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【田川市元気塾】レポートVol.2「木藤亮太講演会~応援の連鎖がまちを変える~」

9月10日(日)に、田川元気塾『"ないものねだり”ではなく、"あるもの活かし”後藤寺まちづくり』の第2回講座「木藤亮太講演会~応援の連鎖がまちを変える~」が開催されました。

天気の良い日曜の昼間にもかかわらず、田川市長や商店街の理事長、住民の方だけでなく、近隣の市町村、行政の方など約150名の方が参加され、男性の方の参加率も多い公開講座でした。

地域再生請負人 木藤亮太
 
講師の木藤亮太さんは、宮崎県日南市が実施した全国公募で、2017年7月より日南市へ移住。テナントミックスサポーターとして、シャッター街だった油津商店街の再生事業に取り組まれ、約4年の任期中に29の新規出店やIT企業誘致を実現されています。「2016年はばたく商店街30選」(経済産業省)を受賞され、経済誌「Forbes JAPAN」で「日本のローカルイノベーター55選」の一人に選ばれるなど、各方面で注目を浴びています。現在は、株式会社油津応援団の専務取締役、この4月からは出身の那珂川町で「事業間連携専門官」としても活躍されています。

実は「あすばる」でも大注目の木藤さん、今年リニューアルしたあすばる情報誌「あすばる~ん」の「あすばるランナー」の第1号として表紙を飾っています。また、この「女性による元気な地域づくり応援講座事業」の実行委員会を募集する際に、事前説明会&勉強会で「地域課題の捉え方」というテーマでお話しいただきました。(NHK福岡の取材を受け、「ロクいち!福岡で紹介されました)

それに参加された「ないある後藤寺実行委員会」の花石さんと今村さんが、その翌日に木藤さんにアプローチされ、今回「ないある後藤寺まちづくり」の全講座のアドバイザーとして関わっていただくことになったそうです。

今回は、日南市油津商店街の再生で、もともと行政がしかけた事業が、市民の動き、市民がまちを応援するという動きが少しずつふくらんでいて、今の形ができあがっている、というお話しをされました。
90万の男

ないある後藤寺まちづくり九州の南の端っこに位置する日南市は福岡から車で4時間半くらいかかるところです。油津は港町で、カツオ漁で栄えていた50年前には商店街にも活気がありましたが、4年前に訪れたときは人通りはほとんどなく、シャッターもしまっていて、形容詞的には「猫すら歩かない」商店街だと言われていました。

日南市の人口は5万人ちょっとで、田川市とほぼ一緒。田川市もかつては炭鉱で10万人くらいありましたが、それから減っていて、その推移も日南市と似ています。

テナントミックスサポートマネージャーの仕事は、日南市に住みながら油津商店街に4年で20店舗を誘致するというミッションがあり、また、委託料が月90万円ということで「90万の男」と言われました。

行政の事業というのは、知らないうちに始まり知らないうちに終わって、なにが成果かわからない、ということもある中で、こうやって事業のことをほとんどの市民が知っているというのは、非常に珍しいことかもしれません。
 
住民との「対話」で、思いを実現するかたちのまちづくり

そんな中で、大事にしたのは、住民との「対話」です。

商店街や周辺の方たちに、昔、このまちはどんなだったか?というのをヒアリングして出てきたのが、「麦藁帽子」、かつては「ムギボウ」と呼ばれていた商店街の喫茶店でした。商店街がにぎわっていた頃は、ここに来ると誰かと出会って、じゃぁ、ごはん食べに行こうかとか、遊びに行こうかという、そういう交流の場所だったということを聞きました。そこで「思い出を語る会」を開くと、結婚したパートナーとの初デートの席も覚えている、そんな思い出が濃く詰まった場所だということがわかり、再生の第一歩として、この喫茶店のリニューアルを行いました。「ABURATSU COFFEE」として、いろいろな世代が集う場所として復活しました。
 
