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ふくおか女性いきいき塾 ⑦女性のキャリア形成

ふくおか女性いきいき塾、第7回目の講義は「女性のキャリア形成」。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授の永瀬伸子さんを講師にお迎えしました。







 日本では労働力の約4割が女性ですが、管理職になると約1割です。また、仕事と家庭の二者択一が依然としてあり、両立ができるような雇用慣行は十分に形成されていません。
 大企業の正社員を対象に、東京で行った聞き取り調査ですが、総合職未婚女性でも「先行きが見えない」という声がありました。総合職は男性の働き方がモデルのため、子どもを持つ前の段階で、不安に思うことが多いようです。「有配偶無子女性」では、仕事に熱心ではないけれど、専業主婦になるのも不安という声、また、「有配偶有子女性」からは、「1年間会社を休んで復帰した後、今度は子どもが病気になったと保育園から電話がかかってくる。この時の気持ちを男性に味わってほしい」という声がありました。そして、両立社員を支えている独身女性からは、仕事を肩代わりすることへの不満の声もありました。
 これからは女性がキャリアを形成でき、かつ、子どもを持つことができる働き方に改革していかなければなりません。そのために企業はどうすべきかが、今、最も問われていると思います。
 1954年の合計特殊出生率は約2.5人でした。それが1989年には約1.57人となり、1991年に育児休業法が制定されてからも減り続け、2005年には約1.26人と最低となり、現在は約1.4人です。しかし、データで見ると有配偶女性の出産は大きく減っているわけではありません。結婚していないから出産していない、女性の家事・育児負担が大きいため結婚が先送りとなり、結果、少子化が進んでいるということです。
 

     日本の場合、育児期の有配偶女性の労働力率はかなり低いです。2012年の就業構造基本統計調査を見ると、未婚女性の正社員率は約5割ですが、有配偶女性の正社員率は約2割で、パートタイム労働者が大変多くなっています。しかも、パートタイム労働者の場合は、103万円の壁(※脚注)といわれるところでの就業が非常に多く、大きな就業調整が起きています。
     有配偶女性がもっとキャリアを持てないかと、お茶の水女子大学で「日米の共働き女性の仕事と家族」についての調査を行いました。
    日本では、結婚や出産で無職になる人や非正規社員になる人もいますが、アメリカは結婚しても働き方はほとんど変わりません。ここが一つ大きな差になると思います。次に第一子出産では、日本は約6割が仕事を辞めますが、アメリカでは日本ほど大きな変化はありません。フルタイム労働者は減りますが、パートタイム労働者は大体横ばいです。
     職場風土を比較すると、「育児をサポートする雰囲気があるか」という質問に対して、「そう思う」「まあそう思う」という回答がアメリカは約50%、日本は約25%でした。職場で育児をサポートする雰囲気があまりないということが、日本の女性が離職する原因の一つと考えられます。
     次に、離職経験がある有配偶女性の年収においては、年収100万円以下が日本では65%、アメリカでは44%です。また、アメリカは年収600万円以上の層が日本よりずっと多い。
    これらの統計から、日本女性は、配偶者がいると多くの人が離職経験を持つようになり、その人たちの賃金はとても低いということが分かります。出産や結婚時に仕事をやめるというのは、労働経済学で考えると、仕事上のスキルを失うということです。無職期間が長いと復帰するときの賃金が下がり、キャリアアップの機会も減ります。

       また、21世紀職業財団が2013年に行った「育児をしながら働く女性の昇進意欲やモチベーションに関する調査」によると、仕事の意欲を高める要因として、上司の仕事の与え方や評価の仕方、職場の風土などが大変重要であることが分かりました。さらに、育児休業復帰時に適切な目標を与えられ、上司から建設的なフィードバックがあった人は、その後、昇進意欲や仕事に対するモチベーションが高まることも分かりました。
       2010年の育児短時間勤務制度の導入後、第一子出産後の女性の就業率は増加していますが、育児をしながら働き続けることができるような雇用慣行はまだ確立されていません。これからは、長時間労働ではない働き方でキャリアアップができる環境が求められます。男性以上に予想外の変化が起きる女性にとっては、企業を超えるスキル形成という視点も必要です。育児短時間勤務制度を利用する人が増えれば不満の声も高まります。対策としては、仕事の分担や評価のあり方を見直すこと。また、男性が育児分担をすることで、育児をしながら働くことを女性だけの問題ととらえるのではなく、雇用慣行そのものを変えていくということが重要だと思います。

      ※脚注
      配偶者の年収が103万円以下であれば、配偶者本人は所得税を課税されない上、働く夫(妻)の税負担も軽くなる「配偶者控除」という制度があり、女性が働く時間を抑える「壁」になっている

        タイトルふくおか女性いきいき塾 ⑦女性のキャリア形成
        開催日時 2015年11月14日(土)

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