時代、1、2年生の頃は「大学生ってこんなに楽しいのか」と思えるほど学生生活を謳歌したそうだ。しかし、3年生を前に将来の進路を考えた時に、先輩などの状況などから、女性の職業の選択肢が非常に少ないことを目の当たりにする。それから危機意識を抱くようになったことが、司法試験を志すようになったきっかけだった。

3人しかいなかった女性弁護士

 大学を卒業した年に司法試験に合格し、2年間の研修を受けた後の1972(昭和47)年に弁護士登録。当時、福岡の女性弁護士は3人しかいなかったので、女性に関する問題の相談は岩城さんに来ることが多かった。そういった案件を数多く受けていく中で、次第に女性の問題にも関心を寄せるようになっていった。その当時は、「男女共同参画」という言葉もまだない時代。裁判の判例などにも様々な男女格差があった。例えば、専業主婦が交通事故にあった場合の逸失利益(※)は、働いていないので〔0〕といった判例があった。
 こういった傾向は過去だけのものではなく、例えば、2010(平成22)年に男性の顔の傷の方が女性の顔の傷より労災の障害認定等級が低かった問題が是正されるなど、現在でも男女に関する制度や考え方の是正は続いている。
 また、女性の問題に限らず、自身が育児をしている時代は子育ての問題に関心を寄せ、現在は遺言や相続、成年後見といった高齢者の問題に関心を寄せ、相続へのアウトリーチを積極的に行うなど、 自身のライフステージに沿った形で、法律家としての見識を深めていった。

※逸失利益
交通事故などにおいて損害賠償の対象となる、事故が無ければ本来得られたであろう給与・収入などの利益。統計的予測に基づくものである。

女性の自立、今後の男女共同参画社会

 弁護士として、様々な男女問題にも直面する。例えば、DVの被害を受けるなど社会的に弱い立場におかれている女性は、経済的にも弱い立場であることも多く、被害を受けてもなかなか現状から抜け出せず、そのまま悪循環にも陥ってしまいかねない。また、ドメスティックバイオレンス(以下DV)の問題は、男性が社会で受けているストレスがその遠因になっていることも多い。そのため、女性が経済的に自立していることは、「女性の権利保護や本人の心の平穏、そして男性にとっても(社会的負荷の軽減となって)いいことなのではないかと思います」と話す。
 今後の男女共同参画社会の展望については、「働く働かないなどの選択は本人の自由なので、色々な選択肢があっていいと思います。ただ、働くという選択をした場合、少なくとも男女の『同一価値労働・同一賃金』ということは、制度として確立していってほしいと思っています」とのことだった。
 「誠実な職業を継続して頑張っていれば、理解者が増えていきます。親族だけではなく、他人が支えてくれます。私自身の経験からそう言えますね」。
                                                                                                         (2011年2月取材)

コラム

考え方の軸が育くまれた、子どもの頃の夕食時

 ご妹弟は、姉、兄、姉、ご自身の4人。子どもの頃から4人とも自己主張は強かった。ご両親は双方教師。昼間は働いているため、子どもとの時間をきちんと持とうと考えていたのか、夕食は毎日午後の7時からと決まっており、4人の子どもそれぞれが、10分ずつ話をすることになっていたという。
 その時、親には何でも話せるし、どんな話であってもきちんと耳をかたむけて理解してくれて、親が自分達の意見を押し付けるようなこともなかった。また、長女から順番に話をしていくので、その話を聞いている内に、耳学問で色々なことを学ぶこともできた。中でも、姉が大学で勉強している、『エミール』(※)という本の話には特に影響を受けたそう。姉が何度もそういう話をするので、ある意味「刷り込まれました(笑)」という。
 「こういった環境で育ったことが、自分自身の考え方をきちんと持って、それを述べるような資質を育んでいったのかもしれません」とも話されていました。

※エミール・・・1762年にルソーが著した教育学の古典的名著。冒頭の「万物をつくる者の手をはなれるときすべてはよいものであるが、人間の手にうつるとすべてが悪くなる」という言葉に表れているとおり、自然のままに育てることを重視した子育てを小説形式で説く。

プロフィール

前原市(現:糸島市)出身。弁護士(福岡県弁護士会所属)。九州大学法学部卒業後、1972(昭和47)年、福岡で弁護士登録。女性、高齢者、障がい者、子どもの人権などの問題に関心を持ちながら、主に民事や家事に関する事件に取り組んでいる。講演会や各市町村での男女共同参画に関する条例策定にも数多く携わるなど、法律家の視点から、地域に根ざした様々な活動にも積極的に取り組んでいる。現在は、福岡簡易裁判所民事調停委員、九州大学非常勤講師、福岡県男女共同参画審議会委員、福岡市地域包括支援センター運営協議会会長なども務める。

 

 

 

 


 

 

 

 

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