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ふくおか女性いきいき塾② 子育て・介護と働き方改革

ふくおか女性いきいき塾、第2回目の講義は「働き方改革」。
株式会社西日本新聞社 編集局生活特報部の
河津 由紀子さん
藤崎 眞二さん
のお二人を講師にお迎えしました。

    河津さん「労働問題/子育てと働く環境」

     昨年10月、政府が初めて「過労死等防止対策白書」をまとめました。「過労死等」とは、働きすぎによる脳・心疾患を原因とする「過労死」、過度な労働による精神疾患を原因とする「過労自殺」等を指します。労働基準監督署への労災申請数と認定件数は、年々右肩上がりです。精神科医療を受診する抵抗感が和らぎ、被害者が声を上げるようになったのでしょう。

     一昨年に労災認定された事例をみると、過労死の月平均残業時間は80時間以上が大半でした。一方、過労自殺の残業時間はバラバラで、時間だけでなく仕事内容や量の変化、パワハラ、嫌がらせなどが原因と認められています。

     では、正社員の年間の総労働時間は変化しているのでしょうか。平成27年は2026時間で、「24時間戦えますか」というCMが流行した平成5年の2045時間とほぼ変わっていません。
    過労死の労災認定は、残業が月80時間を超えていたかなどを基準に判断されます。実は、労働基準法では月45時間以上残業させてはいけません。しかし、労使合意があれば事実上残業が無制限になる制度(三六協定)があり、抜け穴として問題視されてきました。現在ようやく、残業の上限を100時間にする方向で議論が進んでいます。

     残業さえなくなればいいわけではありません。EUでは、就業から始業までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」を取り入れています。家のことや睡眠など、人間として暮らす時間をきちんと守ろうという、とてもいい制度だと思います。福岡の企業では岩田屋三越がすでに実施しています。また、転勤など家族の事情で退職した正社員を再び正社員として雇用する制度を設ける企業もあります。

     子どもの貧困対策が求められる中、九州大学の先生が「時間の貧困」に関する研究を発表しました。ひとり親世帯の3割近くは「所得の貧困」に加えて、家事育児や仕事に忙殺される「時間の貧困」にも陥っていることが数値で裏付けされました。ひとり親世帯は、低賃金で長時間労働を余儀なくされています。経済的支援はもちろん、根本にある社会の労働問題を解決していかなければなりません。

     子どもの貧困に詳しい研究者の阿部彩さんは、先進国においては「好景気になり社会が潤っても、貧困層は潤わない」と説いています。残業代ゼロ法案などの規制緩和が続くことで苦しむのは労働者であり、何でも一人で背負わなければならない社会が本当に幸せなのか、というのが個人的な意見です。

      藤崎さん「介護と働く環境」

       私は記者をしながら、鹿児島の父を遠距離介護しています。その経験を西日本新聞に連載中です。父は15年前に妻を亡くし、4年前に認知症との診断を受けましたが、2016年10月までひとり暮らしでした。現在は介護老人保健施設にいます。

       介護というと、20~40代の皆さんには遠い話と感じられるかもしれません。しかし、厚生労働省のデータによると、予備軍も含めて高齢者の4人に1人は認知症です。自分の家族を介護するケースをはじめ、会社の人事担当者として介護する社員を支援したり、介護する同僚をサポートしたりすることもありそうです。そういう意味で、ほとんどの方がいろんな形で介護に関わることになるでしょう。
       わが家の場合、ケアマネジャーさんが中心となり調整をしてくれるおかげで、要介護3の父でもひとり暮らしを続けられたのだと思います。介護保険制度によって、費用負担もずいぶん軽くなっています。

       介護をする当事者になった場合、自分で全て抱え込まず、介護保険制度をしっかり活用して、ケアマネさんや利用施設の職員などチームで解決することが大切です。また、介護を恥ずかしいことと思わない意識改革も必要です。周囲の人は介護している人の状況を理解して、できるだけ協力しましょう。介護は社会で支えるものです。明日はわが身なのですから。

        タイトル「働き方改革」は制度と意識の両輪で進めよう
        開催日時 2017年7月29日(土)

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