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ふくおか女性いきいき塾⑩ メディアとジェンダー

ふくおか女性いきいき塾、第10回目の講義は「メディアとジェンダー」。
メディア学者・ジャーナリストで慶応大学SFC研究所 上席所員メディア学者の渡辺真由子さんを講師にお迎えしました。

 私は福岡県内のテレビ局で報道記者・ディレクターとして働いた後、カナダの大学でメディア・リテラシーを研究し、今は男女共同参画とメディアの問題をテーマに活動しています。
 メディア・リテラシーとは「メディアの特質やテクニック、影響を批判的に読み解く能力と、メディアを使って表現する能力」のことです。日本では「批判的」が「主体的」に置きかえられて定義されています。私達は主にメディアから社会の情報を得ており、メディアには「客観報道」、つまり事実に基づいた内容を、主観を排して公正に伝えることが求められています。しかし実際は、各メディアにはイデオロギー(特定の物の考え方・思想)があり、ニュースの選び方や表現に反映されています。例えば、選択的夫婦別姓法案に関する新聞の社説の見出しを比べると、産経は「考えたい子どもへの悪影響」、朝日は「女性を後押しする力に」でした。
 ニュース価値の判断においては、意見や利害の対立、受け手への関わり、予想外の出来事などが優先されがちです。各メディアが自分たちのイデオロギーを反映して、取捨選択と論調決めを行っているのです。「常識」化にも注意しなければなりません。言葉づかいや写真、映像、見出しなどによって、気付かないうちにメディアのイデオロギーが私たちの常識としてすり込まれているかもしれません。例えば、「学歴と出世、お金、結婚」と題した特集からは「人生は学歴で決まる」というメッセージが感じられ、スリムな人がいい役どころとなるドラマやCMを見ると、スリムな体型がいいと思い込むことになります。また、特定の専門家のコメントを引用することで、見解が偏ってしまう恐れもあります。
 

 では、ジェンダーとメディアはどんな関係でしょうか。ジェンダーとは「社会的・文化的な性のありよう」のことで、いわゆる男らしさ・女らしさと言われるものです。メディアが典型的なジェンダーイメージを発信すると、個人のアイデンティティ形成に影響を及ぼします。
 まずは、新聞記事と広告を見てみましょう。山崎直子さんは新聞で「日本人初のママさん宇宙飛行士」と報道されました。男性がパパさん宇宙飛行士と紹介されることはありません。化粧品の広告で「シミ・ムラ・くすみ、光で消える」と表現されると、シミ・ムラ・くすみは消さなければいけないものだと認識してしまいます。また、ある電気の広告で、家計が苦しい主婦が「稼ぎのいい夫か?安い電気か?」と言ったのは、稼ぐのは夫の役目と決めつけているからです。
 新しいメディアであるインターネットでは、相手の性的な画像や動画を、相手の同意なしに公開・拡散するリベンジ・ポルノが社会問題になっています。その背景には、女性は自分の所有物と考える偏ったジェンダー意識があります。リベンジ・ポルノに関しては、被害者が悪いという声も聞かれますが、それは違います。被害者は「相手にだけ」画像や動画を送ったつもりで、それを勝手に公開する加害者が絶対的に悪いのです。
 メディアが偏ったジェンダー表現をすると、受け手はそれを当然・理想と考え、現実の人間関係に当てはめてしまうという問題があります。偏る理由として、作り手側であるメディアの管理職の大半が男性であることがあげられます。「内閣府男女共同参画白書2017年度版」によると、民放では管理職の女性が13.7%、NHKで7.0%、新聞には5.6%しかいないため、男性の視点で表現されるのです。
 メディアに左右されないためには、メディア・リテラシーを身につけることが重要です。いつも情報を一歩引いた目線で眺め、自分をどう動かそうとしているのか、どんな価値観を植えつけようとしているのかなど、「発信者の意図」を考える習慣をつけましょう。

タイトル ふくおか女性いきいき塾⑩ メディアとジェンダー
開催日時 2018年1月20日(土)

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