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第9回 DV環境と子ども―連れ去りとハーグ条約―            

あすばるゼミナール (男女共同参画に関して専門家の先生から分かりやすく解説していただきます。)

 

 

     講師 篠崎 正美 さん

 

      (財団法人アジア女性交流・研究フォーラム 主席研究員)

 

                   篠崎正美さんご紹介ページ(KFAWホームページ)

第9回 DV環境と子ども―連れ去りとハーグ条約―            

   

 

 DV環境の下で過ごしてきた子どもで、マイナスの影響を受けない子どもはいないと思う。熊本の女性医師が学ばれたハーバード大学医学部での脳科学的な研究で、それらの脳への影響が解明されつつあるという。ハートの問題は実は脳のダメージ問題だとこの女性医師は強調されている。明らかにそれもありだな・・と思い返すお子さんもいる。大変なことだ。DV環境においても児童虐待においても。

 

 10年間のシェルター運営の中でおよそ110人の女性と、それを少し上回る数のお子さんをお預かりした。大きな数とは言えないが、限られたスタッフで可能な限りだった。入居が決まるまではシェルターとは別の場所で事情をお聞きした(インテーク)。初めの1,2時間、特に小学生くらいまでの子どもは、お母さんのことが気になって気になって、周りを離れられない。その状態からも、お母さんが抱えていて必ずしも気付いていない問題がだんだん見えてくる。お母さんの問題解決にとって、これらは決して無視できない。

 

 今年、年賀状の中に<格別>に嬉しい1通があった。シェルターから自立していかれたAさんから、息子二人との素敵な家族写真。ここ数年、家族の写真を送ってくださるのだ。長男が今年は高校卒業で、正社員の仕事が無事決まったとのお便り。Aさんの喜びがひしひしと伝わってくる。身の危険を感じて二人の息子を遠い他県に置いたまま逃げてしまったAさんだった。2年後、子どもたちから「お母さん、助けて!」のSOSの手紙。8年前のことだ。父親に見つからぬよう連れてきたい、との訴えに、「もしかして誘拐罪と幇助罪に問われるのでは?」と心配がよぎった。幸いその葉書が児童虐待の証拠になるんだと気付き、児童相談所と警察に学校への協力を依頼し、連れ戻し作戦を練った。

 

 DVの環境下に子どもを置くことが児童虐待になるということが痛いようにわかるほど、子どもたちはそれぞれに傷ついていた。兄弟仲が悪く、それはお母さんにとってとてもつらいことだった。サポーターの学生たちと遊んでもらったり、おいしいものを食べに行ったり、ゲームでやトランプでふざけたり盛り上がったり、普通に楽しく過ごそう、とお母さんと話し合い、努めてきた。お母さんは資格を生かして仕事に就き、離婚も成立。同居の祖父母からは丁寧にサポートしていただき、その力はとても大きかった。子どもたちは、傷つけられた期間と同じくらいの時間をかけて、この写真の笑顔になれたのだ。Aさんはサポーターの養成講座にも話しに行きますよ、と今では、すっかり自信を持って暮らしている。もう、「被害者」ではなく「自分の暮らしの主人公」なのだ。

 

 年賀状からそんな「連れ去り」のことを考えている最中、日本がハーグ条約の批准へ向かっているとのニュースが大きく報道されてきた。国際結婚が破たんした場合の子どもの扱いを決めたハーグ条約に日本はまだ加盟していない。国際結婚の夫婦が離婚や不和などで、片方が無断で子どもを国外に連れ去り、奪い合うことになった場合、原則として子どもを元の居住国に戻してどちらが養育するかを決めるというのがこの条約。日本は加盟していないので、現在200以上も、日本政府への連れ戻し要求があるという。では、加盟すればいいではないかと思いがちだが単純にはいかない。国際結婚における破綻にもDVが絡んでいることが多いからだ。国内法的に、日本の女性(あるいは男性)の親としての権利を保護すると同時に、「子どもの意思や権利、子どもの心身への影響」を十分配慮できる国内法の整備を同時に行う必要がある。

 

 

                             

 

                                 

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