応援の連鎖がまちを変える

ABURATSU COFFEE」を作る過程で経営をどうするかとなったとき、油津を応援する会社を作ろうと、その名も「株式会社油津応援団」を作りました。最初は、3人で一口30万円ずつ、90万円で法人登記をしました。3,000万円以上の借金を、リスクを背負って事業をするということが、覚悟として伝わって「これは本気だな、応援したい」とまちの人の共感を生み、市民出資というお金だけでなく、人も集まってくるようになりました。地元出身の30代の若いメンバー3人が社員として働いています。2人は東京からのUターンで専門性が高く、1名は元JAで地元流のコミュニケーションにたけていて、いいチームを組んでいます。こうして地元に戻ってきた若者の受け皿を作り、まちの後継者として育てていくことも大事なことかと思います。
 
まちの空気感を変える

商店街は毎日にぎわっているというわけではありませんが、休日や、何かイベントがあると人が集まるようになりました。商店街から小学生の「お魚アイドル ボニート×ボニート」というアイドルも生まれました。ボニートというのは英語でカツオのことです。彼女たちは商店街が再生する前から毎週木曜日にダンスの練習をしていて、最近では、商店街のイベントだけでなく、宮崎県内、昨年は秋葉原で踊り、曲の合間に油津商店街の宣伝をしてきたそうです。

イベントごとは、集客や経済効果を生むというのがメインの目的ですが、それ以上に別の意味があると思っています。最初は猫すら歩かなかった商店街に、子どもたちが毎週集まってきてみんなで踊って、週末イベントやると人が集まってくる、というのが続いていくと、空気感が変わります。そうすると市民の見方も変わってくる。私たちはそこを狙っています。
 
企業誘致ではなく起業家支援

その後もさまざまなことをしかけ、約4年の任期中に29の新規出店やIT企業誘致が実現しましたが、そこには、単なる企業誘致ではなく起業家支援という発想があります。

お店を立ち上げて、人通りがいっぱいあるところならともかく、厳しい中でやっていくときは、そこから先の支援も大事だと思って関わっています。それは甘やかすということではなく、コミュニケーションを取りながら必要なときに支援の手を差し伸べるということで、「油津応援団」がその機能を担っています。

また、参加型のまちづくりには、いろいろなメニューを用意することが必要だと思っています。お店を出すと、数百万の資金が必要です。それは一番大きな参加ですが、誰にでもできることではありません。それだけではなく、「油津応援団」に30万円出資するというのもまちづくりの参加ですし、コンテナは常に1個空きがあり、1日4,000円でお店が持てます。イロドリ市という月に1回やっているイベントには、1日1,000円でお店が出せます。「油津Yotten」では1時間1,000円でイベントができます。「ABURATSU COFFEE」で400円のコーヒーを飲むのも「油津応援団」の収入源になるので、それもまちづくりの参加だと言えます。

こういった多様なメニューがあって、私ならどういう形で参加ができるか、と選べるようなしくみを作ること、窓口を広げることが大切だと思います。
 ないある後藤寺まちづくり
次の世代につなぐ=希望

4年間まちづくりやって来て、うれしいことがあります。小学生が「活性化した」という言葉を使ったり、今までは卒業したら県外に出るつもりだった高校生がまちが変わっていく様子を見て「将来このまちで働くのもいいな」と思ったり、「まちづくり」を専攻する大学生が出てきたりしています。

次の世代に残すために、まちづくりをやっているのではないかと思います。

4年間の最後、3月に行った一番大きな行事が結婚式。まちを盛り上げようと東京からUターンしてきた20代の披露宴を「Yotten」でやりました。料理はすべて商店街の中の人たちが持ち寄り、飾り付けも商店街の花屋さん、写真も商店街のカメラマン。

