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中村 芳子(なかむらよしこ)さん

【ロールモデル】
ロールモデルとは

NPO法人 劇団道化 副理事長

与えられた環境に感謝し、どうすればお役に立てるかを考えてきた

 

九州演劇界初!『O夫人児童青少年演劇賞』を受賞

 2011(平成23)年2月、九州の演劇界にうれしいニュースが駆け抜けた。大宰府を拠点に息の長い演劇活動を続けるNPO法人「劇団道化」の副理事長、中村芳子さんが『O夫人児童青少年演劇賞』を受賞。九州の演劇関係者では初の受賞となる快挙だった。
 「たいへん光栄でありがたいこと。私個人ではなく、劇団全員でいただけたものと思い感謝します」と静かに喜びを語る。同賞は、社団法人日本児童演劇協会が匿名女性の寄付を受けて創設し、児童青少年演劇の創造や普及に貢献した女性に贈られる賞で、過去には女優の岸田今日子さんや劇作家の如月小春さんらが名を連ねる。
 今回の受賞は、中村さんが劇作家として書いてきた脚本や国内外の公演プロデュースが評価されたものだが、自身が劇団道化へ入団したのは36歳のとき。佐賀県多久市の子ども劇場で事務局で働いていた際に、道化の現理事長の篠崎省吾氏(当時制作部)と劇団所属女優と出会ったのがきっかけだった。
 「こんな若い男性と女優さんが営業に来るなんて…私がそうした業務をお手伝いできれば、あの人たちはお芝居に集中できるはず」。気づけば、入団希望の受話器を握っていた。

劇団を支え、演劇プロデューサーとして腕を奮う

 「父が無類の演劇好き。夜になると芝居友だちが集まって酒盛りとなり、即興のロシア演劇を始めることが日常茶飯事でした」。演劇を身近に感じながら育った中村さんだが、演劇をすると身を持ち崩すとの教訓を得て、進学を選択。だが、演劇との縁は途切れることはなかった。
 保育士として乳児院で働いた後、多久市の子ども劇場へ就職。そして1990(平成2)年、劇団道化へ入団後は、事務や渉外など屋台骨を支える仕事を引き受ける。「いつも、何をすれば劇団の役に立てるのかを考えていました」。当時、公演スケジュールは満杯状態なのに台所は火の車。「このままでは危ない」劇団の存続を危惧し、給与体系をはじめさまざまな改革に着手。そして、2006(平成18)年にはNPO法人化を果たして副理事長に就任する。
 また、中村さんの演劇プロデュース力が発揮されたのが中国公演だった。2004(平成15)年に上海児童芸術劇院に招聘され、役者は日本人、弁士は中国人という日中合作演劇でグランプリを受賞。芝居の斬新さ、質の高さが評価され、翌年の劇院とのコラボ公演や中国初の幼稚園巡回公演につながることとなった。

劇作家の顔が加わる

 劇団運営や公演プロデュースなど、多忙な毎日の中村さんに転機が訪れたのは1995(平成7)年のこと。劇団では創立30周年公演の脚本を前年の11月から公募したものの年が明けても応募はゼロ。理事長から「3日間で何か書いて」と言われ、初めて書いたのが『ピアニャン』だった。ピアノを弾くネコが飼い主の転勤で東京へ引越し、野良ネコになって苦労するというお話。締め切り時には全国から70本の脚本が集まったが、2度にわたる選考会を経て記念公演脚本に選ばれた。「初めての経験でしたが、書くことがおもしろくなりました」と微笑む。以後、13本の脚本を書き上げ、劇作家の顔が加わることになった。
 現在、鹿児島県徳之島町とのタイアップ演劇『とんとんとんのこもりうた』の奄美諸島公演を終えて、ほっとひと息…。同劇は絵本作家いもとようこ氏の同タイトルの絵本を基に、国の特別天然記念物アマミノクロウサギの子育てを題材に書き上げた作品だが、20代で離婚し、2人の子どもを育ててきた中村さんの実体験が重なる。
 「難しいテーマの押し付けは作家の思い込み。泣いて笑って、明日の元気になる芝居をお届けしたいですね」。気負いのないその言葉に演劇の魅力を見た。
(2011年3月取材)

コラム

演劇がくれた奇跡の再会

 親と暮らせない2歳未満の子どもを預かる施設で働いたことがあります。2歳の誕生日前にはそれぞれ養護施設や里親へ引き取られ、2度と会うことはありません。ところが、あるお寺で公演をしたとき、私が担当した子どもを見かけました。声をかけることはできませんし、抱きしめることも許されません。でも、再会は演劇が私にくれた奇跡。驚きと感謝を覚えました。

プロフィール

1978(昭和53)年、東京女子大学文理学部を中退し、1984(昭和59)年に下関女子短期大学保育科へ入学。1986(昭和61)年に卒業し、佐賀県立乳児院「みどり園」臨時職員に就く。1988(昭和63)年、多久子ども劇場事務局入局。1990(平成2)年に劇団道化へ入団。1996(平成8)年に劇作「ピアニャン」を書き上げ、劇作家としてデビューする。
1998(平成10)年には演出家・熊井宏之氏との共作「にわか師三代」で第35回「斎田喬戯曲賞」を受賞。1999(平成11)年「ボタ山に咲くムクゲたち」韓国公演をプロデュース。2005(平成17)年に中国上海にて初の幼稚園巡回公演実現させ、2008(平成20)年「吉林食堂」を劇作(共作:篠崎省吾)。2010(平成22)年に「あまみの黒うさぎ~とんとんとんのこもりうた~」を劇作し、プロデュースも。2011(平成23)年には「あまみの黒うさぎ~とんとんとんのこもりうた~」徳之島、奄美大島等公演をプロデュースする。O夫人児童青少年演劇賞受賞

 

 

 

 


 

 

 

 

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