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濱村 美和(はまむらみわ)さん   (2012年8月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

株式会社不動産中央情報センター 代表取締役社長

勇気を持って一歩踏み出すと扉は開く

 県内有数の取引実績を誇る株式会社不動産中央情報センター。その代表取締役社長を務めるのが濱村美和さんだ。公務員だった父親が一代で築き上げた会社を継いだ形だ。穏やかな笑顔が印象的な濱村さんだが、男社会といわれる不動産業界において、娘が後継者となり、業績を伸ばすには人並みならぬ努力と苦労があったことは想像に難くない。「人財は宝」と語る濱村さんは、男女とも個性を活かせる、働きやすい職場環境をつくるために様々な改革をしてきた。それはまた業績アップにもつながっているという。そうした取組が評価され、福岡県男女共同参画表彰企業賞をはじめ、北九州市の男女協働実践企業表彰奨励賞、ワーク・ライフ・バランス奨励賞など多数受賞、男女共同参画を推進する企業のロールモデルにもなっている。

阪神淡路大震災が大きな人生の転機に

 創業した会社を経営する父親の後姿を見て育ったものの、「兄が継ぐものだと思っていて」と、気楽に学生生活をエンジョイしていた濱村さん。
 1995年(平成7年)に発生した阪神・淡路大震災に衝撃を受け、何かに突き動かされるように、ボランティアとして現地に向かった。引っ越しや炊き出しを手伝いながら、「それまで学歴社会を信じていたけれど、どれだけ人を思いやれるか、人としてのたくましさがどれだけ大事かを学びました」。自分の世界の狭さを痛感。視野を広げようと海外へ目を向けるようになった。
  まずはNGOの勉強会などに参加し、アジアの女性と子どもについて勉強した。実際に体験してみたいとタイに行き、ボランティアとして各地で活動。そこで子どもたちに日本について聞かれ答える中、「学生の世界しか知らない自分が、日本について伝えていいのだろうか」と思い、徐々に違和感を覚えるように。社会経験を積もうと、帰国して就職活動をするつもりだったが、「人手が足りない」と父親の会社からアルバイトの打診があり、2ヵ月の契約で働き始めた。

アルバイトから社員を経て、経営者の道へ

 そこで任されたのは本来の不動産事業ではなく、会社が後援していたイベントのスポンサー探しや運営だった。正式に入社した後には、中国での事業展開のため、上海の事務所へ配属。そこで見かけたのは、女性の駅員がはつらつと働く姿だった。「自分が、これは男性の職業だと思っているのは、実は固定概念かもしれないと考えるようになりました」。
 会社が経営する住宅型有料老人ホームで、ケア付共同住宅として全国初のISO14001取得の責任者としても尽力、無事取得して、別の業界への就職活動を始めようとしていた矢先、父親が急逝。兄姉の中で、唯一会社で働いていた濱村さんは会社を継ぐ意思を固めた。
 

定着率が低い職場から、生き生きと働ける職場への転換

 一代で会社を築き上げた父親は、「高齢の方の役に立つ事業をしたい」 「業界全体のレベルアップをしたい」という熱い思いで、住宅型有料老人ホームや他社向けの賃貸管理実務研修や、全国不動産業成功事例交流シンポジウムなど、通常の不動産事業以外の事業を次々と展開していた。まずは、本業特化と事業を整理し、厳しい経営が続く中、「長く働ける環境づくり」に取り組んだ。人事部門にいた頃、業績重視のハードな労働環境のため従業員の定着率が低く、一緒に働いていた仲間が次々と辞めていく状況を目の当たりにした。「せっかく、縁あってこの会社に入ってくれたのに。長く働ける環境をつくり、人財を大事に育てたい」という思いが強くなっていったという。人事評価・制度を見直し、1週間連続のリフレッシュ休暇、家族の記念日に取得できるアニバーサリー休暇などを、次々と導入した。また、女性活性化推進プロジェクト「ひまわりA10」を女性社員10人で立ち上げた。住居に関することは女性がイニシアチブをとる傾向があるのに、社内でさまざまな決定を行う会議では、男性社員の比率が高い。組織としても大きな機会損失ととらえ、女性が長く働ける職場にするための研究や提案、女性の感性を商品やサービスに活かすこと、女性の管理職を増やすこと、これら3つの目的のため、さらなる成果をあげようと、現在もプロジェクトは進行中だ。
 こうした取組が実を結び、女性社員の結婚・出産後の職場復帰も増えた。男性が多い不動産業界では珍しく、男女比はほぼ1対1、管理職に占める女性の割合も2割を超え、順調に業績を伸ばしている。経営の危機を乗り越え、「地域活性化」 「業界の質的向上への貢献」という設立当初からの経営理念のもと、様々な事業を展開している濱村さん。父親の志はその娘へと見事に継承されている。

 

チャンスを逃さず、自分の世界を広げよう

 昔と比べ、女性が活躍する制度と風土が整ってきているはずなのに、機会が与えられても挑戦する女性はまだまだ少ないと感じるという濱村さん。
 「神戸のボランティアに一人で出発するとき、本当に怖かった。しかし、勇気を出して踏み出したからこそ今の自分がある。目の前にもしチャンスがあらわれたら勇気を持って、しっかり自分の手でつかんでほしい。責任を引き受けるからこそ、新たな人との出会いや情報も得られ人生が変わります。ほんのちょっとの勇気が人生を変えるのです」と多くの女性にエールを送る。

                                                                                                         (2012年8月取材)

コラム

 一番のストレス発散は異業種交流会。知らない世界を垣間見る出会いや会話を楽しんでいらっしゃいます。仕事で知り合いになった全国の友達と待ち合わせて、または一人でぶらりと旅に出てリフレッシュ。国内外ともに知らないところ、特に地方に行くのが大好きとのこと。喫茶店巡りもお好きで、「おばあちゃんになったら、人がふらっと入ってきて一息つけるような、昔ながらのコテコテの喫茶店をやりたい」という、意外な夢をもつ。

プロフィール

北九州市生まれ。1997年(平成9年)、株式会社不動産中央情報センター入社。2007年(平成19年)、同社代表取締役社長に就任。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事、レディース委員会副委員長及び九州支部委員長をはじめ、業界の公職にも数多く就任。また、北九州市新成長戦略会議構成員、西日本工業大学客員教授として、次世代への貢献も行っている。2010年、第9回福岡県男女共同参画表彰(企業賞)受賞。2013年、経済産業省第1回「おもてなし経営企業選」に選出。

 

 

 

 


 

 

 

 

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