こうやって、次の世代の動きが出てきたというのが、我々にとって大きな希望です。
 
地域の課題の解決、そして、ないものねだりからあるもの活かしへ

失敗している商店街再生もたくさんあります。それは、商店街のためだけの商店街再生をやっているからではないか。商店街の課題から地域の課題に目を向けると、人口減っている、若い人たちが減っている、、、いかに若い人たちに魅力を伝えるかが最大の課題でした。それを考えながら、新しい商店街のあり方ってなんだろう?と考えていくと、若い人たちがチャレンジできる場だったり、面白いまちを作ろうだったり、決して人通りが増えることではなく楽しいもの、これからの可能性だったわけです。そして、最終的には新たな商店街のあり方みたいなものが見えてきて、それを実現することで、訪れてみたい、自慢できる商店街になったりする。少し遠回りですが、商店街の中だけではなくまち全体の課題をしっかり考えることが大事なのではないかと思います。

最近、油津では「ないものねだりからあるもの活かしへ」シフトしていくことを話しています。もともとあるもの、新しく作ったものを組み合わせながら、今後どうしていくか、切り替えの時期に来ています。
 
現場にある課題は「事業間連携」で解決していく

これからの事業は、行政と民間がしっかり連携しないとことが進みません。それを「事業間連携」という言葉を使ってます。

例えば、企業誘致は県の窓口に情報が来ます。市の担当者は県の担当者とスムーズなコミュニケーションで情報を得たら、それを現場にいる我々に投げてきます。パス回しが早い。そういった横のつながりの風通しが良いことが大事かな、と思います。

また、市長との会議の席に、我々も参加させてもらっています。行政と現場で常に課題を共有するということも大事です。

油津商店街が、なぜうまくいったかを考えてみると、商店街再生は、商工業の振興の仕事です。クルーズ船は湊湾観光、カツオなら漁業振興といった・・・。行政は縦割りの構造で動きがバラバラですが、例えば、「商店街の再生」という一つの方向を向いて連携すると事業が動き出す。

この現場に転がる課題を「事業間連携」で解決していくというのが私のテーマで、今まで別々に課題解決していたものが連携することでより高い効果を出せるのではないか、行政の改革も必要ではないかと思っています。
 
やりたい人から生まれた「ないある後藤寺まちづくり」

この「ないある後藤寺まちづくり」は、行政が仕掛けたものに人が入っていくのではなく、やりたい人が集まっていることがすごいことだと、特に、10代~80代の女性が中心になって立ち上がったことに、可能性を感じています。現在は、月1回の会をやりながら、まずは、みんなで未来予想図を描き、それを最終的には市長にプレゼンします。たぶん、実際のまちづくりはそこからスタートですが、まずは、そのベースになるものを市民で考えようとしています。

この動きに興味がある方は参加していただいてもいいですし、年度末まで動いていく活動にぜひ注目していただきたい。

また、昨日、市長が油津に来ました。以前、商店街の理事長が来たときに「市長さんを連れてきていただけるといいんですけどね」と言っていたら、本当に来ました。こんなにフットワークの軽い市長がいるのか、とびっくりしました。

今後、行政のバックアップも得られれば、新しい動きも出てくるのではないかと期待しています。もちろん、この1年で変わることはないですけれども、油津でも4年かかりました。体制をしっかり作っていければ、と思っています。ないある後藤寺まちづくり
地方から起きる革新=ローカル・イノベーション

地方創生の課題は、現場にあります。日南市や田川市のような人口の減少が厳しいまちほど、実は課題解決のノウハウやヒントがあるはずです。そこで、しっかりと活動してまちが変わっていくと、地方だから得られるもの、地方だからこそ発信できるものがある。それを意識していくことが「ローカル・イノベーション」に繋がっていく。日南、那珂川町、田川の取組みが形になっていくと、九州、福岡だけではなくて、日本全国に発信して、日本全国の苦しんでいる自治体に広がっていくような動きが作れるのではないかと思っています。

今は厳しいかもしれないけれど、それだけの可能性があるということを意識しながら取り組んでいかなければならないと思っています。

ないある後藤寺まちづくり
 
第3回講座(フィールドワーク)のお知らせ
  • 日時:平成29年10月29日 10:00~14:00
  • 連絡先:田川市男女共同参画センター Tel:0947-85-7134 担当:原
 

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