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第6回 ワーク・ライフ・バランスって、もうかりまっか? 

あすばるゼミナール (男女共同参画に関して専門家の先生から分かりやすく解説していただきます。)

瀬地山角先生写真  

 

     講師 瀬地山 角 さん

 

      (東京大学大学院 教授)

 

                   瀬地山角さんホームページ

第6回 ワーク・ライフ・バランスって、もうかりまっか? 

 

 前回は「社会的責任」という側面から、ワーク・ライフ・バランスを考えたので、今回はもっと働く人や企業にとって、どういうメリットがあるかを考えてみよう。

 まずは労働時間の把握から。このリンクを見てほしい。OECDのファミリーデータベースを使って、各国の労働時間の分布を表にしたものである。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3132.html

 

  日本と韓国で労働時間が著しく長い一方で、オランダ、スウェーデン、ドイツなどでは週45時間以上働く人がほとんどいない。週の労働時間45~49時間といえば、平日平均1~2時間の残業なので、日本の中年男性サラリーマンなら、そもそも残業のうちに入らないような労働時間かもしれないが、そんな人すらほとんどおらず、49時間以上を合算しても、日本では男性の4割に達するのに、これらの国では1割前後しかいない。

 「でも日本は世界に冠たる商品を作る国なので、こうした残業はいたしかたないのだ」という人には、次の表をお見せしよう。スクロールして図1をご覧いただきたい。これは労働者一人あたりの生産性を、日本生産性本部が比較調査して表にしたものである。

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 日本の労働者一人あたりの生産性は、先進7カ国で最低。先ほど例に挙げた、ほとんど残業をしないオランダ、スウェーデン、ドイツなどより顕著に低い。結論からいうと無駄な仕事をしているということになる。しかもこれは「労働者一人あたりの生産性」なので、これを時間あたりで計算すれば、労働時間の長い日本はさらに低くなるはずだ。

 「上司が残っているので早く帰れない」「無駄な時間の過ぎる会議を夕方から始める」といった意味のない労働慣行が生産性を落としているということになる。

 だから労働者の時間あたりの生産性を上げるためにも、ワーク・ライフ・バランスの発想は不可欠で、短時間に集中して効率のよい働き方をすることは、企業にもメリットになる。働く人にとって楽なだけでなく、会社も儲かるのだ。そうした姿勢を後押しするためにも、残業代の上乗せ比率を上げていくことが不可欠だ。2010年4月より週60時間を越える部分について、従来の25%から50%に加算率が引き上げられたが、要は「既存の社員に長い時間働かせ続けるより、もうひとり雇った方が安上がり」という仕組み作りが不可欠なのだ。

 そしてその前提として、「サービス残業」のような違法行為をなくすのは当然だが、まず職場(一つの課なら課)で「誰が何時間残業しているか」を課員みんなで把握することが必要だ。特定の人に偏っている場合は、①単純に仕事量が多すぎるか、②優秀で仕事を集めてしまうか、③逆に能力が低くて処理が遅いか、のいずれかしかなく、課内で共有して、平準化していく必要がある。その際、その課にひと月なり一週間なりで残業できる全体の時間数を固定化すれば、人件費の抑制につながる。

 この国では今、失業と非正規労働に苦しむ人たちが増える一方で、正社員がいっそうの長時間労働に苦しむ、矛盾した状況が起きている。ワーク・ライフ・バランスはそれを企業の利益を保ちながら解決する鍵なのだ。

 

                     

                                                         

                           

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