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ふくおか女性いきいき塾(11/2開催分)

 ふくおか女性いきいき塾8回目の講義は、「女性労働」をテーマに、宮崎公立大学学長の林弘子さんに御登壇いただきました。林さんは、昨年まで28年にわたり福岡大学法学部で教鞭を執り、また、日本で最初のセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)事件で弁護団の依頼で鑑定意見書を提出され、日本におけるセクシュアル・ハラスメントの法理の確立に貢献されました。10年前から弁護士としても活動しておられます。働く女性を取り巻く現状と労働に関する法律について、様々なデータをもとにお話しいただきました。
 1947年に制定された労働基準法では、労働条件について「国籍、信条又は社会的身分」による差別を禁止しています。しかし、「性別」による差別で禁じられているのは賃金のみで、長い間、雇用における男女格差が続いてきました。1985年にようやく、国連の女子差別撤廃条約に批准するため、「男女雇用機会均等法」が制定され、雇用における男女差別が禁止されたのです。しかし、まだ昇進・昇格、所得などについて、男女の格差は大きいということです。
 1991年に育児休業法(現在は、育児・介護休業法)が制定されましたが、働く女性の約6割が第一子出産を機に退職しており、この30年間、その割合は続いています。大学や大学院に進学する女性が非常に増え、高学歴化してきた今も変わりません。学歴も上がって、経済状態もそれなりによくなって、生活水準も上がってきたのに、なぜ、第一子出産後に退職する女性の比率が低下しないのかが問題であると示唆されました。
 また、雇用形態による差別も深刻です。男女雇用機会均等法制定当時、女性労働者の7割は正規労働者でしたが、現在、正規労働者の割合は5割弱に低下しています。一方、男性の正規労働者の割合は、男性労働者の8割を占めており、所定内給与の男女格差は、女性は、男性の6割から7割に留まっています。2008年にパート労働法が改正され、労働時間が短いことのみを理由とした雇用形態差別が禁じられ、パートタイム労働の問題は、性差別ではなく雇用形態差別として扱われるようになったそうです。そのため、女性が圧倒的多数を占めるパートタイム労働者と男性が多数を占める正規労働者の格差は、女性への間接差別ではないか、と思われますが、裁判で争うことは現行法制では難しいと述べられました。
 労働に関する紛争では、ここ3カ年で「解雇」を理由とした紛争が減り、一方、「いじめ・嫌がらせ」が増加しています。中でもマタニティ・ハラスメント(マタハラ)といわれる妊娠した女性労働者への嫌がらせが増えてきているようです。社会的合理性のない解雇は権利の濫用で無効、妊娠中や産後一年間の解雇は無効となるため、間接的にプレッシャーを与えて退職に追い込もうとしているのではないかと語られました。
性差の解消や拡大につながる制度、法律の役割についても述べられ、税制の面では第3号被保険者制度という専業主婦優遇制度で共働きが不利になる制度がある一方、雇用政策では男女雇用機会均等法や育児休業法で共働きを推進するなど、日本では、男女平等政策がそれぞれベクトルを異にしていることが問題であることが示されました。
 終わりに、「最近は、家庭生活における個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた条文である憲法第24条改正の動きもあり、国民である私たちが主体的に法律や世の中の動きについて学び考え、注意を払い、選択していってほしい」と熱いメッセージを送られました。塾生達は、法を身近に感じ、女性の労働慣用と法がいかにつながっているのか実感できたようで「女性が社会で活躍できる政策ばかりに気を取られていたが、今の日本を形成している法律がどれほど大きな影を落としているかを見極めないといけないと思いました」などの感想がありました。

    タイトル講義⑧「女性労働」
    開催日時 2013年11月2日(土)

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