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【フォーラム2016】基調講演

 

女性の今、共に生きる社会に向けて

講師  坂東 眞理子(ばんどう まりこ)さん

昭和女子大学理事長・総長、元内閣府男女共同参画局長、「女性の品格」著者
 

大ベストセラー「女性の品格」の著者で、内閣府男女共同参画局長も務められた坂東眞理子さんをお迎えし、男女共同参画の 歩みやこれから目指すべき社会についてお話しいただきました。

20世紀型から21世紀型の社会へ

 

 私は30年間以上、公務員をしてきて、節目で男女共同参画や女性施策に関わってきました。1975年は国際婦人年。私はそれまで「男は仕事、女は家庭」とい う性別役割分担意識は世界中で当たり前だと思っていたのですが、それが当たり前ではなく、社会が私たちの心に刷り込んだ考え方なのだと気付きました。1979年には女子差別撤廃条約が国連総会で採択され、1985年に日本で男女雇用機会均等法が、1991年には育児休業法が成立。2015年8月には女性活躍推進法ができました。働く女性が単に子どもを産み勤続できるようにするだけでなく、勤続した女性が能力を発揮できるようにしよう、女性リーダーを増やそうという、女性活躍の新しい時代に入ったと思っております。
 女性が社会で活躍するためには、今までの働き方や評価基準を見直さなければなりません。何よりも男性の働き方を変えなければ、過労死やうつ病、自殺がまかり通るような職場では日本の社会も経済ももちません。今こそラストチャ ンスとして、20世紀型の社会から21世紀型の新しい社会の仕組みを作らなければならない時期にきています。

 

家庭で育む男女共同参画の能力

 

 世界を見渡しても、予測がつかない時代になりました。ただし、一人ひとりが能力を十分に発揮できる社会を作ろうという大きな流れは変わらないと思います。その中で、私たちはどうすればいいか。世の中の流れや社会、制度が私たちの考え方に影響しているのと同様に、いえそれ以上に、私たちが制度や社会を作る、まわりの人の考え方を変えるという側面を大事にしていなければいけません。私たち一人ひとりが足を地につけ、一歩一歩前に進んでいくための力を持ち、影響力のある立派な人間、人を支えることのできる人間にならなければならないと思っています。
 それでは、私たちはどのように考え行動すべきでしょうか。私は、男女共同参画の能力は家庭で育まれると考えています。この豊かな社会で子どもを強く育てることは難しいのですが、女の子も男の子もいろんな困難を経験して、それに打ち勝っていくことが必要だと思います。私は今、教育の場におりますので、保護者の方々には男の子にも生活能力を、女の子にも経済力をとお願いしています。男の子も女の子も職業的な能力をつけるとともに、家事ができる能力を子どもの頃から家庭の中で養っておかなければならないと思っております。

 

コミュニケーション能力を鍛える

 

 女性が女性であることのアドバンテージを磨き上げることも大事です。例えば、オシャレができる、コミュニケーションや人付き合いがうまいなど、女性の方が得意なことはこれからの社会でとても大事な能力です。また、お金を上手に使う能力も大事。まともな働き方をしている企業を消費者が応援すれば、そういう企業が増えていくのです。
 長い間、女性は言いたいことを言わないのが女性らしいと教えられ、受け身の人が多いようです。言いたいことを言う訓練を受けていなかった人が急に何かを言おうとすると、相手を説得する前に自分の感情が先に立ってしまい、コミュニケーションが成立しなくなります。自分の考えていることを冷静に相手に伝えるためにはトレーニングが必要です。さらに、相手の言い分や状況を理解するために、聞く耳ももたなければなりません。コミュニケーションは双方向なのです。相手のことを思い発している言葉は、相手の心に届きます。いろいろな方とつながり協力していくためには、相手の立場を理解することも必要であり、このことでコミュニケーションが成立します。その際、まずは自分から働きかけることが大事です。

 

一人ひとりが能力を発揮するために

 

 職場では今、働き方改革と並んで、ダイバーシティの推進が必要とされています女性のみならず障害のある人、お年寄り、外国の人、育児や介護の責任を持っている人など、いろんな条件を持っている人が差別されることなく、自分たちの能力を十分発揮できるような環境を整えようとしていますそのとき、女性の管理職が増えたら、会社が働きやすくなり業績が向上するとよく言われますが、必ずしもそうとは限りません。女性の中にもいろいろな能力や適性を持っている人がおり、一人ひとりの可能性を引き出すためには機会を与えるだけでなく、鍛えることも必要です。また、働く人自身が選べるよう、いろいろな選択肢を提供することが必要ではないでしょうか。先日お話しした中小企業の経営者の方は、夏休みの時間短縮や孫育て時短、介護時短などを提供することによって、社員が会社を誇りに思い、人の定着率も生産性も上がったとおっしゃっていました。自分がいいと思うことを押し付けるのではなく、相手が必要としているものを選べるように選択肢をたくさん提供することが、これからの職場のあらまほしき姿だと思います。団体でも人と人との関係の中でも、それぞれの都合に合わせて選択できて、みんな違っているけども共通の目標のためには協力することができる、そういう柔らかい連帯がお互いを支えていくのだと思います。

自立から協力・共生へ

 

 女性たちは、まず自分の頭で考え選択し、選択に責任を持つという心の自立をしなければなりません。それから、自分で自分の暮らしを支える収入を得るこも大切です。男性も女性も子どものときから準備をして、経済力と生活能力の両方を身に付け、自立する人間にならなければなりません。では、何のために自立するのか。もちろん自分の足で生きていくために不可欠な力ですが、自立だけを人生の目標とすると、ちょっとさみしいな、もったいないなと思いませんか。せっかく生まれてきて、いろんなめぐりあわせで自分が存在している以上、自分がいることによって世の中が少しでもよくなる、自分の働きかけによって一人でも困っている人が助かる、自殺しようと思うくらい疲弊していた人の見方を変えるというように、人を支えることによって、自分だけでなしに社会や国や地球がよくなるというところにつなぐのが、これからの男女共同参画が目指す方向ではないかと私は考えております。男性も女性も、自分がまわりの役に立った、いいことをしたという手ごたえを少しでも感じられる生き方、それを私は自立の次の目標として掲げたいと思います。

 今まで私たちは一人ひとりが尊厳のある存在として自分で生きていく力を身に付けようとしてきました。でもそれを究極のゴールとせず、それを基にまわりとつながり協力して社会を盛り上げていきましょう。あすばる20周年、そのような次のステージを心から期待しております。



 

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