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講師 篠崎 正美 さん
(財団法人アジア女性交流・研究フォーラム 主席研究員) |
昨年の6月末、BPWという団体の世界大会出席のためフィンランドのヘルシンキを訪問した。
行程外だったが、「シェルターを訪問しよう!」と思い立った。コングレス事務局のスタッフにコンタクトを取って欲しいと頼む。
「しぇるたー?核シェルターのこと?」
「いえ、DV被害者を保護するためのシェルターです」。
「フィンランドでは男女平等が進んでいるから、そんなのないんじゃない?」。
「あると聞いています。市役所に聞けばわかるかもしれないので、聞いてくださいませんか?」と粘る。
「調べてみるので5時にここに必ず来て」とのこと。午後から冷たい雨が降り出した。
5時、約束の場所にいくと「待ってたよ!」と例の彼女が手を振ってくれる。アドレスを渡され、タクシーをつかまえてフィンランド語で行く先を伝えてくれる。(えーっ、フィンランド語なの?)とやや不安に。先方には連絡済だそうだ。車に乗ること30分近く。
高級住宅地域らしい一角で車は止まる。地下1階、地上3階建ての白い建物。門は開けて
ある。庭を進んでブザーを押すと、すぐに若い女性がドアを開けてくれた。間違いない、
ここがシェルターだった。
建物の中を案内してもらう。英語でOKだ。10組の被害者が入れる鍵つきの個室。現在、父子も1組入っているという。「男性も入れるんですか?」と驚いて聞くと、「被害者だったら当然」。どんな被害かと聞くと、パートナーが精神的に問題を抱えていたり、アルコール依存で夫や子どもをアビューズする場合が多いとのことだ。ただ、男性が入れるシェルーターはやはり例外で、ヨーロッパの中でも珍しいのではないかと、クライシスワーカーだと名乗るハンナさんは言う。利用期間は平均2ヶ月くらい。シェルターは市の建物で、民間の団体が運営を委託され、経費は全て公費だ。このあたりが日本と違う。
個室、談話室、カウンセリングルーム、台所(食事は原則全て提供される)、食堂、アイロン室、洗濯室、子どものプレイルーム、会議室複数、スタッフルーム、事務室等々。
各所に防犯カメラが置かれていて、コントロールルームでは、いくつもの監視カメラ映像が映っている。開放的に見えるが、監視は怠りないというわけだ。かなり広い庭には、大きな樹木、畑、花園、砂場やブランコなどの固定遊具もある。スタッフは、ソーシアルワーカー(男性も含まれている)、クライシスワーカー、子どものためのカウンセラー、調理人が常駐。
スタッフは生活面で被害者を支援する。クライシスワーカーは臨床心理士である場合が多く、乳幼児や子どものための心のケアが主な仕事。ソーシアルワーカーは、社会保障資源へのアクセスを公的機関と一緒に調整する。被害者がシェルターにきたら、翌日、公的機関のソーシアルワーカーに連絡するし、子連れの場合は児童福祉機関にも連絡する。
しかし疑問も持つ。フィンランドはジェンダー格差指数(GGI)が3位(日本98位)。大統領も大蔵大臣も女性。男女平等が進んだ国である。PISA(*)などが示すように教育レベルが高いのも有名だ。福岡県とほぼ同じ人口のこの国、これだけ平等が達成されている社会でのDVシェルターの多さが何故なのか。アルコール依存、外国特に途上国からのパートナー問題、女性の人権侵害への意識の高さ、まだまだある男女の経済格差...。考えさせられる。
*PISA(Programme for International Student Assessment):
OECD(経済協力開発機構)が進めている国際的な学習到達度に関する調査